第1032話
「なんだ………何が起こった………!?」
突然の爆発に唖然とする。
現状把握しようにも、それはあまりにも唐突過ぎた。
地面からもうもうと煙が立ち込め、火は広範囲に燃え移っている。
特に、建物——————木の被害は甚大で、凄まじい速度で延焼していった。
自然を利用したこの里の構造が仇となってしまっている。
このままでは、一瞬で火の海になってしまう事だろう。
そう思っていると、
「「「!!」」」
燃えている範囲を囲むように、ドーム状の結界が出現した。
うっすら水属性を感じる。
恐らく、延焼防止用の魔法結界だ。
しかし、燃え移った範囲はあまりにも広く、全てを水浸しにするわけにもいかないのか、結界以外に動くは特になかった。
どうやら中の建物は捨てるつもりらしい。
だが、それよりも今は現状把握が必要だ。
誰かいないかとあたりを見回す。
すると、煙の奥から、衛兵がらしき男が1人現れた。
「!」
俺はそれを見るなりすぐに詰め寄り、男に迫った。
慌てた顔で何かを探している。
しかし、俺はそんな事お構いなしに男に現状について尋ねた。
「おい、アンタ! 何が起こった!?」
「え………ぁ、君らはカイトの………頼む!! 探してくれ!! これをやった犯人が近くに隠れているんだ!!」
「!!」
とりあえず、犯人が近くにいることがわかった。
周囲に視線を向ける。
爆発の発生源。
音が聞こえた位置を思い出すと、大体ここから南西に向かって100mほど奥。
犯人がいるとして、恐らく結界を警戒しているはず。
範囲はドーム内及び発生源周辺。
だったら、知る力で——————
「————————————」
見た瞬間に思ったのは、何故ここにいる、という事。
地下にいるはずのあいつが。
何故、出てきている——————G・R
「っ………」
奴の実力はわからないが、放っては置けない。
助けなければ。
「………衛兵! そいつ、なにか注意しとく事あるか?」
「ぁ……たっ、確か奴はワープするスキルを持ってる。見かけたら一撃で仕留めてくれ!」
“帰巣” のスキルはバレているという事だ。
この様子ではずっと前から目をつけられていたのだろう。
「………………エル。コウヤに着いてろ。通信頼むぜ」
「はいなのです!」
影から出てきたエルは、コウヤの頭に乗っかった。
これで通信とついでに事情の説明ができる。
後はこの衛兵だが、大きな怪我もないので放っておいても問題ないだろう。
準備は完了。
決行だ。
「よし。お前ら俺が向かうところに外から回り込め。挟み撃ちにするぞ」
声をかけると、ミレア達は一斉に散っていった。
俺はすぐさま煙の方に目を向け、同じく走った。
煙の奥からいくつか反応がある。
恐らくは衛兵。
だが、この視界の悪さなら、魔力を抑えていれば多少は誤魔化せる。
「っ………熱……いな」
いざ煙に突っ込むと、酷い臭いに包まれた。
視界も相当悪い。
屋外でもこれという事は、炎からの煙以外にも煙幕が混ざっている。
だが、問題ない。
視界に形として映らずとも、その存在の影を、“知る力” は捉えている。
故に、
「! 見つけた!!」
「!?」
衛兵達が手こずっている相手を、一瞬で見つけられた。
「おい無事か、G・R?」
「あなた………………なんでここに?」
咄嗟に向けた槍を下ろすG・R。
見た感じ怪我はなさそうだ。
しかし、相当疲れている。
このままでは長く保たなかっただろう。
「細かいことは気にすんな。それよりお前、スキルで地下に戻れねーのか?」
「できるけどダメ………です。地下は敵にバレてそれどころじゃない………です。今は地下のものを運び出したみんなを逃すために囮をして………ます」
「囮?………………仲間がいンのか?」
ゆっくりとG・Rは頷いた。
だが、何処か迷いのあるような顔をしている。
「………何かあんだろ。言ってみろ」
「!………………子供が1人、残されて………ます。しかし、戻ろうしたところで敵に………」
なるほど。
そりゃあ、囮もしつつ戻ろうとしていたらリスクも伴うだろう。
子供ということは、自力での脱出は恐らく相当難しい。
………誰かが行かなくては救えない。
そして、後一回分ワープは残っている。
「………帰巣のスキルって、人を巻き込めるか?」
「? ………巻き込め………ます、けど………」
神の知恵を一瞬発動。
魔法で金髪を黒髪に染め直し、ポーチに入っている布を生活魔法でマスクに変えた。
装備も上を剥いでマントのみに変更。
これで元の面影はないだろう。
「さて、行くか」
「行くって………………」
「助けに行くんだろ? 手伝ってやる。そのかわり、貸し一つな」
「!!………………っ………」
ニッと笑顔を見せると、G・Rは泣きそうな顔で礼の言葉を呟いた。
悪人かどうか見極める必要があったが、これなら問題ないだろう。
本当に悪い奴は、こんな顔は見せない。
例え悪巧みをしてようと、ガキは絶対助ける。
俺の信条にかけて。




