「かくして市井の声は」
「っ……セイントーン君、どいて?」
「どけないよ。もう嫌なんだ。実技試験で、その上学祭でまでこんな『異端』に振り回されて。君だって、皆だって彼に言いたいことはあるんじゃないのかな!?」
「でもそれはお客さんの前で言うことじゃないっ!!」
パールゥがやっと言葉にする。
ビージとテインツが鼻で笑った。
「どのツラ下げてンな物言いができんだよあんたもよ!……客の前でこそだろうが。そのくらいしねぇとコイツにゃ堪えねぇし、俺達の気も済まねぇ――――散々『我々』を引っかき回しやがって『異端』がよ!!」
圭を掴んでいた手を水気を切るように放すビージ。
圭は突き飛ばされたように吹き飛び――――受付用の長机をなぎ倒しながら床に崩れ落ちた。
「やめてっ!!」
「バディルオン君ッ!!」
「何やってんのアンタたちッ!!」
パールゥ、システィーナが同時に叫び、マリスタもたまらず客の群れをかきわけ姿を現す。
テインツとチェニクはビージを守るように立ち、ビージは倒れる圭の髪を掴み上げた。
圭は息を荒げて苦しそうにするばかりで、言葉一つ発さない。
「おいおい。もう一人のガールフレンドが助けに来たぞコラ。一言でも言葉かけてやれよ、いつも陰でやってんだろが、あ? タラシ野郎が。テメーがアルテアスやフォンを誑かしてるせいで、練習の時のこいつら雰囲気最悪だったんだぞ? 解ってなかったのか、分かってて放置してたのか知らねぇけどよ」
「むしろ、アルテアスさんとフォンさんがいがみ合うのをみて楽しんでたのかもね」
「言えてるな。『異端』のやりそうなことだ」
「根も葉もないこと言わないでッ!! マリスタもなんか言ってよッ! ケイ君が心配じゃないのっ!?」
「…………変な雰囲気だったのはごめん。でも、ケイがそれを楽しんでたってことは無いから。もう、その辺にしようよ」
「マリスタ……!?」
「……?」
血の気の無い対応に驚くパールゥ、訝しげなシスティーナ。
「けっ」と言い捨てたビージの背後の群衆から、ロハザーとヴィエルナが顔を出した。
「マリスタ。冷静に言ってくれて、ありがとう」
「あ、いや……うん。こっちこそごめんね」
「いい」
「またお前かよビージ、いい加減にしろ。何ヶ月か前に散々キレんなって忠告しただろうが。指導室に来い、しばらく頭を冷やしてもらう。…………ま、相手が相手だから気持ちは解らんでもないけどな」
「ハイエイト君ッ!!」
圭に、そして叫んだパールゥに冷たい目を向けるロハザー。
ヴィエルナによって散らされる客と野次馬。
「……なんか冷めちゃったね」「あんだけ仲良さそうに楽しそうにしてたのに、実際の人間関係があんなことになってるなんてねー」「マジでウザかったんだろうな。うちの委員会のバカップルも、活動中でも二人で見つめ合ったりしてやがるし。病気だぜアレ」「しかも男取り合ってる二人が劇でも男取り合ってるってwヤバくね?」「そりゃ風紀の連中もキレるよな……」「実技試験でも、委員長をアマセに追い出されたようなものだもんね。なんか不憫だわ」「ああ……風紀とアマセって、前から小競り合いばっかしてるもんね」「まだ続いてるのぉ?……なんで一緒に劇なんかやろうと思ったんだろうね、あのクラス」
――彼らの声が、ココウェルとアヤメの耳にしかとこびりつく。




