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あうん  作者: あおあん


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5/16

5,☆いい人いたら紹介してよ

「もう、こういう贈物、彼女じゃない子に贈るのどうかと思うよ?」


仕事終わりに、更衣室からお説教の電話を掛けた。


なのに……


「もう寝る時間だから」


不機嫌に言って、一方的に電話を切られてしまった。


「もう……無自覚なんだから」


こんなプレゼントもらったら、私だって勘違いしてしまいそうだ。


「先輩の彼氏さん、めっちゃかっこいいですね。お仕事なにされてる方なんですか?」


「彼氏じゃない、ない。消防士だけど、付き合ってない。友達だよ。仲の良い友達」


帰り支度の更衣室は、だいたいこんな話ばかり。


「えー!友達にあんな高価なペンダントなんて贈らないですよー!」


「そうかな?そういうこと平気でしちゃうやつなんだよ。誰にでも平等に優しくて、人類愛に溢れてるんだろうね。なんてたって、レスキュー隊だからね」


「へえ。じゃ、今度私に紹介してくださいよ」


香保里ちゃんを見た。


「本気?」


清彦も別れて今は相手がいないし、香保里ちゃんはいい子だからお似合いかも。


「はい!もし先輩が好きとかじゃなかったら、私、本気で紹介して欲しいです!」


「今度話しておくね」


このペンダントに見合うお返しが出来そうでよかった。






買ってきたデパ地下の惣菜と缶ビールを開ける。


新しいワンピースを汚したくないから、部屋着に着替えた。


「出番があってよかった……」


奮発して買ったのに、危うく着る機会がないままシーズンオフになるところだった。


「ほんと、清彦に感謝だな」


夏休みに誕生日がくる私にとって、一緒に過ごしてくれる人を探すのはとっても大事。


冬のクリスマス、夏の誕生日、年中彼氏を欲している。


「だから早く結婚したいのに」


いろんな人とお付き合いをしてきたけど、決め手がないまま……最後は振られる。


「どこがいけなかったんだろうなぁ」


独り言が止まらない。


豊とは家族構成が似てたし、気が合うと思ったのに。


思い浮かべる将来の家族像みたいなものが近かったはずなんだけど。


「おかしいなぁ。プロポーズ……なんで?」


誕生日の前日に別れ話をされるなんて、一生の不覚だわ。


30歳にして独身、彼氏不在。


「どうやったら結婚できるんだろう」


今年はたまたま清彦も一人だったからいいけど、来年の誕生日までには何とかして相手を見つけなければ……


アプリでもやってみるか。


スマホを片手にタップとスクロールを繰り返す。


「うーん……」


いまいちピンとこない。


「あ、そうだ」


清彦に香保里ちゃんを紹介するんだった。


約束を思い出して、文面を考える。


『職場の子が清彦を気に入ったって。紹介したいんだけど、会ってみる?』


こんな感じかな。


「あ、そうだ!」


『そっちの職場にもいい人いたら、紹介してよ』


ついでに私にも紹介してもらっちゃおう。


ナイスアイディア!






一晩経って、既読は付いたのに返信なし。


「無礼者め」


身支度を整え、職場に向かう。


「あのなぁ」


急に声を掛けられて、びくりと肩を震わせた。


「あ、驚かせて悪い」

「清彦、なにしてんの?」

「トレーニング」

「ふーん」


ランニングシューズの上に見える固そうなふくらはぎに目が釘付けになる。


「あのさ、昨日のメールだけど」

「うん?」

「その紹介してくれる子って、売り場に一緒にいた子?」

「そう。香保里ちゃん」

「亜子……いいのかよ……俺が……」


信号で止まっていたら、向こう側から爽やか青年が手を振っていた。


「ねえ、知り合い?」


清彦に聞いてみる。


「あ、うん。後輩」

「え。めっちゃかっこいい」


青に変わって渡り切ったところで、敬礼をした。


「おはようございます!町の安全の為に鍛えてるんですね?」


やっぱりいい体してるなぁ。


「亜子、馬鹿っぽいからやめろよ。ごめんな、田浦」


「いえいえ。朝から彼女さんと散歩なんていーっすね」


「彼女じゃないんです。私、朝倉亜子って言います。清彦はお友達だよね?」


「あ……うーん」


なに、微妙な返事してんの。


誤解されたら困るじゃん。


(こういう人を紹介してよ)


田浦さんを指さしながら、口パクで伝える。


(年下だぞ?)


口パクで返事が返ってきた。


(いくつ?)

(28)


「え!いーじゃん!」


やば。大きな声が出ちゃった。


「どうしたんすか?」


「田浦さんって、独身ですか?」


「はあ」


「付き合ってる人とかいるんですか?」


「いえ」


「やったー!」


ジャンプして喜んでたら、清彦が田浦さん引っ張って走って行っちゃった。


「えー、なんでー?」


走り去る二人のナイスガイの背中を、指を加えて見送った。






「香保里ちゃん、あのね、昨日の話なんだけど」


「え?何でしたっけ?」


「あ、ほら、清彦、紹介して欲しいって話してたじゃん?」


「いーんですか?本当に?たぶん、あの人、亜子先輩のこと好きだと思いますよ」


「ないない、それね、本当にないの」


手の平をぶんぶんと顔の前で振る。


がらんとした売り場で、立ち話しかすることが無い。


「あのさ、合コンってどうやるの?」


思い切って聞いてみる。


「どうって?」


「合コンしたいんだけど、やり方教えてくれない?」


「えーと。男女が複数名集まって、食事したら、もうそれが合コンだと思うんですけど」


「にーにーじゃ、ダブルデートみたいだよね?もっと人数いた方がいい?」


「そうですね。よんよんとかがいいんじゃないですか?」


「じゃ、こっちもあと二人必要だね。まーちゃんと惟子ちゃんにも声かけてみようか」


同じ職場の後輩をあと二人連れて行けば人数が合う。


「いいですね!みんなフリーだし!消防士と合コン、最高です!」


「やったね!楽しみになってきた!」


清彦の職場も男ばっかりっぽいから、四人くらいすぐ集まるでしょ。




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