「シータとテインツ①」
「……うん。無事だわよ。治療房で精密検査を受けているだけ。誰も死んでないから安心して」
「……なのに治療房に?」
「ねえ、オーダーガード。あなた、アマセ君とティアルバー君の戦いの決着、憶えてる?」
「え?」
唐突に投げられた質問は、彼の意識を急速に過去へと飛ばす。
(――憶えてるも何も、忘れるワケないじゃないか。僕はプライドも何も捨てて、アマセにティアルバーさんを倒してくれるように願って、それで――――――)
――――それで、決着は、どう着いたのだったか。
「やっぱり憶えてない?」
「…………どうしてだ? どうして決着の部分だけ、こうもスッポリと抜け落ちて……!?」
「みんなそうなのよ」
「え?」
「みんな。あんたより先に起きた人達も一人残らず、決着の部分だけ憶えてなかった。『痛みの呪い』の部分だけ」
「い……『痛みの呪い』?」
自分と同じ症状を抱えているテインツにシータは、これまでの話を語り聞かせた。
いや、自分に再度語りかけた、と言った方が正しいかもしれない。
国が敵である可能性。プレジアに不穏分子が居る可能性。
先の議論の中で話された何もかもが、シータにとっては現実味の無い、遠く離れた世界の話だったから。
テインツにとっても、それは同じで。
「…………犯人は、国かプレジアの人間…………?」
呆然とつぶやくテインツ。
シータは寝返りを打ち、抜け殻のようになっている彼を盗み見て――どこか、苛立ちを覚える自分を感じた。
「そこまでショックを受けることかしら? 自分に近しい人が犯人だと決まったワケでもないのに」
「……そりゃショック受けるだろ。まさか、国内にそんな不穏分子が居るなんて。下手したら国の一大事かもしれないじゃないか」
「……スケールの大きいことを考えてるのだわね」
「十分大ごとだろ、これは。君だって襲われてる」
「なっ……なんでそこで私の名前が出るのよ!?」
「えっ、あ――な、何を考えてるんだ! 同じ大魔法祭の出し物を作ってる仲間だって言いたかっただけだ! 断じて他意はない! 変な誤解をするなっ!」
「わかっってるのだわよそんなこと!! ちょ、ちょっと聞いただけだわよ!」
「ちょっと聞くなよそんな分かり切ってることっ……大嫌いとまで言われた相手にそんな、他意を持つはずがないだろ」
「っ……」
顔の熱が、よくわからないカタマリになってシータの胃を圧し潰す。




