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鬼柴田と忙しない姫 〜守護邸が燃えたので、柴田勝家の妻になりました〜  作者: まるちーるだ
鬼柴田とぺたんこの妻

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第十五話 戦功の褒賞


清洲城の空気は、まだ雨を含んでいた。


桶狭間の雨は上がった。


鳴海の雨も上がった。


けれど、城へ戻ってきた者たちの鎧には、まだ泥が残っている。


血の匂いも、雨の匂いも、戦場の熱も、完全には消えていない。


その広間で、織田家の老臣は、静かに息を吐いた。


勝った。


織田が、今川に勝った。


今川義元を討った。


あまりにも大きな出来事で、今なお現実味が薄い。


だが、老臣が胸を熱くしたのは、勝利の大きさだけではなかった。


広間の上座に、信長様がいる。


その隣に、ほんの少し後ろへ控えるように、信行様が座っていた。


かつて、兄弟の間には亀裂があった。


尾張を割るかもしれぬ亀裂。


織田家を内から崩すかもしれぬ亀裂。


あの頃を知る者ほど、その姿が信じられなかった。


信長様の隣で、信行様が静かに控えている。


けれど、それは怯えている姿ではない。


屈している姿でもない。


兄を支える者の座り方だった。


兄の道を見て、その道へ横槍を入れさせぬために、己の役目を果たした者の姿だった。


老臣は、膝の上で拳を握った。


危ない。


目が潤みそうになる。


戦場で泣くわけにはいかぬ。


評議の場で泣くわけにはいかぬ。


そう思うのに、胸の奥が熱かった。


尾張は割れなかった。


兄弟は、並んだ。


そして、その兄弟のもとで、若い者たちが今川義元へ届いた。


この日、織田はただ勝ったのではない。


織田は、残ったのだ。


さらに先へ進む家として。


「さて」


信長様の声が、広間に落ちた。


ざわめきが止まる。


信長様は、いつものように軽く笑っていた。


だが、その目は鋭い。


桶狭間で今川義元を討った男の目であり、勝利に酔って終わる男ではない目だった。


「戦は勝った。なれば、功は功として定めねばならぬ」


広間にいる者たちの背筋が伸びる。


泥を落としきれぬ者。


傷を布で巻いた者。


膝を庇っている者。


指に布を巻いた者。


誰もが、息を詰めていた。


信長様は、まず一人の若武者を見た。


「毛利新介」


「はっ」


静かな若武者が進み出た。


指には布が巻かれている。


今川義元を討ち取る際、噛まれたという。


その話を聞いた者たちは、皆、顔をしかめた。


だが当の本人は、涼しい顔をしている。


痛みなど、初めからなかったかのように。


信長様は、その指を見て、少しだけ口元を上げた。


「義元の首を取ったのは、お前だ」


「はっ」


「一の功、毛利新介」


広間が静まった。


一の功。


当然である。


今川義元を討ち取った。


その事実は何より重い。


だが、新介は少しだけ目を伏せた。


「恐れながら」


「何だ」


「私一人の功ではございません」


信長様の眉がわずかに上がる。


新介は静かに続けた。


「槍をつけたのは小平太。道を見たのは義銀にございます。私は、二人が開いたところへ入っただけにございます」


小平太が横で小さく笑った。


義銀は、わずかに目を伏せる。


信長様は、ふっと笑った。


「それで首を取れるなら、皆がそうしておる」


新介は黙った。


