表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あうん  作者: あおあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/16

2,☆失恋してしまうの?

あんなに作ったのに、清彦はぺろりと食べてしまった。


一体全体、どこに消えたのだろう……


お腹は全く出てなさそうだけど。


「じゃ、俺、もう帰るわ」


21時。


「うん。ご安全に。なーんて」


清彦は消防署でレスキュー隊っていうのをやっている。


災害現場にいち早く駆け付ける危険な仕事だよね。


「じゃ、お前も誕生日ドジるなよ」

「清彦じゃないんだから、大丈夫」

「いや。亜子もたいがい抜けてっからな……」

「なんですって?唐揚げ返して!」


こちょこちょ返しをしたかったけど、あっさりと交わされた。


「またな」

「うん。おやすみー」


消防署の勤務は24時間サイクルらしい。


『24時間勤務 → 24時間非番 → 24時間休み』を繰り返してる。


お父さんの影響を受けて、昔から消防士に憧れてたって言ってた。


チャラいのにマジメって……


おちゃらけた姿しか知らないから……


どんな顔で危険な災害現場に救助に行くのか……


謎。






私はデパートのコスメ売り場でBAビューティーアドバイザーとして働いている。


美容の専門学校を出た後、本当は大手コスメ企業に就職したかったけど、採用されなかった。


でももう10年やってるし、いい職場だから、これで良かったと思うようにしてる。


ばっちりメイクを決めて、家を出た。


「おはようございます」


私は今日は早番で、明日はお休みにしている。


早く帰って、明日のデートに備えたい。


平日のデパートだからと言って侮ってはいけない。


開店と同時に入店されるマダムは結構多いのだ。


「いらっしゃいませ」


60代の女性かな。ファッション好きそう。


「本日はどういった商品をお探しですか?」


「口紅が欲しいの。なんか、赤っぽいのばかりになってしまって、他の色も試してみたいのよ」


「承知しました。お客様はお肌のお色が白いので、比較的、赤や濃いピンクが似合うと言われています。ですが、同じような色ばかりあっても、飽きてしまいますよね」


「そうなのよ。たくさん持ってるけど、どれも同じに見えちゃうのよ」


「よくあるお悩みです。例えば、こちらはいかがですか?」


朱色がかったオレンジ系を出してみる。


「似合うかしら?」


試着用に塗って差し上げる。


「悪くないわね?」


「お似合いだと思いますよ。ちなみに、こちらも試してみられます?」


次はピンクベージュを試していただく。


「これも似合ってる?」


「少し、お顔が暗い印象になってしまいますので、こちらの場合は、少しチークを足されるといいと思います」


さっと筆でチークを乗せた。


「あら、素敵。私じゃないみたい」


「いつもと違う印象で雰囲気が変わりますよね」


こうしておしゃべりをしながらお化粧品を紹介するのは楽しい。


私には天職だ。


こうして午前中は口紅2本とチークをお買い上げいただき、お昼休憩に入った。


スタッフ専用の休憩スペースで、サンドイッチを食べながらスマホを見る。


「ん?豊?」


明日、プロポーズを受けるかもしれない彼氏だ。


『今日、仕事終わりに会えないかな』


えー。明日でよくない?


せっかく人気のレストランを予約してくれてるんだし、今日は……


あ。でも……


そういうことか。


このままお泊りして、日付が変わる瞬間に一緒にいたいってことね。


29歳と23時間55分、ぎりぎり20代でプロポーズみたいな……


きゃ。ロマンチックじゃん。


悪くないサプライズに気付かないふりをして返信。


『分かった。18:30にデパートでいい?』


『恐れ入ります』と文言付きの、お辞儀をしているスタンプを返された。






仕事しながら念入りに化粧直しをして、その時に備える。


外泊の準備はしてこなかったけど、大丈夫かな……


ま、プロポーズされちゃえば、ちょっとくらい身だしなみが崩れてても平気か。


と思いつつも最低限の化粧落としと基礎化粧品を、社割で購入してしまった。






私服に着替えて、いつものパン屋の前で待つ。


豊は息を切らしながら走ってきてくれた。


「仕事忙しかったの?」


「まあ、そんなとこ。とりあえず、どっか入らない?」


ん?


ああ……食事の時間までは少し時間があるもんね……


「じゃ、軽く飲めるバーに行く?」


食前酒なんて、お洒落でいいよね。


前に一度だけ同僚と行った、雰囲気のいいバーに入った。


大きな水槽があって、サメが泳いでいる。


「私はサングリアを」

「俺は……生ビールで」


何か摘まむものも頼もうとしたんだけど、豊がうずうずしてるみたいだったから、まずは話を。


「明日でよかったのに」

「いや、早い方がいい」


まあね。そりゃ、早い方が、明日の雰囲気もぐっと良くなるかもね。


ドリンクが運ばれてきて、それを持った。


『乾杯』をしようと思ったら、豊は一気に半分以上飲んでしまった。


「あ。喉乾いてた?お水でも頼もうか?」


じっと見つめられる。


あ、きそう!


昨日、清彦に言われた通り、視線を逸らして、少し下を向いた。


プロポーズ……


舞台は整っている。


「あのさ、亜子……」


きたきたきたきた……!


胸が高鳴って、なんかちょっと怖いから誰かに手を握ってて欲しい。


仕方なく、自分の右手と左手を絡ませる。


「申し訳ないんだけど、亜子の期待には答えられそうにないんだ」


「え?」


プロポーズは無しってこと?


「別れてもらえないかな」


「……」


「明日じゃ、さすがに悪いと思って、今日時間取ってもらったんだ」


「そう、なんだ……」


あれ?


ふられちゃった?


困ったな。


こういう時の対処法は、清彦に聞いてないからな……


はっ!閃いた。


『男は手に入りにくい獲物を追う習性があるからな』


昨日のアドバイス……


に従って、黙って立ち上がる。


鞄を持って出口に向かう。


「あ、ちょっと、亜子!」


よし。本当だ。追って来た。


先に店を出て、歩調を緩める。


見失われないように、ゆっくりめに歩く。


「亜子!」


よし。豊が追い付いた。


で?


今、謝るなら、許さないこともないけど。


「お会計は済ませてあるから」


そう言って、豊は来た道を戻って行った。






なにが起きたんだ?


いや、なにも起きなかったのか?


いやいや、起きて欲しくないことが起こったぞ。


なんかもう考えすぎて、頭が痛くなってきちゃった。


テイクアウトしてきたハンバーガーを食べて、シャワーを浴びて、スマホを見たら日付が変わってた。


「あれ?もう?」


何もしてないはずなのに、時間が溶けた。


清彦は絶賛お仕事中だもん。


今日は連絡できない。


明日は……確か、朝8:30に終わるんだっけな……


前に勝手に入れられたアプリで、地域の災害情報を開く。


近くでビル火災発生中だった。


明日も疲れてるよね。


はぁ。相談したい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