春に吹く風
10年以上前に書いていた物を再編成。
ーー春ーー
“《風》は誇りだったのに”
“あの国にいたらこの子は幸せにはなれない”
“囚われしまわないように…”
“ごめんなさい、許して”
小さな少女に対して両親はそう言い残し少女の名前と共に施設へと置いていった
少女が成長し、5つになった頃、僅かであった特別な能力が定着した。
自他の傷を一瞬で治し癒してしまうその能力をこう呼ぶ事にした
__《治癒能力》と
春の心地よい風と光が降り注ぐ昼下がり
「…暇、だなぁ」
施設の中の一室、一人で暮らすには広すぎる部屋から外を覗きため息をつく少女がポツリと呟いた
柔らかな風が少女に語りかけるように頬を撫でる
少女は応えるように手を伸ばす
「え?もう、すぐ?
何が、もうすぐ??」
風の力を強く受けている少女には風の声を聴く事ができる
これは少女にしかできない
「うーん…、」
“もうすぐだよ”“楽しみ”“大丈夫”と笑いながら少女の周りを飛ぶ風の精霊達に困惑し、問いかけるが返ってくる返事は同じ事ばかりで、余計にわからなくなってしまった少女はポケットの中から白い紙を取り出すと言葉を込めて息を吹きかける。
「あ。魔力込めすぎたかも…」
鳥の形を成して、勢いよく羽ばたいた魔術具に少女は失敗したかな、と小さく呟く。
少女が魔術具を飛ばしてから10分程して藍色のローブを羽織った男性2人が少女のいる部屋を訪れる。
「陣さん」
「魔力を入れすぎだ、バカ!
使い方はちゃんと教えただろう!?」
「ご、ごめんなさい」
「…まぁ、いい。
それで、どうしたんだ?」
「あの、ね。“もうすぐ”“楽しみ”って風さん達笑ってばっかりで…、よく、わからなくって…」
「は?そんな事で呼び出したのか?俺たちは暇じゃねぇーんだよ」
「凛、黙ってろ」
「陣さんは、何故この化け物の肩を持つんです?得体の知れない力を使い、魔力も桁外れ。いつ、被害を受けるか……」
「黙ってろと言ったはずだぞ。
この子は、保護下にある
特殊能力があってもまだ幼い子だ」
風使いと呼ばれた少女は、平均よりも魔力が多い。人には産まれたときに魔力の許容範囲が決まるが、少女にはまだ限界がなく、成長と共に増え続けている。
それもまた、周囲の人の目には脅威に写る。
嫌悪し、化け物と呼び避ける者。
力を利用しようとする者。と扱いは様々だが、一部の人は他の子と変わらずに接している。
少女のいる橙部隊が統率する施設では、乳児から15歳までの子供が生活する。食事や勉強時間は同じ部屋で過ごすが、就寝などの生活場は隔離されている。
「風使い、落ち着いてもう一度語りかけて見てくれるか?
何が楽しみなのかを」
「う、うん」
風がそよそよと周囲を漂い、静寂が訪れたあと、少女が口を開く
「“もうすぐ会えるよ”
“北のほう、山のなか?”
“秋の…しゅご?”」
「…なるほどな……
討伐ではなさそうだが…
上と相談してくる。情報に感謝する、風使い」
「これで、大丈夫??」
「あぁ。正式な調査は俺たちの仕事だからな
…また来る」
少女の頭を撫でてから陣は部屋を出ていく。一緒にいた凛と呼ばれていた青年は少女を睨みつけながら陣の後を追った。
4つ程にストーリーを分けてます。
春夏秋冬、それぞれで視点を変えるかも




