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あうん  作者: あおあん


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1/16

1,☆親友の誕生会を開くのだ

うわぁ~今日も眩しい。


朝日を浴びながら歯ブラシをしていると電話が鳴った。


「もひもひ」

ペッ。


「おはよー」


『おま……今、歯ブラシしながら出たろ?』


「ごめーん。手が勝手に。へへ」


『亜子、今日暇?』


「うーん。暇だけど、なに?」


『俺の誕生会開いてくれよ』


「は……?彼女は?」


『フラれたんだよ。マジ、誕生日の3日前とか勘弁だよなぁ』


「ひく……」


『だろ?可哀想だろ?頼むよぉ、亜子ちゃーん』


8月1日、今日は私の親友、真壁清彦まかべ きよひこの誕生日だ。


まったく……ドジなんだから。


なんで誕生日の3日前にフラれちゃうかなぁ。


「料理は作るけど、ケーキは自分で買って来なね」


『やった!亜子さいこー』


「なにそれー」


声を上げて笑った。


長い髪を結い上げて、バレッタで留めつつ、冷蔵庫を開ける。


「うーん……調味料しか入ってない……」


唐揚げとポテサラとマカロニグラタンでいっかな?


財布とエコバッグ片手にサンダルを履いて出る。


「あっつ」


今日から8月だもんなぁ。






ピンポーン


チャイムと同時にドアが開く。


「おじゃましまーす」

「いらっしゃい」

「居酒屋かよ」


清彦はさっそく冷蔵庫にケーキの箱と、お酒の瓶を詰め込んでいた。


「ケーキどこのにしたの?」

「フルーツパーラーのメロンが乗ったやつ」

「プレートとロウソク付けてもらった?」

「プレートは……誕生日おめでとうだけ……さすがに自分の名前は言えねーし」

「だよね」


背後から覆いかぶさるように近付かれる。


「めっちゃいい匂い!なに作ってくれてるの?」


汗をかいたランニングシャツのノースリーブからたくましい腕が伸びている。


「唐揚げだ!ひゃっほー!」


そう言って、一つ摘まんで口に入れた。


「あ。こら」

「うんま!」


家の勝手を知ったる清彦は、取り皿と、それぞれの箸、フルートグラスを2つ出してテーブルに並べていた。


「ね、ねえ。なんで別れちゃったの?」


「なんでだろ?俺にも分かんね」


「なにそれ。ウケる。誕生日は1人にならないよう、ずっと上手くやってきてたじゃん?」


「それな。しくったわ。まさか30の大台チェンジの年に限ってやらかしたわ。亜子がいなかったら、俺、実家で両親と過ごすとこだったわ。ひぇー怖えー」


清彦が両腕を自分の体に巻きつけて、ぶるぶる震えてる。


「確かに、実家で30歳の誕生日はないよねー。もうすぐ、できるからねー。お酒の準備お願いねーってか、今日、飲めるの?」


「おう!問題ない!」


清彦がガサガサと袋から何かを取り出した。


「あのさ、これ被っていい?」


揚がった山盛りの唐揚げを持って、目を向けると、HAPPY BIRTHDAYと派手なデコレーションがされている帽子を被っていた。


「なかなか良くない?」


「はいはい。似合ってるよ。さあ、食べよー!」


私がハッピバースデートゥユーを歌ってる間に、清彦はスパークリングワインの栓を抜き、グラスに注いでくれた。


「じゃ、30歳のお誕生日、おめでとー!清彦!」


「ありがとう!亜子!」


グラスを合わせ、口を付けると、甘酸っぱい発砲が口の中に広がって力が抜けた。


清彦が早速、唐揚げを頬張っている。


「そんなに口いっぱい入れて、息できんの?」

「ふん、ふん」


なんかリスみたいで可愛い。


トースターが『チン』って言った。


