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月影夜半  作者: 夜半堂
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プロローグ

 陽が落ちると、都は静かになる。


 人々は戸を閉ざし、灯を落とし、誰もが夜を恐れた。


 けれど。


 本当に恐ろしいのは、“静けさ”ではない。


 夜半を過ぎた頃より、都は騒がしくなる。


 誰もいない路地で笑う声。


 橋の下を流れる泣き声。


 閉ざしたはずの障子を叩く音。


 そして時折、“人ではないもの”を見たという噂。


 それらを、朝になって語る者はいない。


 語った者から、消えていくからだ。


 だから人々は、夜を見ない。


 耳を塞ぎ、息を潜め、ただ朝を待つ。


 ――ただひとりを除いて。


 月だけが照らす朱雀大路を、黒衣の少年が歩いていた。


 鞘に触れる白い指先。


 揺れる黒髪。


 その瞳は、まるで夜そのものだった。


「……今夜も、泣いているな」


 少年――月影 夜半は、静かに空を見上げた。


 都の夜は、今日も騒がしい。

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