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第807話


 「さぁて。戦争も終わった事だし、少しばかり振り返るとしようかな」





 フワフワと浮かびながら、地上で起こった事を絵にして空に貼り付けるトモ。

 ケンを中心としたこれまでの出来事がズラッと並べられていた。



 召喚からもう一年以上は経過している。

 だが、あれだけ濃い時間を過ごしたので、まだ一年という考え方もできる。


 何にせよ、これは一旦整理するための時間。

 それでは、振り返っていこう。






 一番最初。 

 端に映った絵を見る


 それはやはり、ケン達ミラトニアの転移者が、初めてトモと出会った時のことであった。



 この後ケン達は1年間の修行を経てミラトニアにやってくるのだが、ケンはすぐ城を出ることになる。

 この時国王が、扱いきれないケンを泳がせておくためと気づいていたのは、当人達二人だけだったから、トモは少しばかり心配になったが、当の国王も結構遊び半分だった時は、ケラケラと笑ったのを思い出していた。

 なかなかいい性格をしている人間だ。






 次の絵。

 映ったのは、フェルナンキアとケン・リンフィア・ニール・ラビの四人。


 やはり始まりは、ケンとリンフィアの出会いからだった。

 ちなみにウルク達との出会いも同じ街だ。

 国から逃亡していたウルクだが、魔族の情報を得て、なんとかリンフィアを引き込むべくラクルの街に出向いたのだが、結果としてリンフィアは自分を助けたケンと行動を共にすることになる。


 フェルナンキアでのダグラスや魔族のマイ・メイ姉妹、そして、ニールやラビと出会う。


 そう、絵に写っているいつものパーティの始まりは、フェルナンキアからであった。

 ケン達は冒険者として、数ヶ月をこの町で過ごしたのだ。







 更に次。


 魔界の大国・エヴィリアル帝国が所有する多足巨大兵器・【デスウェポン】の絵。

 情報を聞きつけた国王が送り込んだ、ケンの妹である聖 愛菜と瓜二つの王女、フィリア・ミラトニアと共にやって来た蓮達と共に倒した巨大な魔法兵器だ。


 そう、これは祭りに乗じて起こされた、魔族襲来を描いている。


 魔力溜まりによって発生するモンスターの大量出現現象、【モンスターバブル】や自前のモンスターを利用し、ミラトニアの重要な拠点の一つであるフェルナンキアを、戦力である冒険者ごと潰すべく起こされた事件。


 このあたりでケンは三帝と出会い、そして、初めて出会う自分と同じ存在——————特異点の一人であるあの男、自信を “エビルモナーク” と名乗る異世界人と邂逅する。

 エヴィリアルの異世界人は、皆魔族化した人間であった。


 そういえば、この時トモは珍しく自ら思念体を遣したのだった。


 位を奪われた魔界の主神、精神の神の“ヨル”。

 

 ケンはこの時、ゴーレムを操るのに用いているスキル、精神体憑依を、ヨルから貰っていた。


 その後ケン達は勝利するが、戦いが終わってもまだ、物語に関わる重要な出来事があった。



 それは、二人目の特異点、命の神の元に召喚された、天崎 命と出会ったのだ。








 では、その次の絵に映るのは学院だ。

 ここから徐々に戦争へ向かう動きが、僅かに表に現れて来ていた。


 魔族を捕縛、そしてケンを戻すために招集命令を下す国王を、三帝のもつ治外法権の力でどうにかケン達を学院に引き込んだことが始まりであった。


 いきなり挑んだ試験は、難なく合格。



 そこで、男嫌いのミレアと出会い、ウルクと再会する。

 最初はあまり歓迎されないケンであったが、徐々にクラスに溶け込んでゆく。

 しかし、やはり平和な学園生活というわけにもいかず、試練は早速訪れた。








 鱗の泉と呼ばれる森林地帯。

 竜が住み、盗賊たちが根城とするこの場所に、例年通り合宿に向かうケン達であったが、ここで初めて、ルナラージャが介入して来た。


 この合宿では、ルナラージャ特秘部隊・菅沼惑を始めとし、氷上 霧乃やルナラージャを裏切ったという謎の少年・乃坂 由知との戦い、初めは敵であった流のこちらへの加入。

 使い魔召喚など様々なことがあった。


 そして、物語を大きく動かす出来事が。

 もともとルナラージャ陣営がこちらに乗り込んでいた理由は、あるアイテムを入手するためであった。

 それが、先代命の神の遺体。


 チビ神との出会いは、その遺体に眠っていた思念が目覚めたことがきっかけであった。

 

