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ウォッチ! ウォッチャー! ウォッチェスト!  作者: saco
第三章:パンツ・ミッション
20/29

入部


「……よっと」

「あーつかれた」

 四月十九日、無事我が家へ帰宅した俺とミアは早速時間を元に戻した。現在俺は裏帰宅部のソファーに座っている。……目に見えておかしな改変は無かったようだ。

 自分の携帯を確認してみる。

 四月二十日。うん、よかったよかった。

「行ってきたか?」

 大月美小夜は怪訝気味に尋ねてきた。

「ああ、昨日に行ってきた」

「美小夜のパンツは目に焼き付けてあるぞ! 大哉の!」

「俺のかよ! お前見せてくれなかったじゃねえか!」

「そうか。私からすれば今のは一秒も経ってなかったんだがな」

 喧嘩する俺たちを大月は微笑ましそうに眺める。

「で、市川君。どうだった、私のパンツは」

「いや、だから俺は見てないって!」

「ふふふ……ではこの不甲斐ない後輩に代わって先輩の私が教えてしんぜよう」

「わーミアせんぱーい」

 大月はぱちぱちと拍手をする。それに応えるミア。茶番だ。

「それは……しましまパンツじゃ!」

 どこからか壮大なSEが聞こえてきそうなほどミアは自身ありげに言ってみせた。

 大月はにこやかな表情のまま何も喋らない。俺は大月の言葉を待つ。

 そして口を開いた。

「残念。はずれ」

「「……へ?」」

 二人同時に間抜けな声をあげてしまった。

「う……嘘じゃ! そんなはずは……だってちゃんと水色のしましまで……」

「しましまは昨日履いていたやつだ」

「あ……」

「な、なんじゃ」

「俺たちはホームラン級の馬鹿だった……」

「……と、言うと……?」

「普通に考えてみろ。昨晩お前が見たパンツは大月が言った通り、昨日履いていたものだったんだよ」

「何を言って――」

 言いながらミアは「あ――」と気づいたらしい。

「そう、あれはあくまで夕飯を食べるためにとりあえず部屋着に着替えただけなんだ。俺たちが見なければならなかったのは、夕飯を終えた大月が風呂に入って、風呂から出た時に履くパンツだったんだ」

「くううう……」

 呻き声をあげながらうずくまるミア。まさにホームラン級の馬鹿だったというわけである。普通どっちか気づくだろ。

 そんなうずくまっているミアに歩み寄る大月。ミアの肩に手を置いて一言。

「泣かないでミア先輩。今のパンツは不正解だったが、昨日のしましまは大正解だったんだから――」

「え……」

「信じますよ。時空探検」

 ミアからすれば、その時の大月からは後光が差していたに違いない。

「ほ、ほんとに?」

「はい。本当です」

 ミアは一瞬顔をくしゃりと歪めたが、すぐさま気丈に振舞っていた。

 そんなミアに苦笑しながら大月に尋ねてみる。

「で、実際のところ正解は何だったんだ?」

「……ふふっ、確かめてみるか?」

 そう言うと大月は誘うようにスカートをたくし上げ始めた。白い素肌がもう夕方だというのに眩しい。

「え、えええ遠慮しときます遠慮しときます!」

「あはははははは! 市川君はいじり甲斐がある!」

 大月はこれまでで一番の笑みを見せた。してやられた。

俺はふてくされるようにしてソファーに座る。

「うむうむ! とりあえず一件落着じゃな!」

「だな。外ももう暗くなってきたし、今日はこれくらいにしておこうか」

「よし、では帰るぞ大哉」

「え? あ、ああ」

 ミアと大月は既にカバンを手に取り帰る体制に入っていた。それを見て俺も急いで立ち上がる。

 ……しかし何か忘れている気がする。廊下を談笑しながら歩くミアと大月の後ろ姿を眺めながらそんなことを考える。心の隅に残るモヤモヤ。大月にいじられたことに対する悔しさとは違う何か……。

「……今日『は』?」

 ぼそっと呟いてみた。そうだ。今日はこれくらいにしておこうとはどういうことなのか。

「ちょ、ちょっと待て。明日もやるのか? この部活」

 俺の問いかけに何を言うのかと言った表情の二人。

「当り前じゃろう。裏帰宅部員となった今、明日部活をするのは当然のことじゃ」

「いつ部員になったんだよ! 俺はまだいいとは――」

「固いことを言うな大哉。結構楽しんでたじゃないか」

「うっ……」

 それを言われると困る。実際、存外楽しかったというのは確かだ。

「じゃろう?」

 にんまりとミアが俺を見上げてくる。

「と、言うわけじゃ。美小夜、明日もよろしく頼むぞ」

「はい、放課後の部室でお待ちしてます」

 いつの間にか仲良くなっている二人に辟易としながらも俺は頷くしかなかった。


 ――これが俺たちと大月美小夜の出会いである。

 ひょんなことで謎の部活、裏帰宅部に入ることになってしまったが、部活なんて何でもいいと思っていたからこの際どうにでもなれといった感じだ。

 ただ、ただ。

 成り行きで入部することになってしまったが、俺は未だに彼女――大月美小夜の気味の悪い笑顔に慣れることが出来ないでいた。そんな状況で俺はこの先部活をやっていくことが出来るのだろうか。

 ――そんな杞憂はやがて現実となる。どこかの本に書いてあった。嫌な予感は、どんなにそれと無関係なものであっても、嫌な現実を引き寄せてしまうものだと。


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