4-3 ダーリング家へ
「・・・また、助けられちゃいましたね。」
「お気になさらず、と言いたいところですけど、本当に気をつけていただかないといけませんよ、サラさん。今回は銃を買っていたお友達がいらして良かった。」
「はい・・・ごめんなさい。でも、それだけじゃなくて、アレクさんが貸してくださったペンダントのおかげで、助かりました。ありがとうございます。」
その言葉に、アレクサンダーは嬉しそうに微笑んだ。
「・・・お役に立てたのなら、何よりです。」
それに、サラも嬉しそうに笑うが、すぐにため息をつく。
「はあぁ・・・また兄さんに怒られそう・・・それにしても、なんでアレクさんのことを兄さんはわかってくれないのかなあ・・・」
「ルーク様は、やはり銃を売る僕を認めてはくださらないのですね。」
アレクがフェトラにやってきて、街の人々を救うようになってひと月以上になっても、サラの兄、ルークはアレクの銃商売を快く思えないらしい。
先日、サラは学校帰りにアレクと会ったところをたまたまルークに見られて、淡々と叱られた。
それ以来、アレクは街の見回りという名目だけでしか、なかなかサラに会うこともできなくなっていたのである・・・といっても、サラの学校が終わる頃を見計らって、学校の周りを歩いているのだから、アレクも結構図太い。
「・・・本当はこんな形ではお会いしたくないのですが・・・でも、あなたに会えることは、僕は嬉しいです。」
そう言って、サラの方を見るが・・・
「ううう兄さん怒るだろうなあ・・・」
サラは頭を抱えていた。自分の照れくさいセリフは全く聞こえていなかったらしい。それにしても、サラが魔王たちよりも実の兄の方を恐れているように見えるのは気のせいだろうか・・・・・
街を抜けて、街灯もない道を歩いていくと、ルーク・ダーリング氏がランタンを持って向こうから走ってきた。
「サラ!・・・お前!どうしてまた森に入ったりして・・・」
「うわああぁごめんなさい兄さん!」
大慌てで頭を下げるサラ。
「サラさんたちは魔物に操られて、この森に迷い込んでしまったようなんです。怒らないであげてください。」
なだめるアレクサンダーを、ルークは見下ろす。
「はぁ・・・また君に助けられたのか、ベルクール殿・・・。」
「はい、ご友人といるところに居合わせました。」
「・・・本音を言うと、あまりサラとは関わって欲しくないんだがな。」
「ちょっと兄さん、失礼でしょ!」
冷たいルークの声にアレクは固くなる。
しかし・・・・・
「・・・ベルクール殿、よかったら今から家にあがっていきなさい。」
「え?」
「それって・・・」
「ここまで妹を助けていただいて、お礼をしないわけにはいかないだろう。是非我が家で夕食を食べていってください。」
「兄さん・・・・!」
サラが嬉しそうに笑った。花が開いたようだとアレクはちらりと思った。
「では我々は仕事がありますからお先に失礼いたします・・・アレク様、どうぞごゆっくり。」
「え?いや、でも・・・」
「たまには楽しんでくださいよ~」
「では、我々はこれでっ!」
兵たちは心無しかニヤニヤしながら、もときた道を帰っていった。