「開いた道へ入り、逃さず取った。それが功だ」


「……はっ」


「受けろ」


信長様が言うと、新介は深く頭を下げた。


「ありがたき幸せ」


老臣は、その姿を見て目を細めた。


静かな若者だ。


派手ではない。


だが、あれは刃だ。


必要な時に、必要なところへ入り、必要なものを断つ。


信長様のそばに、あのような刃がいる。


それは、織田の未来にとって大きい。


信長様は次に、勝家へ目を向けた。


「柴田権六」


「はっ」


勝家が進み出る。


湯浴みを済ませ、衣も改めてはいる。


だが、肩には布が巻かれていた。


岡部元信との一騎打ちの傷だ。


顔はいつも通り厳しい。


いや、いつも以上に厳しい。


ただし、老臣には分かった。


この男、どこか落ち着かない。


理由は一つだ。


生まれたばかりの子がいる。


柴田のお藤の方が産んだ嫡男。


名は、藤七丸。


その子に会ったばかりの父が、今ここにいる。


鬼柴田と呼ばれる男であっても、父になれば変わるものなのか。


そう思うと、少しだけ口元が緩みそうになった。


信長様も、同じことを思っているのか、楽しげに言った。


「岡部元信を討ったな」


「はっ」


「二の功、柴田権六勝家」


勝家は深く頭を下げた。


「ありがたき幸せ」


「岡部はどうであった」


その問いに、広間が少し静まる。


勝家は、すぐには答えなかった。


それから、低く言った。


「見事な武士にございました」


信長様の目が細くなる。


「ほう」


「罠と知りながら、主君の御首を取り返すために出た男にございます。槍も乱れず、最後まで退きませなんだ」


「敵を褒めるか」


「敵ながら、でございます」


勝家の声は揺るがない。


「討つべき敵でした。されど、侮るべき敵ではございませぬ」


信長様は、しばし勝家を見た。


それから、にやりと笑った。


「そういうところが、権六よな」


「はっ」


「よい。岡部の首は粗末に扱うな」


勝家の目が、ほんの少しだけ動いた。


「ありがたき幸せ」


「それから」


信長様が、急に声を軽くした。


「子はどうだ」


勝家が固まった。


広間の空気が、わずかに緩む。


「……はっ」


「はっ、では分からぬ」


「元気にございます」


「名は」


勝家は、ほんの少しだけ背筋を伸ばした。


「藤七丸にございます」


「とうしちまるか」


「はっ」


「藤乃の藤に、権六の次で七か」


勝家が無言になる。


その沈黙が肯定だった。


信長様は声を立てて笑った。


「よいではないか。権六、お前にしては可愛らしい名だ」


「名付けは藤乃にございます」


「であろうな」


広間に小さな笑いが起きる。


勝家はむすっとした顔をした。


だが、その耳が少しだけ赤いように見えたのは、老臣の見間違いではなかったと思う。


信長様は笑みを残したまま、次に信行様を見た。


「勘十郎」


「はい」


信行様が静かに頭を下げる。


「鳴海を封じたのは、お前だ」


広間が再び引き締まる。


鳴海城。


岡部元信。


義元討死の後、鳴海が自由に動いていれば、織田の勝利には必ず棘が残った。


それを押さえたのは信行様である。


信長様の道に横槍を入れさせなかった。


その功は、決して小さくない。


「三の功、織田勘十郎信行」


信長様が言うと、信行様はすぐに頭を下げた。


「恐れながら、兄上」


「何だ」


「鳴海を封じたのは、私一人の功ではございません」


信長様の口元が上がる。


「またそれか」


信行様は、少しだけ苦笑した。


