春に吹く風2
陣達が少女の部屋を去った後、“訓練場へ来い”との連絡をもらい必要な道具を鞄へ詰める
「浅葱部隊の訓練場ですね。気をつけ行きなさい。あなたまで怪我をしないようにね」
「はい、気をつけます」
「おねーちゃん、いってらっしゃい!」
「うん。いってきます」
孤児院の子ども達へ手を振りながら訓練場へと足を進めた。
訓練場についた少女は、入り口で見張りに声を掛けてから、浅葱部隊の人の案内で奥の方へ歩く
「来たか」
「治す人は、どこですか?」
「いつも通りの所にいる」
「わかりました」
怪我をした人のいる場所に着くと、端から回復魔法をかけて治していく
途中で怪我を負った人から問いかけられた
「お前は、何を何処まで知ってる」
「“戦争”なら、私は……参加しない」
「何を言ってるんだ?お前は戦力なんだよ。治療ができて戦闘もできる、ガキだろうがなんだろうが使う。…勝つためなら、“バケモノ”はいい駒だ」
「稔、やめておけ。
そもそも俺は、力が強いからといって子どもを戦地へ連れて行くのは反対派だ」
「…隼先輩が反対派なのは知ってます。ただ、俺はこの“バケモノ”はーー」
「だが、まだ子どもだ」
少女を“バケモノ”という後輩の言葉にかぶせる隼は強い口調で諌める
少女の《風》と《治癒能力》 は脅威と思う人間もいれば、道具としか見ない者もいる。
治療を終えて少しすると訓練も終わったようで少女にも声がかかる
「部屋に戻れ」
少女の前には浅葱色のローブを纏った男性が少女の顔も見ずに手で追い払う仕草をする
「…はい」
小さく返事をすると少女は来た道を戻っていく
ローブの色は役職や魔力量によっても変化する
最初に訪れた人が纏っていた“藍色”は情報を扱う人達の部隊。
魔物やダンジョンなど変化がないかを定期的に見回りも行っている。
次に闘技場で会った“浅葱色”は戦闘に特化した人達で討伐任務をメインに務める部隊。藍色部隊からの情報を元にチーム編成を行っている。
「…今日は、37人、か……
…私は、治すだけ
戦争なんて嫌だなぁ……」
少女が小さな声で呟くその言葉は誰にも届かず静かな部屋の中に消えた
翌日も藍色の職員が少女を訪れ“仕事”
と伝える。この日の仕事は治療ではなく《情報収集》
週に何度か外に連れ出され周囲の情報を風で集めさせられている
「変化は?」
「…たぶん、ない、です」
「…小さな事でも話してくれると助かるんだが」
「……
人の動きはわからない、けど…魔物の様子が変…、何か、怖がってる??」
「警戒態勢って事か?
縄張り意識のある種族か、それとも危険因子があるのか……
念のため報告しておくか」
少女が集められた情報は少ない。
理由の一つは、少女の年齢はまだ8歳に満たない幼く情報処理能力が足りない為、情報を知っていても伝えられない
これ以上の収集はないと考えた職員は少女を部屋の前まで送っていった
「みんなが…怖がってるのは何?」
目を瞑って少女は風に語りかける
「ま、りょく?
強い…力?………大地から、伝わる?」
風が少女に教えたのは大地の魔力
その正体は何かはわからないまま少女は眠りについた
翌日、大きな魔力反応があったと“藍色”と“浅葱”の部隊から10名が南の森へと派遣される事が決まった
原因調査の為、数日分の装備を馬に積んで旅立っていった
だが、森に行っても近くの村でも異常は発見されず派遣された部隊も困惑した。装備も後1日、といったところで森からそう遠くない街にまた大きな魔力反応があった。
その情報を元に先に派遣された者たちが街を訪れると街は異様な静けさに包まれていた。




