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あうん  作者: あおあん


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9/16

9,★海はやばいって

亜子のやつ……なんつー水着を着てんだよ……


咄嗟に右手で両目を覆った。


「真壁さん、どうしたんすか?」


「いや。なんでも」


あいつは自覚がないだろうけど、亜子は良い身体をしている。


ボリュームがあるバストにヒップ、肩幅があって綺麗な鎖骨が浮いているし、腰がくびれて全体的にバランスがいい。


「くっそ……」


見せびらかしてるつもりじゃないだろうから逆にたちが悪い。


自然と恥じらう姿が、意図せず男を煽っていることに気付いてない。


余計なお世話とは知りつつも言わずにはいられない。


「亜子、これ着とけ」


俺のラッシュガードを渡す。


「……え」


嫌そうな顔をしながらも受け取ってくれてよかった。


「結構波が強そうだから、沖には行かないのはもちろんだけど、波打ち際も気を付けて、足すくわれると危険だから」


的確な指示を田浦が発している。


今日は仕事じゃ無いとは言え、俺たちは周囲に無関心じゃいられない。


そういう職種で、人種だ。


「真壁さん、これ膨らますの手伝ってくれません?」


ばかでっかい浮き輪にへにゃへにゃのポンプで空気を入れようとしている。


「踏めばいいのか?」


足元でしゃがむ女の子の無防備さに、頭がくらくらする。


誘ってんのか……?


まさかな……


俺のラッシュガードを着た亜子を眺めながら、足を上下させる。


「まーちゃん、これちっとも空気入らないよー?」


女の子たちがわーきゃーしている。


「貸してみ」


ポンプに差すホースのIN・OUTが逆だ。


差し替えてもう一度足元に置く。


今度は俺の一踏み一踏みで、浮き輪が大きくなっていく。


「わーい!すごーい、すごーい」


俺は亜子と田浦が何を話しているのか気になって仕方がなかった。


亜子がわたわたと手をばたつかせた。


あれは、困ったときの仕草だ。


早く行ってやらないと。


亜子がテンパってる。




ようやく浮き輪がパンパンに膨らみ、俺は亜子の元に急いだ。


駆け寄っては不自然だ。


田浦を疑っているわけじゃないしな。


「亜子、何かあったか?」


既に日に焼けたのだろうか、赤い顔をして……泣きそうか?


「清彦、助けて!」


その声に胸が跳ねた。


田浦を見ると、両手を上げて必死に否定している。


「俺じゃないです!真壁さん、誤解です!」


「どうした?」


亜子が俺の腕を掴んできた。


その力が思ったより強くて、余計に心配になる。


「解けちゃったの……結んで!」


背を向けられる。


「はい?」


「水着のリボン、首の後ろ……お願い」


「げっ……」


状況を理解した瞬間、変な汗が吹き出してきた。


「……わかった」


「ビーチバレーやってたら、取れちゃったらしいんですよ。俺が結んであげるのに」


とりあえず田浦は無視して、亜子のラッシュガードに手を入れる。


同じタイミングで、亜子がファスナーを少し下ろした。


簡単なロープワークだ……


俺は視線を逸らしながら、手早く結び目を作った。


「これで大丈夫だ。もう解けない」


心の中で、結び目に向かって念を押す。


二度と外れるな。

頼むから。


「ありがとう!」


俺にそう言って、亜子がまた田浦にビーチボールを投げた。


ほっと一息つく間もなく、さっきの浮き輪女子に腕を引っ張られる。


「一緒に海に入りましょーよ」


「あ、ああ。まーちゃんで合ってるか?」


「そうですよ!名前覚えてくださいね!」


グイグイと引っ張られ、泡立つ波に足を踏み入れる。


温まった海水が、足元の砂を絡めとっていく。


「きゃー!きもちー!」


浮き輪に全身を預け、パタパタと足を動かすまーちゃん。


ちょっと目を離すとどっかに流されていきそうなので、浮き輪に片腕を突っ込んだ。


「もう足つかなーい」


「そうだな」


田浦とビーチバレーをしている亜子を沖から眺めた。


亜子は、ずっと楽しみにしているようだった。


今日のはしゃぎっぷりを見て、確信に変わる。


そんなに田浦に会いたかったのか。


「真壁さん、顔怖いっす」


林と香保里ちゃんが合流した。


香保里ちゃんのボート状の浮き輪を林が引いている。


「まーちゃん、交代してー!」


香保里ちゃんがそう叫ぶと、「えー」と言いながら、まーちゃんが林の方にバタ足していった。


林からボートの手綱を受け取る。


「一緒に乗ります?」

「いや」


香保里ちゃんには前回の飲み会でも痛いところを突かれている。


この子には、俺の気持ちがバレてるらしい。


「そんなに気になるなら、亜子先輩と遊べばいいじゃないですかー」


「そんなんじゃないって」


「真壁さん、モテますよね?」


「は?」


「彼女いますか?」


「いないけど」


「いつからいないんですか?」


「えっと……先月末に別れた……」


俺の誕生日、8月1日の3日前だった。


「付き合っても長続きしないタイプでしょ?」


何がいいたいんだ?


「言い寄られて、『この子でいっか』って付き合い始めるのに、なぜか怒らせちゃってフラれるパターンでしょ?」


どうして分かるんだ?


「女はねー見抜くんですよ。『あ、この人、私のこと見てない』って分かっちゃうんです。だから、こっち見て欲しくて拗ねたり、ごねたり、気を引こうと頑張っちゃうんです」


「そうか……」


「真壁さん、亜子先輩のことしか見てないから、そんなんで他の人と付き合ったりしたら失礼ですよ」


「……」


「私はもう林くんに切り替えましたけど、まーちゃんは結構頑張り屋さんだから、望みが無いなら早めにそう言ってあげてください」


「……」


「まあ、亜子先輩も亜子先輩ですけどね」


「どういうことだ?」


「もう。じれったいにも程があります!早くしないと田浦さんに取られちゃいますよ!」


「でも亜子が、それを望んでいるなら……」


「へえ。譲ってあげちゃうんですね。真壁さんはそれでいいんですね?」


俺がずっと自分で問い続けてきたことを、香保里ちゃんに指摘されて動揺する。


「さ、ビーチに戻りましょう?引っ張ってください」


俺は香保里ちゃんのボートを連れて戻った。




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