魔物の襲来
自陣を出発してから約30分程
翔歌が前衛のいる場所に着くと怪我人が一箇所に集められていて運んだ人は怪我人を降ろすと戦闘へ戻る事を繰り返していた
「今、治療しますね」
そう声をかけてから翔歌は詠唱を始める
「“光よ、傷を癒す雨となり降り注げ
ヒール・レイン”」
空に向かって両掌を向けるとオレンジ色の光がその場に降り注いだ
治療を終えた翔歌はそのまま前衛組が戦っている方へ走った
「あ、あの、援護します!」
「風使いか…」
「何処に行けばいいですか?」
「なら、後方から遠距離をやってもらおう」
「わかりました。」
攻撃隊に翔歌が加わり、戦況にも変化があった。今までは押されていたのを食い止めるので精一杯になっていたが少しずつ押し返していた。
陽が傾き始めた頃、両方に疲れが見られるようになった
そんな時、ふわりと風から情報が飛んで来た
「え…?
うそ、でしょ?」
「風使い?」
どうしたんだ、と聞く騎士の言葉には答えず、だんだんと血の気が失せていく翔歌に近くにいた騎士達は更に声をかけるが聞こえていない様子で声かけに反応のない状況に困る中「どうしよう」と翔歌は繰り返し呟きながら思考を巡らす。
「一体、なんなんだ!」
痺れを切らした1人が声を荒げると翔歌が、ハッと気がつき口を開いた
「ま、」
「ま?」
「ま、まも…魔物が、出た…」
「なんだ、魔物か…
……って!魔物っ!!?」
翔歌の答えに一瞬、大したことがないように思ったが、重大なことに気づき声を荒げる
「な、なんでこんな辺境に魔物なんかが出るんだ!?」
「えっと、それは……」
翔歌が理由を説明しようとしていると、最前戦とその背後を戦っていた人達が顔色を変えて走って来た
ただ、一人は引きずられて
それと同時に相手も陣に下がった事が風からの情報で翔歌に入った
「な、なにアレッ!!」
煌牙が指をさす先には通常の倍ぐらいの大きさの魔物。動きが鈍く、目覚めてすぐのようで此方には気づいていない
「Aランクの魔物だねー」
「へぇ、アレってAなんだー」
浅葱部隊の1人に引き摺られていた亜希羅が答える
「うん。大きさから見ても、通常なら討伐隊を編成しなきゃいけないくらいかな?」
「あれで?」
「うん、あれで」
「和やかな雰囲気で話してる場合じゃないよな!?」
翔歌と亜希羅がゆったりと話しているのを煌牙が突っ込む。
「えー、焦っても仕方ないし。
僕、見たことあるし」
「え、見た事がある??」
「まぁ、Aランクならこの人数だし、私達もいるし?
対処はできるけど…大丈夫かな?みんな疲れてるし」
「なら、僕が行く!」
「ちょっと待って。
一回、本陣に帰ろう?
対処班、編成してからじゃないと」
勝手に行動したら怒られるよ、と翔歌は続ける
「えー」
「焔、残念がるとこじゃないだろ!?
凪も、冷静に判断してる場合じゃ……って、あれ?
凪!!?」
今、気づいたのか。と周りの人は思う
会話をしたのにも関わらずいたことに気づかなかった煌牙は「何でいるの!?」と聞いている
それに対し「治療が終わったから援軍」と翔歌は笑顔で答えた
その後、全員の意思が決定し、一度本陣に戻った皆は突如現れた魔物の対策を練った
相手方に討伐を任せるやこのまま放置を考えたがどれも解決には至らない
「とりあえずは現れた理由、だな」
「えっと、それなら
この辺り、魔物の住処があったと思うんです」
そう平然と言う翔歌に亜希羅以外が青ざめていった
「じゃあ、他にもアレがいるのか?」
騎士からの問いには、朔夜が答えた
「群れを作らないSは単独。
Aは少数だけど下級を従えてるし、BとCは群で行動するから…多分」
「なら、何故、今なんだ!」
「憶測ですが…、住処?冬眠中?だった近くで大きな音がでる戦闘とか“火属性”の魔法の熱で目が覚めたのかも…?」
「どんな確率だ…
そもそも、巣の報告なんて貰ってないぞ!?」
「樹木に“擬態”されてたら簡単に見抜けないから無理かと…」
翔歌の発言に大人達は頭を抱えるが、亜希羅だけは今にも飛び出していきそうな状況だった
「弱点は、なんだ?」
「んー、木だし“火”かな?“擬態”できるなら、他の属性の可能性も…
でも、私は初めて見た魔物なので、実践しないと分からないです」
「だれか、図鑑や報告で見たり聞いた事は!?」
誰も手を挙げず、お手上げ状態になった時、痺れを切らした亜希羅が声をあげる
「ねぇ、討伐しないの!?
僕、行っていい!?」
「まぁ、いると邪魔だしな…
いいんじゃないか?」
「んー…、仕方ないなぁ。なら、行こうか?」
「うん!」
「あー…やっぱりそうなるのか…」
亜希羅、朔夜、翔歌の順で発言して、最後に煌牙が諦めたように呟いて準備を始めた。
その光景を見ていた騎士やクランの人達は一拍遅れたが4人を止めに入る
「お前たち正気か!?
いくら国最強の魔術師とはいっても、子どもでAランクの魔物相手に…!」
「あ。離れてないと危ないから」
騎士の言葉を遮り朔夜が言う
「は?」
「だって、アンタ達じゃあの3人のスピードについていけないから、邪魔になるよ」
それに、“子ども”って言葉聞き飽きた。と朔夜は言った。