「正面で岡部元信を受けたのは権六です。退路を消す兵を動かしたのは諸将。何より、岡部を釣り出す策を立てたのは津々木蔵人にございます」


津々木蔵人が、後方で静かに頭を下げた。


細身の男だ。


目立つ武辺者ではない。


だが、鳴海で用いた策はこの男のものだった。


義元の首を尾張で晒す。


左文字を餌にする。


そう噂を流し、岡部元信の忠義を引きずり出した。


気持ちの良い策ではない。


しかし、必要な策だった。


信長様は蔵人を見た。


「津々木」


「はっ」


「汚い策を出したな」


広間が一瞬冷えた。


蔵人は、顔色を変えずに頭を垂れた。


「必要と見ました」


「そうだな」


信長様は笑った。


「必要だった」


蔵人の目が、わずかに動く。


「岡部は罠と知って出た。出るだけの男だった。ならば、それを読んで釣ったお前の策も功だ」


「ありがたき幸せ」


「だが」


信長様の視線が信行様へ戻る。


「策を用いると決めたのは勘十郎だ。鳴海を見ると決めたのも勘十郎だ。功を丸ごと譲るな」


信行様が少しだけ目を伏せる。


「しかし」


「分ければよい」


信長様は軽く言った。


「勘十郎に三の功。津々木蔵人にも別に褒賞を出す」


信行様は、少しだけ息を吐いた。


「兄上」


「何だ」


「ありがとうございます」


信長様は、どこか面白くなさそうに鼻を鳴らした。


「礼を言うな。働いた者に与えるだけだ」


そのやり取りを見て、老臣は、また胸が熱くなった。


かつてなら、このような会話はあり得なかった。


兄が弟の功を認める。


弟が側近の功を立てる。


兄がそれを受け、なお弟自身の功も認める。


それは、当たり前のようで、決して当たり前ではない光景だった。


老臣は、目元を伏せた。


危ない。


やはり泣きそうになる。


次に呼ばれたのは、義銀だった。


「斯波義銀」


「はっ」


義銀が進み出る。


頬には薄く傷が残っている。


腕にも布が巻かれている。


それでも、背筋は伸びていた。


かつての守護家の若君。


けれど今は、織田家馬廻衆としてここにいる。


信長様は、義銀を見て笑った。


「崖を下ったな」


「はっ」


「四の功、織田家馬廻衆、斯波義銀」


その呼び方に、義銀の目がわずかに揺れた。


守護家の若君ではない。


織田家馬廻衆。


あの日、崖の上で義銀が自ら名乗った名だった。


義銀は深く頭を下げる。


「ありがたき幸せ」


「お前が下らねば、道はなかった」


「恐れながら、私一人では道にはなりませなんだ」


義銀は静かに言う。


「小平太殿、新介殿、若い馬廻衆が続いてくれたからこそ、道となりました」


「それでも、最初に馬鹿をやったのはお前だ」


義銀が一瞬固まる。


広間に小さな笑いが起きた。


信長様は愉快そうに続ける。


「誰も下らぬところを、まず下った。自分の言葉に、自分の命を乗せた。それが功だ」


義銀は唇を結んだ。


「……ありがたき幸せ」


信長様は、義銀の顔を見て、少しだけ目を細めた。


「藤の方は怒るだろうな」


義銀の顔が青くなった。


その反応で、広間にまた笑いが広がる。


小平太と新介は、同時に義銀を見た。


「義銀」


小平太が小声で言う。


「何をそこまで青ざめている」


新介も静かに首を傾げた。


「藤の方様は、先日お会いした時は柔らかな方に見えたが」


義銀は、二人を見た。


その目は、戦場で崖を下った時よりも深刻だった。


「知らないなら、今は幸いだ」


「何がだ」


