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【WEB版】転生した空間魔法使いは正体隠して目立ちたい!~それ俺ですとは言いません~  作者: 岳鳥翁
第2章:紛い物の竜殺し

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第57話:介入する魔法使い

 アホから解放されて意気揚々と来てみれば、想像していた数倍もややこしそうな雰囲気にちょっと介入のしどころがわからなかったトーリです。


 いや、そりゃね? 到着早々に派手に登場してその場の全員にインパクトのある登場で目立ちたいとは思っていたんだけどさ?


 下で見たこともない、なんかキャラの濃い不気味な大男が延々としゃべってたわけでして。

 ここで飛び出して行っても、「何か話してたら出てきたんだけど?」みたいな微妙な雰囲気になりかねないかなと思って、上空に体を『固定』して待機していたわけです。


 考えていた展開としては、この場で「ハーハッハッハ!」とか声をあげて「あ、あれは……!」みたいに注目を集めてから名乗りを上げる、みたいな。


 そしたら急に大男の隣にいた、他の化物よりもでかいのが動いてマリーンに襲い掛かるもんだから、慌てて様子見を辞めて空中から飛び降りてすぐその前に『転移』したのだ。


 こうも急かされては、考えていた展開が全部パァである。


「『断裂』」


 ともあれ介入するなら仕方ないと意識を切り替えた俺は、マリーンに襲い掛かっていた化物を含めたすべての化物の首と手足を『断裂』で落とした。


 それと同時に、マリーンの目の前でまた復活されては大問題であるため、彼女たちの目の前に着地を決めてバラバラになった化物の体を蹴り飛ばすと、蹴り飛ばしたのも含めてその場から動けないように固定する。

 これで他の化物が人を襲うことはないはずだ。


 ……ま、まぁ傍から見ればピンチで突然現れた謎の人物だ。視線は集めているし、結果オーライだと考えておこう。


「あ、あなたは……」


 突然現れた俺に対して、マリーンが守ろうとしていた少女が問いかける。

 チラと仮面越しに見れば、だいたいマリーンと同い年くらいだろうか。服装からして、恐らくこの娘が『白亜の剣』が護衛していたリュミネール王女だろう。


 ……王女様でいいんだよね?


「はてさて、何者かと聞かれましてもねぇ……俺自身は名を名乗るつもりはないんですよ、お姫様」


 マリーンがすぐ近くにいるが、声は意識して変えてるし仮面越しだからくぐもってさらにわかりにくいはずだ。


 流石に王族相手には以前のような口調はやめた方がいいだろうと、軽く一礼しながら答えれば「は、はい……」と頷いただけで固まってしまった。


 お姫様であることは間違っていなかったようで一安心だが……何故それ以降何も言ってくれないのか。


「(……いや、死ぬかどうかの瀬戸際だったんだ。仮面付けた正体もわからない奴に助けられても、状況も理解できていないだろう)」


 逆に言えば、同じ状況にあって目の前でキラキラしたジト目を向けて来る魔法馬鹿は普通ではないということになるが……それはよく知っていることなのでスルーしておこう。

 とりあえず、声でバレていないのならそれでいい。


「あの時の魔法使い……ですの……?」


 こちらをみて恐る恐るといった様子で話しかけて来るアイシャさん。

 『白亜の剣』の中では唯一、あの時の俺と言葉を交わして知己を得ていた人物だ。


 さて


「(パレード側と乱入者側の敵対パターンでの会話は事前に考えてたが……味方側で考えてなかった……!)」


 謎の魔法使いとしてのキャラ付けは、テンション上がってたとは言え前回のボーリスの時の口調で固定せざるを得ないだろう。


 登場ごとにがらりと変わるやつなど、キャラとして不安定に過ぎる。

 それにクール系無口もいいけど、俺の性格上喋りまくるのはほぼ確定。


 だったら、アイシャさん相手でも同じように接するのが吉と見た……!


 ふぅ……と仮面の中で一度息を突き、意を決して肩を竦めた俺はおどけてみせるように返答する。


「あらま、どっかで見たと思ったら……あの時のお嬢さんじゃないの! 元気にしてた? ポーション役に立ったかい? その後は問題なく復帰できた?」


「……ええ、おかげさまで。仲間は皆無事でしたわ」


「おうおう! そりゃあなによりだ!」


 よかったよかったと笑い声をあげながら一歩踏み出せば、アイシャさんが警戒したように一歩身を引いた。

 流石にこの状況下でこんな現れ方すれば、以前助けたとはいえ敵味方の判断は容易にはできないだろう。


 信じてもらえないことは理解できるため、「おーけーおーけー」と腕を組んで頷きながら彼女から距離を取って立ち止まった。


「そんなに警戒せずとも、別にあんたらと敵対するつもりはないから安心してくれよ。どっからどうみても、俺は善良な魔法使いじゃないか! それにほら、敵の敵は味方って言うだろ? つまり俺は君たちの味方だ! 安心してこの場を任せてくれたまえ!」