 更に、レイがケン達の和に加わった事により、ケンは徐々に、人間界を揺るがす戦いに足を踏み入れていく。

 







 次は、元神であり妖精王でもあった男、クルーディオや、予言の石版、学院に突如入って来た春や魔獣演武祭の出来事の描かれた絵が並んでいたが、やはり注目すべきは、魔獣演武祭の最後。

 神威の異常摂取が原因で変容した転移者達を見下ろす染山 王条の絵であろう。



 初めは、競技の一つであるバトルロワイアルに参加していたリンフィアと、【世界樹】の固有スキルを持つ庭島 律人との戦いからであった。

 それまでは、表立って行動することのなかった敵側の転移者が、初めて公に姿を現した。

 会場に侵入した数名の転移者を、ケンが撃退した後、王条が現れ、他の転移者を変容させたのだ。

 その衝撃は、学院に大きな波乱を呼び、ルナラージャを敵と認定するきかっけとなった。


 そして、流れに乗じて現れた、命によって、先代の魂が封じられていた神器、【天の柩】が奪われてしまう。








 さぁ、いよいよ今度は国外へ。

 描かれた三枚の絵。


 ルナラージャの絵………と思いきや、まずはフィリアを連れて逃亡した蓮とラクレーの絵であった。

 これは、ルーテンブルクの第一王子と結婚させられそうになったフィリアを蓮が連れ出し、そのままルーテンブルとの抗争のために集合する目的地に連れて行った時の、逃亡の様子が描かれている。

 



 そして次こそが、ルナラージャ潜入時の絵だ。

 最初の町、ヤーフェル。

 ここでケン達は、この国の身分制度による惨状を目の当たりにした。


 そこでまず戦力削減や、本来の作戦のカムフラージュにするため、ここにいる奴隷達から解放して暴動を起こそうと、エルフの奴隷、セラフィナを中心に反乱軍を結成させる。

 さらにこの町では、三帝と同等とされている存在、四死王の一人であるクウコとであった。



 しかし、やはり最もケンたちに衝撃を残したのは、ウルクの騎士の一人である、レトの死であろう。







 さて次だ。

 今度は巨大な防壁に囲まれた都市、メルキア。

 ここでついに、天人計画の一端を知る事になる。

 そう、“赤い飴玉” だ。


 それに加え、流の正体もここで明らかとなる。

 正確には、かれのもう一人の人格、“ナガレ” が四死王であったという事だ。







 では、次。

 ルナラージャ潜入に関しては、ここが最後。

 描かれているのは、ウルクの裏切りだ。

 もっといえば、ウルクの精神を乗っ取った先代が、ルナラージャに帰属したタイミングである。

 そして、天人の存在や、ラクレーの過去を知ったのも、ここでだった。

 





 「うーん………こんなものかな」





 

 ここから先は、もう最近のこと。

 ミラトニア城に向かったケン一行が、勇者たちと共に修行をし、戦争が始まるという展開になっている。


 それで今に至るという事だ。





 「人間界の騒動も終わり、いよいよ今度は他国との戦いとなる………でも、それはまだ先になりそうだ」





 トモは知っている。

 ケンが先代から、魔族たちが動くのはまだ先の予定であるという情報を得ていた事を。


 故に、次の敵がいるとして、それは魔族ではない。






 「さて、今度は何が起こるんだろうね。ふふふ」






 トモは誰もいない場所で不敵に笑うと、浮かんでいた絵を全て消し去った。


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