4-1 宿にて アレクサンダーと兵団
アレクサンダー・ベルクール率いる一団は宿で夕食をとっていた。
屈強な男たちが大勢でわいわいと陽気に騒ぎながら、肉にかぶりつく。顔ほどの大きさがある盃に酒を並々と注ぐ。最近、フェトラの女学生たちが何人かお菓子を作って持ってきてくれることがあって、パイやらクッキーやらもテーブルに並べられていた。
ひとりひとりが、戦士として堂々たる風格をしていた。彼らは元々流れ者であったり、あぶれ者であったりしたところを、アレクとオットーに拾われてきた者ばかりだった。だから、王子のような風格のあるアレクとは正反対の男ばかりが集まってしまったのだが、それでも兵団は今のところよくまとまっている。オットーが彼らをよくまとめているのと、主人であるアレクの金払いが良いせいかもしれなかった。アレクは、共に率いる兵達を決して餓えさせることがなかったのである。
男たちが陽気に騒ぐ中、主人たるアレクサンダーは何か考え込んでいるようだった。
側近であるオットーは、周りの男たちにうまく対応しながらも、若き主人を案じる。
オットーが声をかけようとしたとき、アレクサンダーが静かに口を開いた。
「みんな。」
アレクサンダーの静かな声に、男たちが一斉に静まった。
「・・・・・・僕の話を、聞いてくれるか?」
アレクサンダーが尋ねるまでもなく、男たちは年若い自分たちのリーダーをじっと見つめる。アレクサンダーは立ち上がって、男達に向かって話し出した。
「最近、“白の魔王”の眷属によると思われる被害が急増している。・・・みんなはよくやってくれている。しかし、このままでは奴の被害者は増える一方だ。正直言って、いつ死者が出てもおかしくない。」
死者、という言葉に、一同に緊張が走る。
「・・・聖剣が現れるまで待ちたいと思っていたが、どうも悠長に待っている暇は無さそうだ。」
「・・・どうするおつもりですか、アレク様。」
「・・・この国で、今魔王と渡り合える力を持っているのは、僕たちしかいない。」
アレクが決意を秘めた瞳で、一同を見つめる。
「・・・これ以上被害がひどくなる前に、決着をつけなきゃならない、と思う。聖剣が無くても、僕たちが戦うしかない。」
アレクサンダーの言葉に、男たちが一斉にざわついた。
「ベルクールさん!そいつは無茶だろう・・・あんた言っていたじゃないか!“白の魔王”は国一つ平気で潰す化物だって・・・」
「無謀すぎるぜ・・・」
「わざわざ死にに行くようなもんじゃねえか!」
「じゃあ、このまま指をくわえて見ていればいいっていうのか!?」
ダン!と机を叩くアレクを、オットーがなだめようとする。しかし、アレクはその手を振り払った。
「オットー、止めないでくれ。僕は・・・」
「アレク様・・・・・・」
「僕は、あいつを倒せるならば、相討ちになっても構わない。」
オットーは、アレクの眼を見てハッと手を引っ込める。アレクの緑色の瞳は、ギラギラと光っていた。
「けどよう・・・。」
まだ男たちの動揺は治まらない。ざわめく食堂に、一人の青年が駆け込んできた。
「大変です!」
「どうしたっ!」
「また魔物が現れて・・・・・・集団下校しているメリーノ女学院の学生たちが襲われています!場所は学校の近くの森!以前“青の魔王”の使い魔が現れた森です!・・・あ、以前被害に遭ったアーニャ・ハルフォード、サラ・ダーリングがいます!」
「あの野郎・・・女子供ばっかり狙いやがって・・・!」
「すぐ行くぞ!第三班準備しろ!」
男たちは先程までのざわめきを一瞬でかき消して、テキパキと準備を始める。
しかし、アレクサンダーは銃と剣を抱えて、窓の外から飛び出していた。
「あ・・・アレク様!?」
「先に行っている。君たちは後から来い!」
アレクサンダーは、呆気にとられるオットーを尻目に、颯爽と森に向かって走り去っていった。
鳥のように去っていったアレクを見送って、男たちは
「オットーさん・・・アレクさん、あのサラって子のことになると焦りすぎるんじゃねえか?あの子はなんだ?アレクさんの女か?」
「いや・・・あの子は・・・なんなんだろうな・・・」
オットー首をかしげる。しかし、すぐに主人の後を追うために、急いで武器の用意を始めた。