 大袈裟な身振りで味方アピールしてみる。

 しかし、アイシャさんの目は依然として疑いのそれである。


「以前助けていただいたことはその通りですし、私もお礼を言いたいとは思っていましたが……この状況下ではあなたも疑うべき対象ですわ。……それにしてもあなた、ずいぶんとおしゃべりになっていますわね」


「前はなぁー。ほら、この仮面もなかったからさ! 迂闊にしゃべると顔まで見えるかもしれないだろ? 俺の正体を暴く一番のチャンスって、実は君達と出会ったあの時だったりするんだなこれが! 顔見たかった? 残念っ! もう遅い! ってね!」


 普段のトーリとは別人物であるように振舞うため軽薄そうな口調で語り掛けるのだが、それがかえって怪しく思えるのだろう。


 何が起きているのかと向こうで困惑気味の大男と怪しい俺の両方を警戒するアイシャさん。

 そんな彼女はこちらを見て「どうしてここに?」と疑問を口にした。


「いやぁね? 別に名声とか報酬とか、そう言うのには興味が無い俺なんだけどさ。流石に俺の名を騙る偽物が出たってなるなら話は違うよねぇ~ってこと! んで、ちょっとその顔を拝んでお灸でも据えてやろうかと思ったんだが……」


 若干の嘘を吐きながら恐らくその偽物であろう男を見れば、大男の足元でボロボロの姿になってぶっ倒れているのが見える。


「既にぼろ雑巾。無様すぎて据えるお灸もねぇなってね! まあでも、なんか面倒なことになってるなと来てみたわけだ! 予想以上に王都が大混乱してて、流石の俺もびっくり仰天よ!」


「あなた後ろ……!?」


「問題なし!」


 目に見えるように指をパチンと弾く。

 それだけで、背後から迫っていた一際体の大きい化物の体がバラバラにはじけ飛んだ。


 他と同じようにかけていた『固定』による拘束。

 その拘束をバラバラだったにもかかわらず自力で解いたのを考えると、この個体は他と違って特別なのだろう。


 再生速度も他とは桁違いだ。

 まぁ見た目の大きさからして特別! みたいな感じだから、そうだと言われれば納得もするが。


 ……で、だ。


「……すごい」


「……マ……お嬢さん。なんでそんなに近いんだい?」


「魔法、何の魔法? 風じゃない。知りたい。教えて。ワクワク」


「……保護者の方いらっしゃいますかぁ!」


「マ、マリーン!?」


 『探知』は常に使用しているため、普段ではありえない動きで背後をとったマリーンに少々驚いてみれば、アイシャさんが驚いたような声でマリーンの名を呼んだ。


「ワクワク……」


「物欲しそうなジト目を向けられているところ悪いんだがね、お嬢さん。俺は教えるつもりはこれっぽっちもないんだわ! 残念だが、勝手に予想しておくれ」


「む……ケチ」


「ハハッ! ケチで結構! 魔法使いにとっちゃ、自分の魔法なんてのは大事な情報なんでな! そう簡単に教えるわけにはいかんのよ」


 で? と再び指をパチンと鳴らせば、頭上から迫っていた化物の体がピタリと停止する。

 空中に固定された化物を見て「飽きないねぇ」と肩を竦めた俺は、『圧縮』で化物の巨躯を圧し潰した。


 俺に執着してくれるのは楽だからいいんだけど、ちょっと単純すぎませんかねぇ。


「この化物共を嗾けてんのは……あんたってことでいいのかい? アホ共よりよほど楽だけどさ! どうも! 偽物君がお世話になりましたっ! (わてくし)本物の魔法使いでっす!」


「馬鹿なぁ……!? 上級悪魔ですよぉ……!? 竜種をも超える存在が三度もやられるなんてぇ……!? まさか我らが神ぃ……? いやぁ、ありえないぃぃぃ! 我らが神はぁ! まだ降臨されていないはずぅ!!」


「あら、聞こえてない感じです? ハローハーワーユー?」


 頭を抱えて「あり得ない!」と宣っている大男に再び語り掛けてみるのだが、どうやら俺の声は聞こえていないらしい。


 話ができないと、敵から情報を聞き出しながら戦う、的なムーブができないわけだが……まぁ、それはできなくてもいいか。一応、あれが悪魔だってことは今の発言でわかったから良しとしよう。


