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第806話


 大広間に行くと、そこにはいつものパーティメンバーとミレア、ルイ・レイ兄妹に加え、戦争に行っていた蓮、フィリア、春もいた。


 そしてもちろん、わざわざ出迎えに来たのだから、帰還したラクレーたちもそこにいた。




 だが、どう考えても晴れやかな様子ではない。

 何かを悔いているような、諦めているような、どんな表情をしていた。




 一体、何があったのだろうか。





 復讐………というべきか、大きな遺恨を晴らすべく、ルーテンブルクでラクレー達はたった数人で王都に乗り込み、戦った。


 本来なら先代に騙されていたダグラスに計画を潰されるはずだったが、こちらでそれを解決したので、何事もなく潜入には成功していた。



 だが、俺が聞いたのはそこまで。

 ここから先はまだ知らない。





 だから俺は、いきなりの訃報に唖然とする他なかった。




 「………………は?」










 この戦いで、三帝の一人であるギルファルド、それから、クウコが戦死した。











 衝撃というよりは、現実味のない話を頭が理解していないような感じだった。

 どこかのらりくらりとした、殺しても死ななそうだと思っていたのに、現実はそうではなかった。

 あの男もう、ここで息をしていないのだ。





 実は、春がしばらく落ち込んでいた理由はその二人の死………特に、クウコの死であった。

 そもそも、もともとクウコの所在が分からなくなっていた俺たちからすれば、落ち込む以前にいろいろなことが起きすぎていて整理がつかないのだが、それはとりあえず置いておこう。




 学園を後にした春は、巫女の力で直接トモから、予言の話を聞き、俺と違って情報を得る術のない蓮にそれを伝えようとルナラージャにいたらしい。

 そこで、ウルクに乗り移った先代によって殺されかけていたクウコを助け、次第に打ち解けていったとのこと。





 ——————しかし、ここで問題が生じる。




 先代と戦っているとき、人間界が統一された………つまり、ルーテンブルクも滅びとということと同義である情報を得ていた。

 という事は、春は情報の伝達に失敗したことになる。

 確かに、トモが以前言っていた。

 『ルール違反』 と。

 一人にしか伝えられないとも言っていた。

 それは、予言の滅亡に関する情報を、他者に伝えられないという事だ。


 それ故に、俺はラクレー達がルーテンブルクを滅亡させたのかと思っていた。




 だが、ラクレーはそれを否と言った。

 




 そう、原因はルーテンブルクの手によるものではない。

 別のものがそこにあった。


 そしてポツポツと、ラクレーは語り始めた。




 「あたしたちは………天人計画の首謀者である大臣たちをどうにか追い込んだ。何人かは暗殺も成功した………でも、大半は殺せなかった。途中で………………ッ………邪魔が入った………!! あの魔族がッ………………!! ギルを殺して復讐も邪魔したんだ!!」



 「なっ………………魔族!?」





 その瞬間に、一斉に当たりがざわついた。

 考えている事はみんな一緒だ。


 “そちらにも” と。


 ルナラージャのみならず、ルーテンブルクにも介入していたことに驚いたのだ。

 以前先代が、魔族の介入を口にした事は既にみんなに伝えている。

 精神系の、魔界の神の特性を使った技で俺を捕縛したのだから確実だ。


 だが、この中で最も動揺しているのは、やはりリンフィアとニールの二人だろう。

 特にリンフィアは、血の気が引いたように、さーっと青ざめていた。

 




 「そんな………………」


 「リンフィア様………」





 こちらも心配だ。

 ただでさえ、不穏な動きを見せている魔界に頭を抱えている。

 そこに加えてこのニュース。

 心中決して穏やかではないだろう。

 だが、次にファリスが言った一言も、決して看過できないものであった。





 「それに………………そもそもが無駄だったんだよ」


 「何………」


 「私達が殺した奴も、結局は傀儡だった。天人計画の背後にいた黒幕は、ルーテンブルクの者ではない………いや、正確に言えば、()()()した、ルーテンブルク人であった」


 「!!」




 魔族化。

 それは、他種族が魔族に転化する現象のこと。

 確か、以前、フェルナンキアを襲った魔族は、魔族化した転移者だった。

 恐らくは、それと同じなのだろう。




 「ラクレーの弟である第一王子のユースルを始めとした中枢の人間と、数名の転移者………あれは皆、魔族だった。それも、ずっと前からの話だ」





 ユースル………以前、フィリアとの婚約のためにミラトニアを訪れたルーテンブルクの王子。

 俺は会ったことがないが、直接目にした蓮やフィリアは相当驚いていた。





 「なぁ、ケン」


 「なんだ?」


 「ソメヤマ・オウジョウという男を覚えているか? 以前、魔獣演武祭に現れたルナラージャの転移者だ」



 ファリスの質問に、俺は頷いた。

 当然だ。

 奴は今回の戦争でも大きく関わっているのだから。




 「そうか………ならば、スガヌマ・マドイという男は知っているか?」



 「? ああ。知っている—————————っ!?」


 




 

 一瞬、大広間が闇に覆われたような錯覚が起きた。

 重苦しい空気と、身を押しつぶすような重圧。


 凄まじい怒気は、誰が見ようとどこから出ているのかはっきりとわかる程に凄まじいであった。




 ラクレーの殺気だ。






 「聞け、ケン。奴らは突然戦場に現れ………………っ………そして………………ギルを殺し、王子達と共にどこかに消えていったんだ」


 「は————————————はァ!? なんで奴らが………………いや、待て………………だからか?」




 


 もし奴らが魔族側だというのなら、少し繋がる部分がある。

 それは、戦場から消えた王条のことだ。

 ファルグを殺したあと、やつは戦場から消えている。

 まず戦った記録があるのは、そこでのレイ達の戦闘のみ。

 もしかすると、奴の目的は天人の肉体だったのかもしれない。

 確実に、何かを企んでいる。




 そして、ここが重要だ。

 国の洗脳役として存在していた菅沼。

 奴が魔族側となれば、それは大問題だ。


 先代は言っていたのだ。

 魔族達が、まんまと戦争を利用した、と。





 だとすればやはり、判断せざるを得ない。

 リンフィア達のこともあって、なるべく考えまいとしていたが、これだけ条件が揃えば、答えは自ずと出てくる。





 この場の誰もが理解していた。

 すぐではない。 

 だが、この先に戦いは起こる。


 敵は、魔界の大国——————エヴィリアル帝国。

 俺たちは、リンフィア達の故郷とことを構えることになるのだ。

補足


クウコというのは、ケン達がルナラージャに来て最初に訪れた街にいた、亜人の女性です。

正体は、流と同じく四死王。

530話でウルク(先代に操作されている)に殺されかけ、555話で春に助けられています。

ちなみに春というのは、ケンを含む勇者達の担任教師です。

ルール違反に関する事は、596話で、トモから言及がありました。


王条は、ルイの腕を奪い、ファルグを殺した少年です。

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