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刀を捨てた男と刀を持たない男  作者: カトーSOS


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勝先生

挿絵(By みてみん)


勝先生



「ふふ〜ん」


龍馬が妙に機嫌よく歩いている。


直人は横目で見た。


「坂本くん、なんかご機嫌だね」


「分かるか?」


「分かるよ。顔に出てる」


龍馬は、ますます嬉しそうに笑った。


「すっごい人と会ったぜよ」


「へえ」


「勝先生っちゅうてな」


「勝先生?」


「そうじゃ。すごい人ぜよ。本気で日本の明日を憂えちょる」


龍馬の顔がぱっと明るくなる。


「わしは弟子入りしてきた!」


「弟子入り?」


「そうじゃ!」


龍馬は胸を張った。


「あんなすごい先生についていけるなんて……えっへん」


「はあ」


直人は生返事をした。


龍馬がむっとする。


「なんじゃ、その反応は」


「いや、坂本くんがそんなに人を褒めるの珍しいなと思って」


「勝先生は別格ぜよ」


「そんなに?」


「そんなにじゃ」


龍馬は興奮したまま話し続けた。


「外国のこともよう知っちょる。船のことも、日本のこれからのことも考えちょる」


「へえ」


「それにな」


龍馬が少し考える。


「なんちゅうたかな……」


「何?」


「民が政を決める」


「うん」


「でも、暮らし良い?」


直人が龍馬を見る。


「……ひょっとして、デモクラシー?」


龍馬の目が輝いた。


「それじゃそれじゃ!」


「やっぱり」


「直人もなかなか博識じゃのう」


「いや……」


直人は少し困った。


デモクラシーくらいは知っている。


だが、この時代の人が普通にそんな話をしていることの方が驚きだった。


「勝先生って、ずいぶん先進的な人なんだね」


「そうじゃろ!」


龍馬は得意そうだった。


まるで自分が褒められたような顔をしている。


直人は笑った。


「で、どうやって知り合ったの?」


「会いに行った」


「ふうん」


「斬りに」


直人の足が止まった。


「……は?」


龍馬も止まる。


「斬りに行った」


「勝先生を?」


「そうじゃ」


「なんで?」


「場合によっては斬ろうと思うちょった」


「それで?」


「話を聞いた」


「うん」


「弟子入りした」


直人は黙った。


龍馬も黙った。


しばらくして、直人が言った。


「斬りに行ったら、弟子入りとか」


「うん」


「坂本くんは極端だなぁ」


龍馬が笑う。


「ワッハッハ!」


直人はすっかり呆れていた。


「一緒に行った人、怒らなかった?」


「怒った」


「だろうね」


「せっかく斬る機会じゃったのにって」


「そりゃ怒るよ」


「でも、勝先生の話を聞いたら斬れんぜよ」


「まあ、弟子入りしたくらいだからね」


龍馬はまた嬉しそうな顔をした。


「直人にも会わせたいのう」


「僕?」


「おまん、変なこと知っちょるから、勝先生と話が合うかもしれん」


「変なことって何」


「でも暮らし良いとか」


「デモクラシーね」


「それじゃ」


「もう覚えてよ」


龍馬は笑った。


直人も笑った。


勝先生。


坂本くんが、ここまで惚れ込む人。


どんな人なのだろう。


少しだけ、興味が湧いた。

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