【第三章時点の主な登場人物まとめ】
※年齢は本作設定の数え年です。
※永禄四年/一五六一年、第三章終了時点の内容を含みます。
※史実・通説とは異なる独自設定を含みます。
※一部、本文中で年齢を明記していない人物は年齢表記を省略しています。
■藤乃
数え二十五歳。
柴田勝家の妻。柴田のお藤の方。
かつては尾張守護・斯波義統の妹で、義銀と義冬の叔母。
柴田家に入ってからは、帳面・兵糧・人手の差配など、実務面でも家を支えている。
第三章では、藤七丸を育てながら、隣に立った新しい斯波家を見守る。
木下藤吉郎の妻・寧々の苦しさに気づき、夫婦が向き合い直すきっかけを作る。
章の終盤で、勝家との第二子を懐妊する。
■柴田勝家
数え二十九歳。
織田家家臣。通称・権六。藤乃の夫。
本作では天文二年(一五三三年)生まれという独自設定。
鬼柴田と呼ばれる武将だが、藤七丸を抱く時は戦場よりも真剣な顔になる。
木下藤吉郎については「よく動く。よく見る。よく拾う」と評価しており、寧々の前で藤吉郎を褒める。
藤乃に頼まれ、信長のもとへ藤吉郎を呼び戻しに行く。
■藤七丸
数え二歳。
藤乃と勝家の長男。のちの勝信。
名は、藤乃の「藤」と、権六の次の「七」から取られた。
よく眠り、よく笑い、眉のあたりが勝家に似ていると言われている柴田家の若君。
第三章では歩き始め、藤乃と勝家を大いに感動させる。
本人は何も分かっていないが、大人たちを動かす力はすでに十分ある。
■藤乃の第二子
第三章終盤で藤乃の腹に宿った子。
藤七丸の弟か妹となる存在。
この時点ではまだ胎の中にいるが、柴田家に本来の歴史にはなかった未来をさらに増やす命となる。
■斯波義銀
数え二十二歳。
尾張守護・斯波義統の嫡男。藤乃の甥。
第二章で新たな斯波家の当主として立ち上がり、第三章では信長のもとで忙しく働いている。
琴を妻に迎え、織田家と柴田家の後見を得ながら、新しい斯波家を形にしていく。
無理をしがちなため、琴に止められることも増えた。
■斯波義冬
数え十三歳。
義銀の弟。元の幼名は千若。
勝家を烏帽子親として早めに元服し、義冬と名乗る。
第三章では、信長の急な呼び出しで義銀と琴が不在になった際、寧々を一人にしないため、自ら客の相手を買って出る。
藤乃からは「葱を分けて抜いていた子が」と成長をしみじみ思われている。
■毛利琴
数え十九歳。
毛利新介の妹。
信長の猶子となり、織田家の姫として義銀に嫁いだ。
人の顔色や傷の具合を見るのが上手く、無理をする相手を止められる娘。
帰蝶や織田家の姫たちにも気に入られ、姫たちからは「お琴姉様」と呼ばれるようになる。
信長を「父上」、帰蝶を「帰蝶の母様」と呼ぶようになり、斯波家の妻でありながら、織田家の娘としての縁も深めていく。
■毛利新介
数え二十二歳。
元・織田家馬廻衆。毛利琴の兄。
第二章後半で斯波家へ入り、義銀を支える家臣となる。
静かでよく見ているタイプで、義銀の刃となる存在。
妹の琴を大切に思っており、義銀に対しては「泣かせたら怒る」と釘を刺している。
第三章では、新しい斯波家の一員として実務や礼法にも関わる。
■服部小平太
数え二十三歳。
元・織田家馬廻衆。勢いのある槍働き担当。
第二章後半で斯波家へ入り、義銀を支える武の柱となる。
庭を見ると槍の稽古のことを考えるため、たびたび警戒されている。
勝家の妹の娘を妻に迎えるが、妻はしっかり者であり、小平太はどうやら逃げられない。
■太田又助
数え三十三歳。
文・目録・礼法に強い実務役。
信行の紹介により、新たな斯波家へ関わることになる。
祝いの品、文、返礼、家臣の出入りなどを記録する、家を立てるために必要な筆の人。
第三章では、信長の急な呼び出しで寧々が斯波邸に残された際、すぐに藤乃へ相談する判断を下す。
■服部小藤太
数え二十一歳。
服部小平太の弟。
兄に振り回される苦労人で、新しい斯波家の実務枠。
又助や八右衛門に鍛えられ、走りたい時も走らず、早歩きで胃を痛めながら対応するようになる。
第三章では、寧々を一人にしないため、藤乃へ相談に向かう重要な役目を担う。
■服部平右衛門
数え四十三歳。
服部家の人物。
膝に瑕を抱えているが、騎馬の知識と経験を持つ。
新たな斯波家では、馬を走らせる者ではなく、馬を育て、乗り手を育てる騎馬指南役となる。
己の傷を荷とするのではなく、次の者を育てる役目を得た人物。
■於光
数え三十六歳。
柴田勝家の姉。
柴田家の奥向きを取り仕切る、強く頼もしい女性。
藤乃の体調や藤七丸の世話、客人対応などを的確に支える。
藤乃が何かをしようとする前に、必要な文箱・茶・温熱布などを用意していることも多い。
勝豊の母。
■渋川八右衛門
数え三十八歳。
柴田家の家令。於光の夫。
藤乃の知識や計算方法を、柴田家の実務へ落とし込む人物。
帳面・兵糧・人員管理など、柴田家の内政面を支えている。
第三章では、藤乃が動くたびに胃を押さえつつ、息子・勝豊の成長も見守る。
■渋川勝豊
数え十六歳。
八右衛門と於光の息子。
