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あうん  作者: あおあん
この春の出来事

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29/44

29,☆もしかしてチャラい男だったの?

賑わうお洒落なカフェレストラン。


「よく予約取れたねー!」


香保里ちゃんがはしゃいでいる。


「ちょうどキャンセル出たみたいで、ラッキーでした」


惟子ちゃんが得意気にピースサインをしている。


今日は、まーちゃんの送別会だ。


「コース料理で飲み放題つきです!早く、飲み物頼んじゃいましょう?」


惟子ちゃんが取り仕切ってくれる。


まーちゃんと同期入社で、この退職を一番寂しがっているのは惟子ちゃんのはずなのに。


「惟子、最高!私がいなくなった後のことはよろしく頼むよー」


いつも明るくて元気なまーちゃんも、さすがに今は無理していそうだった。


「まーちゃん、次の就職先の話してよ。私も転職の参考にしたい」


香保里ちゃんが促して、まーちゃんが姿勢を正した。


「次は、リサイクルショップの事務職をやります」


「「「事務職?!」」」


転職するとは聞いてたけど、まーちゃんっぽくないワードに皆で驚いた。


「まーちゃんに、事務職なんてできるの?」


そこは惟子ちゃんしか突っ込めないところだったから、聞いてくれてよかった。


「できるできない、じゃないの。やるの!」


まーちゃんらしい返しに、自然と笑いが起こる。


「ぶっちゃけ、私も販売員の方が向いてるなって思うけど、せっかくだから20代のうちにいろんな経験してみたいなって思っちゃって。もう、今の仕事は『目を瞑ってでもできる』って感じで、新しい刺激とかまるでないじゃん?そういう落ち着いた生活に慣れるのはまだ早いかなって思っちゃってさ」


毎日楽しそうにしてたから悩みなんて無いのかと思ってたけど、実はいろいろ考えてたんだなと、今さらながら新しい発見だった。


「亜子先輩は?ずっとこの仕事でいくんですか?」


突然話を振られて、慌てて口の中の物を飲み込んだ。


「そうだね。私は変わらない日常の中にも、実は小さな変化ってたくさんあるから、そういうのを感じるだけで充分かな。昔から臆病って言うか、新しい挑戦は苦手だったりするんだよね……」


最年長なのに、情けないことしか言えなかった。


「亜子先輩は保守的なんですね。結婚とか向いてそうですけど、田浦さんとはどうなんですか?」


いつも勘が鋭い香保里ちゃんが、今日もまた痛いところを突いてくる。


「まだ結婚の話は早いよ……香保里ちゃんは?林くんとどうなの?」


時々デートしてるらしいと司から聞いていたし、話題を私から逸らせたかった。


「よく会ってますよ。エッチもするけど、付き合ってるわけじゃないです」


「ええ?付き合ってないのにエッチしちゃうんですか?」


先に惟子ちゃんが言ってくれてよかった。私も全く同じ感想……


「え、するでしょ?だって他にもいい人いるか、並行して探した方が効率がいいじゃん。長期間一人に絞るなんて時間的にリスクだもん。付き合い始めちゃえば、相手にも義理立てして好き勝手はできなくなっちゃうし。これしかなくない?」


「大人だなぁ」


まーちゃんは感心してるけど、惟子ちゃんと私は置いてけぼり……


「それって林くんも了解の上なの?」


どうしても気になって、聞かずにはいられなかった。


「まあ、そうですね。向こうも他に女の子いると思いますよ。田浦さんは……そういうことしなさそうですよね。彼に限って言えば、一途って言うか、好きな人は基本的に一人って気がします」


一般的には、好きになる相手は一人って考え方が多いと思うけど。


「でも、真壁さんはもっと重い感じしますよね。亜子先輩への執着が強い気がする」


香保里ちゃんの言葉に、まーちゃんが激しく頷いている。


「そうそう。あの人は亜子先輩の近くにいたいが為に、私と会ってたようなところがあります」


「そんなことないでしょ」


まーちゃんはお酒が回ってきちゃったようだった。


「そんなことありますよ!あの人、いっつも私と亜子先輩のこと比べてましたよ。本人は自覚ないみたいだったけど、あの態度は世の女性に失礼極まりないです!」


清彦はそんな風に見られてるんだと、少し驚いた。


「私たちは高校が同じで、ずっと『腐れ縁』っていうか、本当に、もう好きとかそう言うんじゃないんだよ」


言いながら、ちくちくと胸が痛むのを敢えて無視した。


「亜子先輩はそうでも、真壁さんは違うってこともあるでしょ?」


「もぉ、まーちゃん、飲み過ぎだよ」


惟子ちゃんにグラスを取り上げられて、まーちゃんはお手洗いに行った。





やっぱり理解に苦しむ。


夜風に当たりながら、一人で歩く帰り道。


清彦は私が誕生日の前日に元彼に振られた時も、司と知り合うきっかけを作ってくれた時も、ただ見ていた。


本当に好きなら『好きだ』とか『付き合おう』とかは、そういう時に言うもんじゃない?


清彦が私に告白してくれたのは、司と病室に見舞いに行った時で、『どうして上手くいってるときにそういうこと言うの』って不思議だったんだ。


もしかして、清彦も同時に女性を比べたいタイプとか?


香保里ちゃんみたいに、一人に絞らない恋愛をしているの?


だとしたら……納得がいく。


私がフリーの時には何とも思わないけど、誰かのものになりそうになったら惜しくなる……そんなの最低じゃない?


今、気付いてよかった。


危うく、美玖ちゃんを紹介しちゃうところだった。




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