4-2 森
アレクが森に駆けつけると、三人の女学生が巨大な人型の氷に取り囲まれているのがわかった。
人型の氷はじりじりと三人に擦り寄っているが、不思議と襲う気配はない。
よく見ると、薄い光の膜が、魔物から三人を守っている。アレクがサラに渡したペンダントから、薄くはあるが結界が張られて、魔物たちから身を守っていた。魔物はその結界にひるんで、手が出せないようである。
結界の傍の地面を見ると、白い鷲が何羽か胴から黒い液体を垂らしながら横たわっていた。三人の女学生のうち一人が、銃を構えており、どうやら彼女が撃ち落としたようである。
ひと月ほど前に、サラを襲った魔物たちと同じだ。これくらいの魔物なら、自分一人で十分である。
そう確信したアレクは走って氷の魔物の後ろをとり、背中から斬りつけた。
ほどなく、アレク一人によって、すべての魔物が倒された。
「アレクさん!」
「よかったあぁ・・・・・・」
「もう大丈夫ですよ!よく頑張りましたね!」
三人とも、怪我はないようである。アレクはほっとため息をついた。
「アレク様―!」
「みんな怪我はねえか?」
オットーや他の兵団の皆も駆けつけてきた。
「ああ、みんな怪我はないようだ。僕も大丈夫だよ。」
にこりと微笑んでアレクが言うと、兵団の皆も安心したようにため息をついた。
「それにしてもお三方・・・どうしてこんなところにお立ち寄りになったんですか?魔物が集まるには絶好の場所だからもう入らないようにと、立ち入り禁止になっていたはずですよね?」
オットーが眉をひそめて三人を注意する。
「いえ、違うんですオットーさん」
アーニャ・ハルフォードが声をあげる。
「違う、とおっしゃいますと?」
「私たち、ちゃんと森を避けて遠回りの道を歩いていたはずなんです!なのに、いつの間にかここに迷いこんでしまって・・・」
アーニャの言葉に他の二人も頷く。
「ああ、“誘導”を使われたのですか・・・」
「誘導って?」
「人の意識に潜り込んで、自らの結界に獲物を誘い込む術のことです。これが使えるのは魔王のでも一部だと言われております。」
「それって・・・この間私が使われたっていう・・・?」
「ええ。使われると、こちらがどんなに気をつけていても結界に入ってしまうので厄介ですね。ただ、奴も毎回使っているわけではないようですが。」
「でも・・・今日はエリザが一緒にいてくれて、助かりました。あと、アレクさんからお借りしたペンダントのおかげです。」
ありがとうございます、とアレクたちに向かってサラが頭を下げる。そして、エリザ、というらしい眼鏡をかけた茶髪の少女に向かっても、サラはありがとうと言った。しかし、それに対するエリザの反応は冷淡だった。
「私はただ・・・二人が銃を持ってないから一緒に帰ってあげなさいって先生に言われただけですから。ダーリングさんもハルフォードさんも、早く銃を買ったらいいんです。」
「ご、ごめん」
「ちょっと、そんな言い方しなくてもいいじゃない・・・」
少し気まずくなった空気を和らげるように、兵団の一人がまあまあと間に入った。
「とにかく、今日はみんな無事で何よりでした!今日は我々で皆さんをお送り致しますよ!」
「そうですね、とにかく今日みなさんを無事に御宅までお送りすることが大切です。」
オットーも気を取り直したように言う。
「私は銃を持っていますから、別に・・・」
「何言ってんのよ、さっきだって銃持ってたけど助けてもらったでしょ?こういう時は素直に送ってもらわなきゃかえって迷惑なのよ。ですよね?アレク様」
アーニャの言葉にアレクは頷く。現金なようだが、アーニャの言うことは最もである。
「では、エリザ様、とおっしゃいましたね、御宅はどちらにございますか?」
「あ、、この子私の近所に住んでるんです。だから私と一緒にで大丈夫ですよ。あ、アレク様はサラを送ってあげてくださいっ!」
なぜか嬉しそうに言って、アーニャはサラに手を振ると、兵やエリザと共に帰路についた。
結局、その場の成り行きで、サラはアレクと数人の兵士によって、家まで送られることになった。




