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第1059話



 今俺が呼んだ集団は、あらゆる条件をクリアして、ようやく味方につける事ができた、俺の手札の一枚。



 苦労した。

 そして、苦労をかけた。


 ここにいる大半は、G・Rが聞き込みで見つけてくれた人材なのだ。




 「あっ………!!」




 G・Rが、ハッとした顔で、こちらをその集団を交互に見ている。

 どうやら、G・Rは気が付いたらしい。




 「ここに11人ほどいる。さて問題。この連中は一体なんでしょう?」




 ここにいるのは、スーマン兄弟同様に特にこれといって変わったところがない一般人。

 ただし、ここにいる全員、ある点に於いて兄の方と共通する点がある。



 民衆の方に視線をやると、()()()()()()()分見覚えがあるのか、何人か反応していた。


 だが、いまいちピンときていない者が多い。

 これでは、知り合いである事くらいが席の山だ。



 しかし、これだけの人だかり。

 探せば、目的の人物は確実にいる



 そして、やはりいた。


 右斜め前、特に大きい反応した者がいた。

 俺は、その男を名指ししてこう尋ねた。




 「そこのアンタ。何か気づいたな?」




 男はビクッと体を震わせ、少しおどおどしながらあたりを見渡すと、遠慮がちにこう言った。





 「えと………家族に、疫病患者がいる人………ですか?」


 「はい正解」





 そう。


 以前G・Rが交渉した、患者の親族だ。

 場所は覚えていたから、ここに来る前に全員集めてきたのだ。


 ただ、この連中がいるだけでは、俺の意図は伝わらないだろう。

 現に、だからどうしたと言わんばかり反応がちらほら聞こえる。



 しかし、すぐにわかる事になる。






 と、その前に………







 「あぁ、領主サマ。先に言っとくけど、患者はアンタの部下や召使いに守って貰ってるぞ。()()()()()()()()、アンタの部下や召使いがな」


 「………………!」





 表情には見せないが、これはかなり効いただろう。

 この発言の意味は2つ。



 まず、領主の身内である数人をこっちに抱き込んだということ。

 領主は、要らぬ反感を買わないよう、一部の部下を除き、ほとんど部下の前で良い領主を演じていた。


 禍根を残さないという点において、中々徹底している。




 だが、おかげで連中はただの善人だった。

 屋敷の外で、以前尋ねた時に見かけた数人待ち伏せ、事実を話し、自分で飲んで薬の安全性を証明した上で薬渡したら、あとは勝手に治して勝手に協力してくれた。


 お陰で、余計な連中にバレずに、スーマン弟をここまで連れてこられた。




 そしてもう一つは、患者を人質にした患者親族に対する脅しが通じなくなったということ。

 俺たちの手が回らないよう、領主は親族には脅しを掛けていたのだ。



 しかし、例のこっちに抱き込んだ部下が患者を守っているので、実質脅しは無効。

 なんとか説得してここまできて貰った。


 当然、集団にはイーボも混ざっている。

 するとさっそく、そのイーボが遠慮なしに言いたいことを吐き出し始めた。





 「………話は全部聞いた。アンタ、俺たちから金を巻き上げるために患者をかこったらしいな。それに患者の水増し………はッ、ロクでもないな。それがバレないよう、真実を知っているケンを殺そうとしたんだろう?」




 魂やら王の選別やらについては、ややこしくなるから伝えていない。

 俺たただ、治療費と偽って金を巻き上げ、邪魔をしようとする俺の味方にならないよう脅したということを伝えたのだ。




 「………俺たちは、アンタのために金を稼いでいたわけじゃないんだ!!………俺は………っ、コウヤにまで無理させていたというのに………ッッ!」





 珍しく、声を荒げて怒鳴り声をあげるイーボ。

 きっと、俺が思っているよりもずっと悔しいだろう。


 コウヤに負担をかけてまで治療費を出していたことを、イーボはずっと悩んでいたのだから。





 「………なぁ、これってまさか………」


 「!!」




 民衆から、ぽつりと声が漏れ始める。


 来た。

 僅かにだが、民意が揺らぎ始めている。


 流石に、この一瞬で崩れるという事はないが、確かにいま亀裂が入った。



 しかし、領主もそう簡単に倒れる男ではなかった。






 怒鳴り声を上げるイーボに、領主はゆっくりと近づいた。


 あからさまに警戒し、身構えるイーボ。

 すると、領主は適当な距離で止まり、イーボに一つ尋ねた。





 「………君は、確か妹が入院していたな。」


 「………よくご存じで————————————え?」





 領主は膝をついて首を垂れた。


 一瞬にして、当たりがざわめく。

 これは、日本で言う土下座のようなもの。



 日常でも、そうそうする事のない謝罪、まして領主が一平民にする謝罪ではなかった。





 責め立てていたイーボも、思わず言葉をなくしていた。






 「なッ………ァ、何を」


 「申し訳ない。私が不甲斐ないばかりに、そこまで不信感を与えさせてしまうとは………本当に、申し訳ない………しかし、どうか信じて欲しい。君の家族は、我々が是が非にも治してみせる。それまでいくらでも責め立ててくれていい。何も言い訳はしないし、私は甘んじて受けよう。ただ、この悲劇を終わらせる機会と、全てが終わった時に、真実を語る機会を与えて欲しい。頼む………私に、民を救わせてくれ」





 即興とは思えない見事な謝罪と立ち回り。


 傾いていた民の心を、グッと押し戻したのがわかる。

 親族たちの勢いはものも一瞬で無くなってしまった。




 しかし、これで良い。





 「良いじゃねーか。機会を与えてやろうぜ」


 「!? おい、ケン——————」




 ポン、と俺はイーボの肩に手を置いた。



 問題ない。

 イーボは知らないかもしれないが、心配なんかしなくとも、俺がこうなるのを読んでいないわけがなかった。




 「じゃあ、全部終わらせようか」


 「………一体何を——————」





 音魔法で領主の声をシャットアウト。

 そして、俺はここで、1番の目玉をぶち撒けた。




 「俺は、疫病の方に関しても治療法がわかっている。そんで、近いうちに治療も可能だ」


 「「「!!」」」


 「10日もあれば、その用意が出来る。そして、10日かけて領主の身の潔白をみんなで確かめないか?」






 やれれた——————という風な、領主の顔。


 今までは、俺はせいぜいただのホラ吹きとか、そんな評価だろう。

 しかしたった今、これを見ている民衆にとって俺は、試す価値のある情報を持った、重要な人物になった。




 これで領主は、俺を殺せない。


 何せ、実際スーマン弟を治した実績があるのだ。

 俺を殺せば、目下のところ最後の希望が潰える事になる。




 そして何より、領主はこれから10日、身の潔白を証明しなければならなくなった。


 偽患者を産んだ毒を見せたり、怪しげな黒服や親族の証言を細かく民衆に見せれば、間違いなく領主は不利になる。





 万一怪しい動きを見せようものなら、不信感は募りに募って、好感度は著しく低下する。





 そして、最後のダメ押し。


 民衆が領主を信奉した原因は、モンスターの侵攻を食い止めたことによって、頼れるのが領主だけと思い込んでしまった事だ。





 だから、その柱を崩す。


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