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第1058話



 準備は整った。

 付け焼き刃の人気を、ここから一気に削ぎ落としていく事にしよう。




 「どうした。幽霊でも見た………とは違うか。報告では、俺はG・Rに逃がされた事になってただろうからな」


 「っ………」




 あの報告は嘘だったのか、と。


 黒服からの報告について尋ねたいだろうが、流石にここでポロッと漏らすことはなかった。

 流石にガードは固い。




 「いいさ。とにかく、この通りピンピンしてるぜ。俺は」




 本当に苦労した。


 襲ってきた黒服を屈服させ、嘘の報告を入れさせたあとにようやく逃げ切ったのだ。

 奴らが後で嘘だったと言わなかったのは意外だったが、お陰監視の目は少なかったので好都合だった。


 領主もまさか、俺が里の外に出ていたとは思わなかっただろう。





 さて、まずは気になっているであろう、俺が疫病を治したと言う話について、説明してやるとしよう。



 俺はくるりと振り返り、取り囲んでいる民衆の方を向いた。

 顔が割れているだけあって、そこそこの反応はある。



 さぁ、こちらも演説を始めよう。





 「この兄弟の言う通り、俺は隔離施設にいる市民の治療に、()()成功した」


 「!!」





 幾重にも話し声が重なり、膨れ上がる。

 動揺や歓喜、疑念も見受けられる。


 ただ、皆一様にまだ信じ切れていない様子であった。



 だが、納得させる簡単な方法を、俺は知っている。





 「おっと、こいつが最近まで治療を受けていたのは、領主サマが証明してるだろ? さっき頭下げてたし」


 「!!」




 おお怖い。


 バレないように向けられた領主からの視線はまるで刃物のようであった。

 まぁ、苦し紛れで怒りに任せた殺気すら纏えない視線など、痛くも痒くもないのだが。





 「え………ってことは………本当、に………?」


 「疫病が………」





 と、喜んで歓声が上がる前に、一言釘を刺しておかねば。




 「だが、喜ぶのはまだ早ェ。聞いてくれるか?」




 ピタリと声が止まる。


 良い調子だ。

 自然と、流れを運ぶ役割が俺に移ってきた。

 さぁ、どんどん行こう。




 「結論から言うと、この兄弟は疫病患者じゃなかった」


 「ば………………………」




 ブツ、と何かを叫ぼうとした領主の声が途切れる。




 「順番守ろうか。心配しなくても口を封じたりはしねーよ」




 音魔法、発動。


 領主に有る事無い事叫ばれるのは構わないが、話の流れを切られるとまずいので、遮断させてもらった。


 さて、続けよう。




 「こいつらが治療を受けていた部屋には、同じような患者がゴロゴロいた。そいつらは多分すぐに治せる。薬の関係で全員の治療は出来てねーけど、それさえ済めば大人数あそこから解放できる。信じられないかもしれねーけどな」




 と、思った通り、やはり偽の患者がいるという情報を怪しむ者は少なくなかった。

 民衆からすれば理由がわからないし、そもそも()()()()()領主がそんなことをするはずがないと思ってしまっているからだ。



 しかし、実績を目の前で証明したおかげで、聞く耳はある。

 このまま全てぶちまけても良い。

 何故、領主がそんな真似をしたのか。



 民衆は、俺が持つ根拠が知りたいだろう。


 ………が、ここは一旦領主の話を聞く事にしよう。



 俺は魔法を解除し、領主の声を元に戻した。





 「弁解タイム。さぁどうぞ?」


 「………………何が目的だ? お前は一体何を企んでいる? 疫病患者に何をする気だ?」




 なるほど。

 そのポジションできたか。


 嵌められたという立ち位置にして、濁すだけ濁そうとするつもりだろう。

 ここさえ乗り切れば、まんまと姿を見せた俺をここに勢揃いしている駒使って除去すれば奴に関してはそれでミッション達成だ。



 一方俺は、ミッションのクリア条件が奴の好感度を下げると言うことのみなので手が出せない。

 加えて、そこで見ているG・Rの事もある。




 領主もあいつに気がついている。


 “帰巣” は、固有スキルとは違い、調べれば効果のわかるスキルだ。

 だから、さっき冒険者を連れて現れたことから、ここをマーキングしているとわかっているはず。


 つまり、ワープで逃げられない事がバレているのだ。





 これは、奴にとって千載一遇のチャンス。


 ここで何としても仕留めるつもりだ。

 最悪、難癖をつけて殺しても評価は恐らく下がり切る事はない。

 このままでは妄言を吐く馬鹿が処刑されたくらいにしか映らない恐れがある。

 何をされるかわかったものじゃない。



 だから、そうはさせない。




 「それは、どっちのセリフだろうな。自分を慕うものを騙し、都合の悪い者は脅し、目障りな奴は消そうとする。一体何人が犠牲になった?」




 この約半月、特にこの1週間、俺はこの日のために駆けずり回って手札をかき集めた。

 あのスーマン兄弟も、その手札の一つ。


 しかし、相手は権力者。

 数枚だけでは全く足りない。



 だから、俺はまだ手札を用意していた。





 「なぁ、()()()()はどう思う?」


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