「叔母上が本気で怒った時の怖さだ」


小平太が笑いそうになった。


「義銀、お前の叔母上だろう。そんなに」


「小平太」


義銀の声が低くなる。


「笑うな」


小平太が口を閉じた。


新介の目がわずかに細くなる。


その反応を見て、勝家が静かに頷いた。


「藤乃は怒る」


広間の空気が、少し変わった。


鬼柴田が、真顔で頷いた。


それだけで、笑っていた者たちの肩が止まる。


信長様だけが、実に楽しそうだった。


「そうだろうな」


そして最後に、服部小平太が呼ばれた。


「服部小平太」


「はっ!」


小平太は勢いよく返事をした。


そして、一歩踏み出したところで膝を少しだけ庇った。


信長様の目がそれを逃さない。


「膝」


「かすり傷にございます!」


「権六と同じことを言うな」


勝家が少しだけ顔をしかめた。


広間にまた笑いが起きる。


小平太は、気まずそうに咳払いをした。


「五の功、服部小平太」


信長様の声が響く。


「今川義元へ一番槍をつけた。その槍働き、見事」


小平太は、顔を輝かせた。


「ありがたき幸せ!」


「それから」


信長様の目が、少しだけ意地悪くなる。


「義銀を射させまいと、矢筋へ割り込んだそうだな」


小平太が固まった。


義銀も固まった。


新介は、わずかに目を逸らした。


「誰が言ったのですか」


小平太が思わず言う。


信長様は笑った。


「戦場で叫んだのだろう。『我らの頭脳を奪わせん』と」


広間が静まり。


次の瞬間、ざわりと揺れた。


義銀の顔が赤くなる。


小平太の顔も赤くなる。


新介だけが、涼しい顔をしている。


「小平太」


義銀が低く言った。


「なぜ、それが広まっている」


「俺に聞くな。戦場で叫んだからだ」


「叫んだから広まったのだろう」


「なら仕方ない」


「仕方なくない」


新介が静かに言う。


「事実だ」


「新介まで」


義銀が頭を抱えそうな顔をする。


信長様は、声を立てて笑った。


「よいではないか。槍と刃には、頭脳が要る」


「信長様」


義銀の声が完全に困っている。


「お前たち三人は面白い」


信長様は三人を順に見た。


「義銀が道を見る。小平太が突く。新介が取る。悪くない」


三人は、同時に頭を下げた。


「はっ」


老臣は、その姿を見て思った。


若い。


あまりにも若い。


だが、その若さが、今川義元へ届いた。


これが、織田のこれからなのだ。


信長様は、広間全体を見渡した。


笑みが消える。


その瞬間、空気が引き締まった。


「今川義元は討った」


声が低く響く。


「だが、これで終わりではない」


誰もが息を詰める。


「今川は大きい。三河もまだ揺れる。尾張も、勝ったからといって明日から安泰になるわけではない」


信長様は、淡々と言った。


「だが、今日、織田は示した」


その目が、鋭く光る。


「大軍が相手でも、首に届けば勝てる。道がなければ、作ればよい。誰も下らぬ場所なら、下ればよい」


義銀が目を伏せる。


小平太が膝の痛みを忘れたように背筋を伸ばす。


新介が静かに頭を下げる。


勝家は黙って信長様を見ている。


信行様は、少し後ろで、兄の言葉を受け止めている。


「今川に勝ったのは儂一人ではない」


信長様は言った。


「首を取った者がいる。一番槍をつけた者がいる。道を開いた者がいる。鳴海を封じた者がいる。岡部元信を討った者がいる。兵糧を整えた者、馬を走らせた者、伝令を繋いだ者、傷を負いながら踏みとどまった者」


