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あうん  作者: あおあん


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8/17

8,☆いくつになっても水着を選ぶのは楽しい

デパートはお盆商戦のため、この時期は休めない。


海は8月の3週目になった。


「これを乗り越えたら、楽しい海が待ってるから、頑張ろうね!」


香保里ちゃんは張り切って、皆を鼓舞してくれた。


そうだよね。


香保里ちゃんは清彦に会いたいんだよね。


そもそも香保里ちゃんに清彦を紹介して欲しいって言われて始まったんだった。


私ってば、いつの間にか楽しいサークルのように考えてしまうようになっていて……だってしょうがないよね。


消防士と海だよ?


レスキュー隊の水着だよ?


萌えないなんて無理。




そしてここにも賛同してくれてる後輩たちがいる。


「8階の催事場が水着フェアやってるんですよ。一緒に行きましょう?」


「亜子先輩スタイルがいいから……思い切ってビキニとかどうです?」


香保里ちゃんも惟子ちゃんもまーちゃんもノリノリだ。


「ビキニはハードル高いけど、新しい水着は欲しいかも」


今、持ってるのは5~6年前に買ったやつだ。


流行りじゃない。


「みんなで行きましょうよ。そしたら被ったりしないから」


「「「だねー」」」


「だねー」遅ればせながら必死で食らい付いた。




早番を終えて、皆で8階へ。


「めっちゃいっぱい!」


カラフルな水着に、どうしたってテンションが上がる。


それぞれにお気に入りを手にして、試着室に入る。


話し合いの結果、着た姿を見せ合うのは『ナシ』にした。


要はデザインが被らなければいいのだ。


私は決めきれず、とりあえず一着を持ったままうろうろしている。


「え。亜子先輩、それにするんですか?」


「え。被った?」


「そうじゃないですけど……」


香保里ちゃんの視線が刺さる。


「地味ですね」


「私もそう思います。おばさんっぽい……」


「こら!まーちゃん!それは言い過ぎ!」


「あ。すみません」


困っちゃう。


「そう?大人っぽくていいかなって思ったんだけど」


ベージュにペイズリー柄のセパレート。


「お婆ちゃんちのカーテンみたいじゃないですか?」


「もう!惟子ったら!」


香保里ちゃんが、思ったことを何でも口にしちゃう惟子ちゃんとまーちゃんを咎めてくれる。


「だ、大丈夫。でも……じゃ、私、どんなのにすればいい?」


皆はもう決めたみたいで、香保里ちゃんは黒ビキニ、惟子ちゃんはピンクのワンピース、まーちゃんはカーキのハワイアンなデザインで背中がザックリと開いたものを持っていた。


「亜子先輩、これとかどうですか?」


まーちゃんが紫色のビキニを持って来た。


「ちょっと責め過ぎじゃない?」


「私は、こういうのがいいと思いまーす」


惟子ちゃんが真っ赤なフリフリのツーピースを持って来た。


「か……可愛すぎるかな……」


皆で『うーん』と腕を組んで悩んでくれている。


「みんな、ありがと……」


親切な後輩たちに感謝だな。


「これだ!」


香保里ちゃんが言って、サファイヤブルーのビキニを持って来た。


首の後ろを大きなリボンで結ぶようになっていて、布面積はそんなに小さくない。


「いい!これいい!」


まーちゃんも惟子ちゃんも賛成してくれている。


「ちょっと着てみようかな」


試着は見せない約束だったのに、私の時だけ、カーテンを開け放たれた。


「うん!これで決まりだ」


三人とも腕を組んで激しく頷いていた。




満足のいく買い物が出来て、海に行くのが一層楽しみになってきた。


私は地黒で、背は高いし、肉付きもいい。


皆は色が白くて、小柄で華奢だから、他の三人とは、ちょこっと人種が違うんじゃないかな、って心配になる。


でもしょうがない。


今更、どうこう出来ることじゃないもんね。


そう頭じゃわかっているけど、夜のお酒は控えて、買って来たお弁当は極力ヘルシーなものを……長風呂で汗かいて、寝る前に腹筋なんかしちゃったりして……


ダイエット、がんばってる。


『何もしてないふり』して、めっちゃしてる。


抜け駆けごめんよ。


許せ。私だけ30代なんだから!


「ふぅ」


寝る前に体動かしたりしたから、眠れなくなってしまった。


いつもならアイス食べるところだけど、今は、我慢の一択。


「こんなにたくさん……」


清彦が私の誕生日に買って来てくれた、ちょっとお高めのアイス。


大事に、でも順調に食べ進めてきてたけど、ここ数日は減ってない。


私が送ったメッセージの後、清彦からも『断わり切れなかった』って返信が来た。


田浦くんも来るんだろうな。


さっき買った水着を眺める。


上にTシャツ着た方がいいかな……


なんならショートパンツも……


自信がなくて嫌になる。


後輩たちみたいな女の子らしい体でも、男子たちみたいな鍛え上げた肉体でもない。


私だけだらしがないって思われたらどうしよう。


燃え盛っていた熱が、一気に鎮火してしまった。






「亜子先輩!お疲れ様です!」


「まーちゃんはいつも元気いっぱいだね」


「はい!」


海に行く前日の勤務、遅番は私とまーちゃんだった。


「もー。香保里と惟子は早番でいいなぁ」


「シフトだもん。しょうがないよね」


レジの締め作業など、やることは多いけど、この時間になると人通りは少ない。


「私、明日、めっちゃ楽しみにしてるんです。実は……気になる人がいて……」


やっぱ一番人気は田浦くんかな。


若い林くんも可愛いし、水島くんはインテリっぽい感じがたまらんね。


「亜子先輩は?」


「私は……た、うら、くんかな……」


どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。


嘘ついてるとかじゃないのに。嫌な感じ。


やだ。心臓うるさい。


「へー!やっぱり!楽しそうにしゃべってましたもんね」


「そうかな……」


心臓が暴れすぎて気分が悪くなってきた。


「私はですね……実は……真壁さんなんです」


思わず目をぎゅっと瞑った。




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