 にしても、話し方の癖で俺よりキャラが目立ちそうだなこいつ。


「んじゃお嬢さん方。ちょっと危ないから下がっててもらえるかな? 俺はあれに用があるんだわ」


 ちょいちょいと大男を指さして前へと踏み出す。

 俺の計画全部水の泡にしてくれやがった張本人だ。アホ共にいろいろと邪魔されて俺が苦労したのも、きっとあいつのせいに違いない。


 ……そういえばあいつ、ちゃんと到着したのだろうか。

 こっそりと確認してみれば、街の端っこの方で騎士たちに合流したのが確認できる。


 とりあえずは一安心だろう。


「いえ、私達も一緒にたたか――」


「必要ないから安心しなさいな! 気持ちは嬉しいけど、お嬢さん方はお姫様を守っていてほしいし」


「でも――」


「まぁはっきり言えば、邪魔にしかならないって話なんだよねこれが」


 少し語気を強めたその言葉に、アイシャさんは息を飲んだ。

 でも実際のところ、それは事実でもある。気持ちはありがたいのだが、ここは引いてもらえた方がありがたい。


 何より、俺一人でやらないと話題が分散してしまう。


 いやだよ? それ『白亜の剣』がいたからじゃーん、とか酒場で聞くの。


「ムフフフゥ……呑気ですねぇ。わざわざおひとりで挑もうとはぁ……その甘さがぁ、我らの付け入る隙にぃ――」


「ならないんだなぁこれが!」


「「「っ!?」」」


 いつの間にか大男の背後へと『転移』で移動していた俺の姿に、『白亜の剣』の二人と大男の反応が重なった。


「守りなさ――」


「遅いっての」


 何か命令のようなものを下そうとした大男であったが、その前に『纏い』で最大限強化した蹴りを叩き込む。

 身長差はあるが、大男の体はまるで空き缶が蹴られたように簡単に飛んでいき、そして近くの壁を破壊して地に落ちた。


「な、なに……今の動き……わ、(わたくし)でも見えなかった……」


「アイシャ違う、あれ魔法」


 驚愕で目を見開いたままのアイシャさんだったが、その一言で「何ですって?」とマリーンに顔を向ける。


「でも風魔法じゃない。あれは移動じゃない。たぶん、消えて現れた?」


「(うーわ……今の一手でそこまでわかるのかよあいつ……)」


 やはり魔法に関しては天才か何かだなと内心で呆れながら、その場に落ちていたそれを掴み上げる。


「ぅ……ぁ‥‥…」


「ありゃぁ、これはこれは……偽物君虫の息じゃん」


 全身傷だらけの流血しまくり。おまけに生気のない顔つき……てか、22歳だよな……? なんかえらく老けてるように見えるんだが、これもさっき言ってた指輪によるものなのだろうか。


「(まったく、人の獲物を横取りしてくれちゃってさぁ。おまけにこれだけ暴れて……活躍を見てくれる市民が皆避難してるじゃねぇか。予想していなかった展開とは言え、シナリオ修正待ったなしだよこの野郎)」


 元のプランでは散々に偽物君を煽り散らかし、そして俺が本物だとねじ伏せる様を周囲に見せつけるつもりだった。


 それがいざ参ってみれば、一般市民の観衆はゼロ。肝心の敵役はこんなボロボロにやられちゃってまぁ……


 同情くらいはしておいてやろう。だからと言って、俺の名を使ったことを許そうとは思わんが。


「まぁ、これも報いだと思って諦めてくれや、偽物君。存分にボコられたみたいだし、追撃かますほど俺も鬼畜じゃないからな。感謝しろよー?」


 強化した腕で偽物君を掴み上げると、遠心力の心配をした方がいいくらいの速度でブンブン回す。


「そーれっ!」


 ためてためて、そして偽物君をアイシャさん達の方に向けて思い切り放り投げ、「一緒に面倒みといてねぇ!」と頼んでおいた。


 哀れ偽物君はズドン、という音と共に顔面着地で瓦礫の中に突き刺さる。


「おお……見事な逆さま――」


「殺せぇ!!」


 そんな俺に向けていつの間にか復活していた悪魔が四つ手を向けた。

 

 そして放たれたのは紫紺の魔力の奔流。

 手から放たれたその一本一本が、以前見たヴィーヴルヴァイゼンの『白竜咆哮(ホワイトブレス)』以上の威力はありそうだ。


「後悔しても遅いですよぉ!! 悪魔の魔力でぇ、その魂ごと消し去ってあげましょう……!!」


「おお、すごい迫力!」


 暢気に構えている俺に向けて放たれた四つの魔力光のレーザーが、俺を呑み込もうと目前まで迫っていた。

 その光の直線状に、『接続』の穴を構えておく。

 行き先は悪魔の頭上。


「さぁ! その魂を我らが神にささげるのですぅ……! 『竜殺しの魔法使い(ドラゴンスレイヤー)』ァ――」


 そしてその光の奔流は、『接続』の穴に触れた直後、悪魔の上空から降り注いだ。


 悪魔の体が己の紫紺の奔流によって消し飛ぶ様が、この場にいる全員の目に映る。


「――ァァア?」


「決め技みたいに言ってるところ悪いんだけどさ。意味ないんだよね! ごめんね! 無駄に叫ばせちゃってさぁ!」


 呆けた顔の大男に、ケラケラと笑いながら謝ってやる。


 何が起きたのかと誰もが困惑して俺に目を向ける中で、ただ一人、俺の笑い声だけが周囲に響いているのだった。

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正体不明のヒーローはキャラの路線迷走中……落ち着く先は何処なりや。
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