広間の空気が変わる。


皆が、自分の働きも戦の一部だったのだと気づくような声だった。


「功ある者には与える。怠った者には次を与えぬ。織田は、働いた者が前へ出る」


信長様は、にやりと笑った。


「だから働け。次も勝つぞ」


「はっ!」


広間に声が満ちた。


老臣は、その声を聞きながら、とうとう一筋だけ涙をこぼした。


慌てて袖で押さえる。


誰にも見られていないと思った。


だが、横にいた若い家臣が、気づいてしまったようだった。


「どうされました」


「何でもない」


老臣は低く言った。


「雨が、まだ残っていただけだ」


若い家臣は、何も言わなかった。


ただ、静かに頭を下げた。


評議は終わりへ向かう。


褒賞が定まり、使者が動き、文が整えられる。


勝利の熱はある。


だが、その下には次への緊張がある。


それが、信長様の織田だった。


やがて、信長様がふと思い出したように言った。


「そうだ。藤の方から文が来ておったな」


その瞬間、勝家の眉がわずかに動いた。


義銀の顔色が変わる。


小平太と新介は、まだ事情を知らずに首を傾げていた。


信長様は、実に楽しそうに懐から文を取り出した。


「読み上げるか」


「兄上」


信行様が、胃のあたりを押さえた。


「それは、藤の方様に怒られるのでは」


「ならば読まぬ」


信長様は笑った。


「だが、要はこうだ」


そして、藤乃の声色を真似るように言った。


「『けが人を集めて、どうするつもりですか! 報奨の話だというのは分かりますから、手短に!!』」


広間が、静まり返った。


次の瞬間、あちこちで肩が震えた。


笑っている。


だが、声を出せない。


勝家は額に手を当てた。


「藤乃……」


義銀は目を伏せた。


「叔母上……」


小平太が、恐る恐る義銀に囁く。


「義銀、お前の叔母上、信長様にそのような文を?」


「書く方です」


新介が静かに言う。


「強い方だな」


「とても」


義銀は真顔で答えた。


信長様は愉快そうに続けた。


「儂は返したぞ。『けが人の夫と甥と、その友人どもをまとめて預ける。好きに療養させよ』とな。」


勝家が顔を上げる。


義銀が、嫌な予感を覚えた顔をする。


小平太は、まだ意味が分からない顔をしている。


新介は、わずかに目を伏せた。


信長様は、さらに楽しそうに言った。


「すると、すぐに返事が来た」


「……何と」


信行様が聞いた。


聞きたくなさそうな顔で。


信長様は笑った。


「『なら必ず、全員、柴田邸に来るように言いつけてください』」


広間の空気が変わった。


義銀は、完全に観念した顔になった。


勝家は、静かに頷いた。


「藤乃の命ならば、従うしかあるまい」


小平太が目を瞬かせる。


「療養、でございますよね?」


新介も、まだ落ち着いていた。


「怪我を見てもらえるなら、ありがたいことでは」


義銀が二人を見た。


その目は、どこか遠かった。


「そう思えるうちに、思っておけ」


「何だ、その言い方は」


小平太が眉を寄せる。


新介が義銀を見る。


「藤の方様は、それほど厳しいのか」


義銀は、ゆっくり頷いた。


「叔母上は、普段は優しい」


「そうだろうな」


「だが、怪我人と病人と赤子に関しては、別だ」


勝家が静かに言った。


「別だな」


義銀が頷く。


「はい」


小平太は、まだ半信半疑だった。


新介も、少し興味深そうにしている程度だった。


二人はまだ知らない。


柴田のお藤の方が、本気で怒った時の声を。


寝ていろと言われた時に、起き上がろうとした者へ向ける目を。


煮沸した湯と清潔な布を用意させ、怪我の状態を確認し、無理をした者を本気で布団に縛りつけかねない勢いを。


義銀だけが知っていた。


勝家も知っていた。


だから二人だけが、深刻だった。


信長様はそれを見て、楽しそうに言った。


「よいではないか。藤の方の布団なら、戦場よりはましであろう」


「信長様」


義銀が真剣な顔で言った。


「叔母上が本気で怒っている時は、戦場より怖いことがございます」


広間に、何とも言えない沈黙が落ちた。


勝家が、静かに頷いた。


「分かる」


その一言で、今度こそ広間に笑いが起きた。


ただし、小平太と新介だけは、まだ完全には分かっていなかった。


小平太は膝を押さえながら首を傾げる。


「そんなにか?」


新介は静かに答えた。


「行けば分かるのだろう」


義銀は、小さく呟いた。


「分からないままの方が、幸せだったかもしれない」


こうして、桶狭間の戦功は定まった。


一の功、毛利新介。


二の功、柴田勝家。


三の功、織田信行と津々木蔵人。


四の功、斯波義銀。


五の功、服部小平太。


そして、その戦功を得た者たちは。


信長様の命により、揃って柴田邸へ向かうことになった。


理由は、療養。


ただし、義銀の頭に浮かんだのは、ただ一つだった。


――これは、褒賞なのか。


――それとも、連行なのか。


小平太と新介は、まだ知らない。


鬼柴田の妻。


柴田のお藤の方が、怪我人を前にした時、どれほど怖い顔をするのかを。


清洲の空には、雨上がりの光が差していた。


だが、柴田のお藤の方が待つ屋敷の方角だけは、義銀にはなぜか少し曇って見えた。


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