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【WEB版】転生した空間魔法使いは正体隠して目立ちたい!~それ俺ですとは言いません~  作者: 岳鳥翁
第2章:紛い物の竜殺し

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第55話:偽物の英雄1

「あのクソ男!! どこにいったんですのぉぉぉ!!!」


「アイシャ、後方注意」


「見えていましてよ!」


『NA!?』


 背後から襲い掛かってきた悪魔に向けて剣を振るう。

 それだけで『纏い』による魔力を帯びた刃は悪魔を容易く斬り裂き、その場に斬り捨ててしまう。


「『土喰(どぐう)』」


 そしてその斬り捨てた悪魔の体は、マリーンの土魔法によって土中へと沈む。

 時間が経てば復活する悪魔も、土の中に埋めてしまえば斬り捨てたままにするよりも復活に時間がかかる。


 それに気づいてからは、倒した悪魔をマリーンや土魔法が使える宮廷魔法使いの者たちが積極的に悪魔を土中に埋めているのだった。


「『風槍(ふうそう)』『水牢獄(すいろうごく)』『岩落(がんらく)』」


 もちろん、マリーンはアイシャが対応できない範囲の悪魔や、窮地に陥った近衛騎士、宮廷魔法使いの援護も忘れてはいない。


 不可視の槍で悪魔に風穴を開け、抜け出すことのできない水の中へと悪魔を閉じ込め、上空に創り出した岩を落として悪魔を潰す。


 「助かった!」という感謝の言葉に視線を向けて応えたマリーンは、リュミネールを守りながら全体の戦況を確認する。


「(膠着状態。時間は敵)」


 今のところ押し切られる様子はない。

 だが、いつまでもこのままというわけにもいかない。


 復活する悪魔とは違い、こちらはいつか疲弊するし、魔力も有限だ。

 そうなれば戦況は一気に悪魔側に傾き、全滅する可能性がある。


 その前に、悪魔の召喚者を倒さなければならない。


「アイシャ、疲れた?」


「問題ありませんわ。この程度の相手なら、あと百は斬れましてよ!」


 そういうあなたはどう? と視線を向けられたマリーンは、大丈夫だと頷いた。


「魔力には、まだ余力はある。でもいつもより疲れる」


「全体を見てますもの。疲れるのは当然ですわ」


「ん。でも、ボクはアイシャの魔法使い。後ろは任せて」


「ええ、もちろんですわ」


 会話を続けながらも、悪魔を斬り、そしてマリーンの魔法によって土に沈んでいく悪魔。

 そんな悪魔の様子を見ながら、アイシャはそうだ、と何か思いついたように笑う。


「これが終わったら、明日はお菓子店の食べ歩き何てどうかしら。もちろん、トーリさんをお誘いして」


「……ん、頑張る」


 フンスと息を入れ直して杖を構えたマリーンに、「頑張ってくださいまし」と笑った。


 だがそんな彼女らの近くの壁に、突然何かが飛来した。


 轟音と共に大量の砂埃をあげて崩れ落ちる壁に「なんですの!?」と驚きの声をあげるアイシャは、巻き上がる煙の中で蠢く人影に目を見開く。


「ガフッ……!? ぐ、ぐぞ……! 舐めやがってぇ……!!」


「くそおと……バンデラン卿!? いったい何があった……あなた老けすぎていませんこと!?」


 煙が晴れて姿を現したのは、ボロボロの姿になったシルヴァだった。


 気持ちの悪い言動と共にどこかへ行ったかと思えば、今度は変わり果てた姿になった彼に、流石のアイシャも動揺せざるを得なかった。


 なにより、真っ白に染まった髪と皺だらけの顔は、どう見ても老人のそれだ。


「ハァッ……! ハァッ……! あの、野郎……!! この、俺を……!!」


「おやおやぁ……随分と無様な姿になりましたねぇ? 『竜殺しの魔法使い(ドラゴンスレイヤー)』殿ぉ?」


 初めて聞く不気味な口調のその声に、その場にいた誰もが目を向けた。


 現れたのは深紅のローブを身に纏う、灰色の髪をオールバックにした大男。


「まったくぅ、本当に竜種を討伐したのですかぁ?」


 手にした本を宝物のように摩りながら笑みを浮かべるその背後に、先ほどまでアイシャ達が相手にしていた物よりも巨大な悪魔が立っていた。


 角と手腕は四つに増え、皮膜の張った立派な羽。そして口しかなかった顔には魔法陣のようなものが描かれている。


「チェ、ラレッダァ……!!」


「チェラレッダ枢機卿とぉ、ちゃぁんと呼んでいただきたいものですねぇ」


