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第十六話 鈴蘭の花束

本日も読んでいただきありがとうございます。


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春の朝。


ヴェルディエ公爵邸の庭には、柔らかな風が吹いていた。


 


ミレイユは驚いていた。


 


腕の中には、小さな白い花束。


 


鈴蘭。


 


春の花の中で、一番好きな花だった。


 


「第四王子殿下からでございます」


 


侍女が微笑んでいる。


 


ミレイユは花を見つめた。


 


(調べてくださったのね)


 


ルシアンはあまり言葉数の多い人ではない。


 


でも。


 


こうして花を贈るということは。


 


自分のことを知ろうとしてくれている。


 


その気持ちが嬉しかった。


 


ミレイユは小さく笑う。


 


「ありがとう、とお伝えして」


 


 


その日の午後。


 


父から呼び出しがあった。


 


「ミレイユ


 


 フロレンス」


 


二人とも来なさい。


 


書斎に入ると、公爵は椅子に座っていた。


 


いつも冷静な父が、少し複雑そうな顔をしている。


 


ミレイユは察した。


 


これは政治の話だ。


 


父は静かに言った。


 


「王命が来た」


 


二人は背筋を伸ばす。


 


「聖女殿の


 


 友人候補になった」


 


フロレンスが目を丸くした。


 


ミレイユは少しだけ息を止める。


 


父は続けた。


 


「ミレイユ


 


 お前は立場が複雑だ」


 


王太子の元婚約者。


 


そして今は第四王子の婚約者。


 


聖女は王太子妃になる。


 


父は言った。


 


「だが


 


 淑女教育は完璧だ


 


 社交界でも信頼がある」


 


そして妹を見る。


 


「フロレンス


 


 お前はまだ未熟な部分もある」


 


フロレンスは苦笑した。


 


「ですが」


 


父は続ける。


 


「年齢が聖女殿に近い


 


 一つ下だ


 


 話しやすいかもしれない」


 


少し沈黙があった。


 


父は最後に言う。


 


「王命だ


 


 断れない」


 


ミレイユは静かに頷いた。


 


「承知しました」


 


 


数日後。


 


ミレイユとフロレンスは王城を訪れた。


 


聖女の部屋。


 


美咲は少し緊張した顔で二人を迎えた。


 


フロレンスは遠慮なく言った。


 


「城って窮屈じゃないですか?」


 


美咲は驚いた顔をする。


 


フロレンスは続けた。


 


「城の人たちに言えないこととか


 


 ありませんか?


 


 大丈夫ですか?」


 


その言葉に。


 


美咲の表情が崩れた。


 


そして。


 


ぽろりと涙が落ちた。


 


「……帰りたい」


 


小さな声だった。


 


「家族のところに」


 


フロレンスは慌てた。


 


「ごめんなさい」


 


そして。


 


自分も泣いてしまった。


 


二人で泣く。


 


しばらくして。


 


涙が落ち着いた頃。


 


美咲は少し笑った。


 


「どうしようもないことだから


 


 今できる最善のことをするって決めたの」


 


窓の外を見る。


 


「唄を歌うのは好きだしね」


 


フロレンスは涙を拭いた。


 


「……強いですね」


 


美咲は首を振る。


 


「強くないよ


 


 普通の人」


 


その瞬間。


 


二人は笑った。


 


何かが通じた。


 


 


ミレイユは少し離れた場所で、その様子を見ていた。


 


(よかった)


 


二人はすぐに打ち解けた。


 


そして。


 


その予感は、きっと当たる。


 


親友になる。


 


そんな気がした。


 


やがて話題は自然に変わる。


 


王太子と聖女の話。


 


フロレンスが楽しそうに聞く。


 


「王太子殿下ってどんな人ですか?」


 


美咲は少し照れた。


 


それだけで、フロレンスには分かった。


 


(ああ)


 


恋をしている。


 


 


王太子の噂はよく聞く。


 


誠実で。


 


責任感が強い。


 


そして。


 


少し不器用。


 


フロレンスは思った。


 


(きっと)


 


二人が心から結ばれる日も。


 


そう遠くない。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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