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あうん  作者: あおあん


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6/18

6,★合コンなんてやめとけばよかったんだ

「ま、じ、か」


勤務明けにスマホを見たら、亜子から合コンの誘いが届いてた。


『清彦と田浦さんを入れて、あと二人集めて!』


レストランのリンクが貼られている。


「くっそ」


思わずロッカーを叩いてしまった。


「どしたんすか?」


「あ。すまん。あのさ、田浦、次の休日って空いてる?」


亜子の頼みだ。仕方がない。


「はい。何でですか?」


「合コンとか、興味ある?」


「ない奴なんていないでしょ。やるんですか?行きたいです」


「サンキュ」


あと二人。


俺たちは基本的に同じシフトで動くから、今、ロッカールームにいる奴は休みが被っている。


「林、水島、お前らも合コンあるんだけど、行く?」


「行きます!」

「はい!」


年下ばかり、集めてやった。


亜子は同い年の俺がちょうどいいはずだ。






雰囲気のいい、イタリアンレストラン。


俺たち男性陣が先に着いた。


横に四人並ぶか。


「田浦、お前一番奥に行け」


そう指示し、俺は一番下手に座った。


「今日はなんの集まりなんすか?」


一番若い、25歳の林。


「俺の友達とその職場仲間だと思う。デパコスで働いてるから、化粧は濃い目だ」


「うっほー!綺麗め系きたー!俺、女子はナチュラル系より、ばっちり決めてる方が好みっす」


おっと。意外だ。


「一応言っとくけど、亜子は、俺の友達だけど……あいつは30歳だから、若く見えるかもだけど、年上だから気をつけろよ」


「まじっすか。オレ、お姉さま好きっす」


まさかの林は年上好きだと判明した。


「亜子さんってこの間の女性ですよね?だったら俺じゃないですか?」


田浦が割り込んできた。


「俺って、どういう意味っすか?」


林の口がムッとなった。


「俺狙いってこと。一度会ってるんだよ。亜子さん、俺に会うためにこれ企画してくれたんじゃないですかね。嬉しいなぁ」


なんだよ。純朴そうに見えて、ちゃっかり趣旨を把握してんじゃねーか。


「かもな」


もう、どうとでもなれ。


「お連れの方がお見えです」


店員に連れて来られた、女性四名。


「先始めちゃってる?」


「んなわけねーだろ」


亜子は……なんでそんな格好してくんだよ。


「寒くねえの?」


「ちっとも」


そう言って、奥に行こうとする。


「おい。幹事は手前だ」


「え……私、そういうの出来ないから。香保里ちゃん、幹事してくんない?」


華奢で色白の女の子が俺にぺこりと頭を下げた。


「こんばんは。今日はよろしくお願いします」


「あ、こちらこそ」


結局、亜子は田浦の向かいに陣取り、俺の前に香保里ちゃんが座った。


コース料理が始まり、次々に飲み物が運ばれてくる。


亜子のやつ……強い酒ばかり飲みやがる。


「気になりますよね?」


「は?」


香保里ちゃんが、上目づかいでこっちを見ている。


「真壁さんは亜子先輩が気になるんですよね?」


「いや、別にそういうわけじゃ……」


「隠さなくても分かります。亜子先輩、ちっとも気付いてないですよ?」


楽しそうに田浦としゃべる亜子の声が気になって仕方がない。


「私じゃダメですか?」


「香保里ちゃん?」


俺だってモテないわけじゃない。


今までも亜子には付き合ってる相手がいたから、俺はこうしてアプローチをかけてくる子とよろしくやって来た。


だけど、今は亜子がフリーだ。


「ごめん。香保里ちゃんはもっといい人探した方がいいよ。俺なんか最低だから。はは」


やっぱ来るんじゃなかった。


半分後悔し始めてた頃、亜子が席を立った。


「ちょっとお手洗いに……」


上着を持って後を追う。


「そんな下着みたいな格好でなに期待してんだよ」


「清彦?」


「これ羽織っとけ。風邪ひくぞ」


「大丈夫だよ。要らない。暑いって」


亜子にそっぽを向かれ、全身の力が抜ける。


「真壁さん、もう亜子さんにフラれたんですか?」


隣の林と香保里ちゃんがニヤニヤしてやがる。


「『もう』ってなんだよ。別にフラれたとかじゃねーんだよ」


「ははーん。めっちゃ片想い中って感じっすね。俺たち協力しましょうか?」


全員して目を輝かせてやがる。


「ほっといてくれ。頼むから、構わないでくれ」


俺の言葉が届かなかったのか、女子一同は、席を詰め、戻って来た亜子は俺の前に座るしかなかった。


「えぇ」


嫌そうな顔の亜子。


仏頂面なのに可愛い。


「先輩、ちょっと席変わってもらいました。私も皆さんとおしゃべりしたいので」


香保里ちゃんに言われ、亜子は仕方なさそうに俺に話しかけてくる。


「この前のペンダントだけど……」


「あ?」


散々迷った挙句に選んだんだけど、気に入ったか?


「返していい?」


「なんでだよ」


「だって……着けづらいよ。どうしたらいいか分かんない」


「父親にでももらったと思えばいいだろ」


「お父さん……ね」


亜子の表情は時々さっぱり読めなくなる。


「迷惑だったか?」


俺の心臓が、厳しい訓練の最中よりも激しく動いてる。


「……」


亜子がなんて返してくるのか、息を飲んで待った。


「すみません。お飲み物、ラストオーダーになります」


店員に邪魔され、亜子は俺の質問に返事をする気が失せたようだった。






20代の六人は連絡を交換していたようだったが、俺と亜子は混ぜてもらえなかった。


「もう。思ってたのと違う」


ふくれっ面の亜子の手を引っ張る。


「酔ってんだろ。歩けるか?」


「歩けないって言ったら、おんぶでもしてくれんの?」


「いいけど」


急に黙られて、恥ずかしさが極限まできた。


「清彦、香保里ちゃんどうだった?」


「どうだったって……俺には勿体ないんじゃないか?」


「そんなことないって。清彦はいい男だし、私のお気にで一押しだからね、そうそう誰にでも紹介したりなんてしないんだから」


「そうなのか?」


やばい。顔が……


「さっさと彼女作りなよ。私んとこ来ないで済むようにさ」


熱帯夜なのに、冷たい風が吹いたように感じた。


「亜子が迷惑なら、もう行かないよ」


亜子の足が止まる。


「そうは言ってない」


亜子の気持ちが分からない。


聞きたいけど、聞きたくない。


だってこれは……高3の時に俺たちに起きたことをなぞっている。


亜子はあの時も、『みんなに冷やかされたくない』と言った。


俺は『じゃあ、話しかけるのやめるか?』と返した。


そしたら『そんなこと言ってない』って亜子が怒り出して、それ以来、俺たちは口がきけなくなったんだ。


まずい。


このまま亜子に距離を取られたくない。




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