 チェラレッダと呼ばれた大男が片手をあげれば、背後に控えていた巨躯の悪魔が四つの手のうちの一つをシルヴァへと向ける。

 そして「放ちなさい」という合図とともに悪魔の手から放たれた紫紺の魔力の塊は、寸分の狂いもなくまっすぐに倒れ込むシルヴァへと叩き込まれた。


 直後、紫紺の魔力が弾け、放電したかのようにその魔力がシルヴァの体を蝕んでいく。


「がぁぁあああぁぁああああぁぁ!?!?」


「バンデラン卿!?」


「!? ちょっとあなた! いったい何をしたの!!」


 尋常ではないその様子に、思わず悲鳴を上げるリュミネールと剣を構えてチェラレッダに叫んだアイシャ。

 そんなアイシャの姿を見て、チェラレッダは「おやおやぁ?」と笑みを向けた。


「あなたはぁ……ええ、ええ……! もちろん知っていますともぉ……!! 『白亜の剣』ぃ、『斬姫』アイシャ・ガーデン……! よもやこんなところでお会いできるとはぁ」


 そしてぐるりと回りを見回したチェラレッダは、マリーンやリュミネールの他に近衛騎士や宮廷魔法使いの面々を見てさらにその口調が激しいものへと変化する。


「ムフッ、ムフフフフフゥ……!! ああ……! ああ……! 我らが神よぉ! ここにはぁ、この場はぁ……! あなた様の降臨に相応しい者たちが揃っていますぅぅ!! すぐにでもぉ、このチェラレッダが捧げて見せましょう!?」


 自らの頭を掻きむしりながら興奮気味に空を仰ぐチェラレッダ。

 そんなチェラレッダの様子を見てチャンスだと感じ取ったマリーンは小さく魔法を呟いた。


 恐らく、この悪魔の軍勢を召喚した張本人。


 てっきり離れたところで様子見しているかと思っていたが、こんな近くにいるとは予想外過ぎる。


 だがここで仕留めれば関係はない。この悪魔たちも消えてなくなるはず。


 放つのは不可視の風魔法。

 竜種を貫くほどの威力はないが、それでもマリーンが使うそれは普通の魔物相手に使えばオーバーキル間違いなしの威力を誇る。


「『風針(ふうしん)』」


 狙うのはチェラレッダの眉間。

 どんな人間であれ、そこに穴をあければ死ぬことは間違いがない。


 小さく不可視の、しかし確実に命を屠るその風の針は、マリーンの精密な魔力制御によって狙い定めた眉間へと向かい


 そしていつの間にか前に出ていた悪魔によって叩き落とされた。


「む」


「おおっとぉ、危ないですねぇ。人が話している途中に手を出してはいけないとぉ、ご両親に教わらなかったんですかぁ?」


 ピタリとその動きを止めて目線だけをマリーンへと向けるチェラレッダ。

 その言葉に、マリーンは相変わらずのジト目を向けて何でもないことのように言う。


「親はいない。だから問題ない」


「おやぁ、これは失礼。しかし『魔女』ともあろう人の礼儀がなっていないのはぁ、感心しませんねぇ?」


「む。礼儀は習ってる。メイド並み」


 ムンス、と得意げな顔で杖の先をチェラレッダに向けるマリーン。

 杖に嵌め込まれた青、緑、橙の三つのヒヒイロカネが発光し、いつでも魔法を撃てる状態で対峙する。


 だが、そんな中一人の男がチェラレッダに向けて飛びかかった。


「し゛ね゛ぇ……!! 風刃五(エアク)――」


 意地かプライドか。

 その身に風を纏わせて奥の手で特攻を仕掛けたシルヴァ。


 すでに眼中になかった男の動きに感心の目を向けたチェラレッダであったが、その目もすぐに見下す様に細まった。


「ガァッ!?」


 押しつぶされる様にシルヴァの体が地に沈む。


「ですからぁ、あなたでは無理だと先ほどから何度も言っているでしょう? 物分かりが悪いのですかぁ?」


「ご、ろす……! お前を……殺、す……!」


 悪魔によって押しつぶされながらも、右手をチェラレッダへと伸ばすシルヴァ。

 その姿を無駄だと笑いながら天を仰いでいたチェラレッダであったが、ふとシルヴァの右手に嵌ったそれを見て首を傾げ


「ムフフゥ……ムフフフフフハハハハハハハハハァ!! な、なんということでしょう……! まさかまさかぁ!? 『竜殺しの魔法使い(ドラゴンスレイヤー)』殿がぁ……その姿からしてもしやとは思いましたがぁ……ムフハハハハハハハァ……!!」


 そして次には笑い声をあげたのだった。

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― 新着の感想 ―
どうやら主人公が僭称クズに手を下す必要は無さそうで。
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