幕間
「ったくもう……大哉ったらなぁにがまたあの子のお弁当作って来て、よ! 誰のために作ったと思って……昨日のメールも返してくれないし、心配してるなら返信してくれたっていいのに!」
放課後。大哉から全速力で逃走した鳴沢文子は一人帰り道を歩いていた。いつもは三人で帰っていたはずの通学路。大哉はあんな感じで置いてきてしまったけれど、陽介はどうだったのだろうか。生徒会がどうのこうの言っているのが聞こえていたし、きっと一緒に帰れなかったのだろうなとオレンジ色に輝く夕日を仰ぐ。
一人夕日に佇む女子高生なんて、なんだか悲壮感が漂うなと自嘲してみた。でもこれも新鮮じゃないかと歩を進める。
いつもは帰ってきてから行くはずの本屋さんに行ってみよう。一人だとこういう自由が利くからたまにはいいかもしれない。
文子は鼻歌交じりに本屋へ入る。毎回何をするわけでもないのに店に入り、適当に立ち読みしてみたり、集めているマンガの新作が出ていないかとかチェックしてみたり気ままに店内をうろつく。
そうしてある程度満足すると店を出る。もちろん何も買っていない。
今日はあの二人もいないのでわざわざ男子の歩幅に合わせて歩く必要もない。のんびり行くとしよう。
町の中心の喧騒から離れた住宅街まで歩いて来た。自宅まではあと数分。普段歩いている通学路ってこんなに長かったっけ、と今まで自分がいかに速いスピードで歩いていたかを実感する。
昔よく遊んでいた公園を通り過ぎて、十字路の手前で車の往来を確認している時だった。
「今、帰り?」
慌てて声のした後ろを振り返る。公園入口、車両の侵入を禁止する車止めに、腰を下ろしている人がいた。
周りに誰もいない辺り、どうやら自分に話しかけているらしい。
「私? ……って、なぁんだ――」
あ、携帯が鳴ってる。この音楽はメルマガか。
確認しようとカバンの中ををまさぐる。その瞬間――。
何かが自分の体にぶつかってきた。これはなんだ。
文子は今、自分の置かれている状況を把握出来なかった。
――世界が暗転する。




