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44 迷う人

非常に短いです。申し訳ありません。

 急がば回れと言うことわざがある。

 大体急いでいるときこそ慎重に行動しようという感じの言葉だ。

 ロリンの頭の中で今、そのことわざが何度も繰り返し響いていた。

 獣人の国を出たロリンは、日の昇る方向を確認し、その反対側に向かって全力で駆け出した。

 風のようという形容詞すら生ぬるく、衝撃波が発生するかどうかギリギリのところを行くほどの速さであった。

 ロリンは焦っていた。

 オークたちの後片付けの最中にふと思い出した大星たちへの心配が、刻一刻と増していっていたのだ。

 もしかすれば大星のことだから自力で西にあるという人間の国に着いているかも、とも考えたが、獣人たちの昔の話を聞くに人間の国が大丈夫な所かどうかも怪しいので、とにかく西へと向かった。

 胸を埋め尽くす不安と焦りは、ロリンの速さを更に増させ、どんどん森を進ませた。

 しかし、素人が簡単に目的の場所につけるほど森というのは甘くないのだ。

 空が赤く染まるまで一休みもせずに走り続けたロリンは、違和感に気づいた。

 自分は西に向かっていたはずである。

 だが、ロリンの進む方向に夕日はなく、ロリンの背後で爛々と輝いていた。

 そう、森の中をまっすぐ進んでいるつもりでも、いつの間にか曲がっていると言うのはよくあることなのである。

 森には木などの障害物があり、まっすぐには進めない。

 それをよけて進んでいくうちに、いつの間にかずれが積み重なり進行方向が変わってしまったりするのだ。

 ロリンは焦るばかり、夜明けに一度太陽の位置で方向を確認したきり、その後は再確認することもせずにただ走り続けていたのだ。

 結果、ロリンはいつの間にか真逆に進路をとっていたのだ。

 そして冒頭に至る。

 ロリンの恵まれたすばやさは、今回はマイナス方向に働いてしまった。

 更に焦って木を登り現在位置を把握しようとしたロリンは、不味いことに気がついた。

 王樹が、見えなかったのだ。

 雲に届かんばかりの王樹が見えないということは、そういうことである。

 ロリンは速すぎた。

「やべぇ…」

 ロリンは、一週回って冷静になった。

 最早問題は大星たちを助けるどうこうではなかった。

 完全に迷子、自分が助けを求める側になってしまったのだ。

 そもそも落ち着いて考えてみれば、西に行ったところで自分はどうやって大星たちを探すつもりだったのか。

 探知系スキルの及ぶ範囲を利用してしらみつぶしに人型生物を探るつもりだったのだろうか。

「ふぅ…」

 ロリンは一度深呼吸し、今自分に何が出来るのかを考えた。

「とりあえず、なんか使えるスキルでもないか確認するか」

 そういうことになった。


【屠殺LV8】

 オークに対する攻撃の威力アップ(小)

【迷子LV2】

 何の道具も使用せずに行動した場合、目的地にたどり着ける可能性が下がる。

 無効化不可。


 スキルが二つ増えていた。

 そして使えるスキルはなかった。

 むしろ酷いスキルが増えていた。

 常時発動型のスキルには、有効無効を選択できるものと、出来ないものが存在する。

 たとえば無痕跡などのスキルは自分の意思で発動するかどうかを選べるが、吸血の魔眼を使用したときに発動してしまう日光弱体化や聖抵抗低下などは任意でオンオフできない。

 迷子は後者のスキルであった。

 そして、何のメリットもなかった。

 全スキルを確認し終えたロリンは、地面に倒れた。

「明日から、こまめに確認しながら西に行こうそうしよう。明日から、明日から…」

 そういうことになった。

一日一話以上。明日は二回更新しようかと思います。

誤字、脱字、言葉の誤用、矛盾点などを教えていただけると助かります。

感想評価ブックマークをいただけると一日笑顔で過ごせます。


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