父譲りで現実を見る目があり、母譲りで気配りと度胸もある。
第三章では、寧々のための「御養生品目録」や「木下殿心得目録」を即座に用意する。
藤乃からは幼い頃から見ているため、「勝豊」と呼び捨てにされている。
■木下藤吉郎
信長に「猿」と呼ばれる男。
後の羽柴秀吉にあたる人物。
よく動き、よく見て、よく拾う。
勝家からも「軽いだけの男ではない」と評価されている。
妻の寧々との間に子ができないことを悩み、寧々に相談せず、よそで子を得ようとしていた。
藤乃に呼び出され、勝家に逃げ場を塞がれたことで、ようやく寧々と向き合う。
その後は寧々の身体を温め、酒を控え、話を聞き、夫婦で子を望む方向へ進む。
寧々の懐妊後は、心配しすぎて少し暴走気味。
■寧々
数え二十四歳。
木下藤吉郎の妻。
十六歳で藤吉郎に嫁ぎ、八年子が宿らないことに苦しんできた。
「三年宿らぬ女は家を出よ」という言葉を笑ってやり過ごしてきたが、内心では深く傷ついていた。
藤乃に話を聞いてもらい、「悪い女房ではない」と言われたことで、ようやく涙をこぼす。
藤吉郎とも向き合い直し、身体を温め、月のものの日取りを記録し、夫婦で子を望むようになる。
第三章で懐妊する。
■寧々の子
第三章終盤で寧々の腹に宿った子。
木下藤吉郎と寧々の実子。
本来の歴史とは大きく異なる未来を木下家にもたらす存在。
この時点ではまだ胎の中にいるが、木下夫妻が向き合い直した先に宿った命として描かれる。
■織田信長
数え二十八歳。
織田三郎信長。尾張の織田弾正忠家当主。
桶狭間で今川義元を討ち、歴史を大きく動かした人物。
義銀に斯波家再興を命じ、琴を猶子として斯波家へ送り出した。
第三章では、木下夫妻の挨拶中に義銀・琴・藤吉郎をまとめて呼び出し、信行に叱られる。
琴に「父上」と呼ばせたがったのは、帰蝶だけが「帰蝶の母様」と呼ばれたことへの対抗心もある。
■織田信行
数え二十六歳。
信長の弟。通称・勘十郎。
兄の隣に立つと決めた若君。
信長の無茶を回収し、現実的な形へ整える役目を担っている。
第三章では、信長の急な呼び出しが礼を欠いていると叱る。
兄を叱るのは、もはや自分の仕事だと思っている。
【補足:本作における史実との相違点について】
本作は、史実・通説を下敷きにした戦国IF作品です。
※ここから先は、史実・系譜まわりの補足です。
興味のある方だけどうぞ!
「歴史の細かい話は大丈夫です!」という方は、読み飛ばしてね☆彡
そのため、実在人物や実際の出来事をもとにしつつも、人物の年齢、婚姻関係、親子関係、合戦の結果、その後の家の存続などに、本作独自の改変を多く含みます。
特に大きな相違点として、本作では柴田勝家と藤乃の間に実子・藤七丸が生まれています。
史実の柴田勝家については、子に関する伝承や系譜に諸説ありますが、『寛政重脩諸家譜』に基づく紹介では、勝家の子たちは全員養子で勝家の血を引いていない、という整理もされています。
本作では、その整理を踏まえた上で、藤七丸を「本来の歴史にはなかった柴田勝家の実子嫡男」として描いています。
また、第二章後半では、斯波義銀が新たな斯波家の当主として立ち上がり、織田信長の猶子となった琴を妻に迎えます。
こちらも本作独自の大きな分岐です。
史実における斯波家は、尾張守護家としての重い名を持ちながら、時代の流れの中で次第に力を失っていきました。
しかし本作では、柴田家の後見と織田家の縁を得ることで、義銀が「昔の斯波」ではなく「新しい斯波家」を立て直していく流れになっています。
さらに、毛利新介、服部小平太、毛利琴、太田又助、服部小藤太、服部平右衛門なども、新しい斯波家を支える人物として本作独自に配置しています。
また、第三章で扱う木下藤吉郎と寧々についても、本作では年齢や夫婦関係を独自に調整しています。
史実・通説における豊臣秀吉と寧々は、永禄四年/一五六一年に結婚したとされ、秀吉二十五歳、寧々十三歳ほどと紹介されることがあります。
つまり、二人にはおよそ十二歳の年齢差があったとされます。
しかも、身分差や周囲の反対を越えた恋愛結婚として語られることも多く、のちの天下人と正室の始まりとしては、かなり印象的な夫婦です。
本作では、この点も踏まえつつ、寧々を「十六歳で藤吉郎に嫁ぎ、現在二十四歳」という独自設定にしています。
これは、物語上で寧々が八年もの間、子が宿らないことに苦しみ、それでも藤吉郎の女房でいたいと願う重みを描くための調整です。
そのため、本作の藤吉郎と寧々は、史実・通説そのままの年齢差ではなく、物語上の夫婦関係に合わせた独自設定としてお読みください。
史実通りの流れを追うというよりも、
もし藤乃という忙しない姫がいたら。
もし柴田勝家に実子が生まれていたら。
もし斯波義銀が、名に押し潰されるのではなく、自分の足で新しい家を立て直していたら。
もし木下藤吉郎と寧々が、早い段階で夫婦として向き合い直していたら。
そんな「もしも」を楽しむ物語として読んでいただければ幸いです。




