「延焼」
「……アヤメ、異端ってどういうこと?」
「さあ。顔立ちを見る限り、あの男は異邦人でしょうから、それでそう呼ばれているのでは」
「………………」
ココウェルが、ビージの手から解放された圭を見る。
パールゥに抱き起される金髪の青年の目は、ココウェルには前髪で隠れて窺い知れないが――――彼が今どんな顔をしているかなど、力無く垂らされた四肢を見るだけで、その心は容易に知れた。
「大丈夫? ケイ君。ケガはどこ?」
「……大丈夫だ。何ともない」
「ないわけ無いよっ、あれだけ風紀の人達に」
「悪いパールゥ。今は一人にしてくれ」
「ケイ君……!」
「ケイの言う通りだよ」
その声に、パールゥは瞬時に言葉を切り、口を固く引き結んで振り返る。
向けられた鋭い眼光に、マリスタは開きかけた口を一瞬閉じかけた。
「今は、私もパールゥも……ケイから離れた方がいいと思う。聞いたでしょ、今の。みんなピリピリしてるんだよ、私達が――」
「飽きたの? 大貴族サマは」
「――え」
「……あなたは彼を守らなかった」
「な、なんの話――」
「マリスタ・アルテアスは、ケイくんを守らなかったッッ!!」
『!!?』
パールゥの怒声に、その場の全員がぎょっとする。
舞台でさえ聞こえなかったほどの大声に、マリスタは誰の目にも明らかなほどに顔を狼狽させ、後退った。
反論を許さぬ憤怒の空気を纏い、パールゥは鼻先が触れそうな距離まで、マリスタに近づき、そして、
「――――二度とケイに近寄らないで? この売女」
「――――――――」
――――驚愕と戸惑いと、少しの怒りとがマリスタの見開かれた目に宿ったときには。
パールゥは彼女から視線を外し、再びよろよろと歩き出していた圭に近寄ろうとしていた。
それを今度は、ヴィエルナが制止する。
「……邪魔なんだけど」
「頭、冷やして。今マリスタが言ったこと、忘れたの? あなた達、今。彼に近寄るべきじゃない」
「邪魔なんだけどッ!!?」
「それ以上、騒いだら。連れていくよ?」
パールゥの眼差しを真正面から受け止め、能面のような無表情で返すヴィエルナ。
パールゥが鼻で笑った。
「公私混同? 騒がずにさえいれば、風紀のキースさんが私を止めることなんて出来ないはずだよね。一体誰の為なのそれ。ねえ。どうせあなたもマリスタと一緒で――――」
がば、と。
肩を背後から掴まれ、パールゥが無理やり振り返らせられる。
「…………何? ハイエイト君。痛いんだけど。暴力?」