「グラタンできたよ」


いい感じに溶けたチーズと、焼き色のついたパン粉。我ながら上出来。


「え!グラタン?めっちゃ好き。超幸せ!」

「タバスコも買ってあるよ」


私は辛いのは食べないんだけど、清彦が好きだから、さっき仕入れてきた。


「亜子、優しい!」

「ポテサラのお替わりもいっぱいあるよー」

「食う食う!」


こんなに喜んでもらえるなら、作った甲斐があったって感じ。


グラタンをハフハフしながら食べてる清彦は、お姉ちゃんとこの長男(小3)と変わらない。


「これもお替わりある?」


「うん、あるよ。誰も取らないから、安心してゆっくりお食べなさい」


「だな。なんか兄ちゃんと、タイキに負けまいと、つい早食いになっちゃうんだよな」


男3兄弟の真ん中だもんね。仕方がないか。


「本当にこんなとこ居ていいの?」


あっさり『別れた』報告を受けたけど、傷ついてたりしないの?


「あっちが別れたいって言ったんだからしょうがねーよな」


それにしても……変な帽子。


せっかく見た目はかっこいいのに、コイツのちょっと残念なところ。


「んで?亜子は?」

「私?」

「お前は大丈夫なのかよ」


私の誕生日は明後日、8月3日だ。


「全く問題なし。なんかさぁプロポーズされる気がするんだよね」


付き合って1年ちょっとの彼氏がいる。


本当は20代で結婚したかったけど……


ま、それとなく伝えてあるから、明後日は期待してるんだよね。


「そうなのか?頑張れよー」


「なんかアドバイスちょうだいよ」


「うーんと……プロポーズの気配を感じたら、いったん下を向け。お前は食い気味に話に飛び付くところがあっから、その辺、要注意だぞ」


「なんで?嬉しいんだから、喜んだって良くない?」


「男は手に入りにくい獲物を追う習性があるからな。ちょっとだけだぞ。露骨に顔を背けんなよ。お前、加減が分かってないからなぁ」


「ちょっと、練習してみていい?」


「おう。しとこう。じゃ、行くぞ」


清彦は私に向き合って、真剣な顔になった。


こうしてみると、整った顔してるし、鍛えてるから体つきは最高だし、なかなかいい男だ。


「亜子……俺と、結婚してくれないか?」


ちょっと下の方に目をやる。


それから、首を少し傾げてみる。


そろそろいいかな……清彦の目を見て……軽く微笑んで……


「はい。よろしくお願いします」


と、言ってみた。


「どう?」


「なかなかいい!亜子にしては上出来!98点!」


「えー!98点もくれるの?わーい。完璧じゃん。いけるね。これなら結婚できそうだね!」


気分が良くなって、ルンルンでキッチンに戻る。






清彦とは高校の時からの付き合いで、何でも話せる仲だ。


私たちは高2のクラスが一緒で知り合った。


「ねえ、8月3日って空いてる?」


私は当時の親友の朋美ちゃんを誘った。


「あ、ごめん。家族旅行で沖縄なんだよね。どうして?」


「ううん。一緒に遊べたらなって思ってただけ……」


「あ!亜子の誕生日か!ごめーん、すっかり頭から抜けてた!」


「いいよ、いいよ。夏休みだもんね。大丈夫」


小学生の時からずっと嫌だったんだ。


クラスの子たちは週末に集まってパーティーしてたのに、私だけ連絡が取れなくて、お誕生会をしたことがなかった。


「あ、じゃ、俺とかどう?」


「真壁くん?」


同じクラスの男子だけど、それまであまりしゃべったことが無かった。


「亜子と真壁くんがどうして夏休みに会うのよー?」


朋美ちゃんは真壁くんのことかっこいいって言ってたから、ちょっと嫉妬された。


「俺さ、誕生日8月1日なんだよね」


「あ」


同じ悩みを持つ者同士、それだけで気が合う気がした。


「8月1日に俺の誕生会をやって、8月3日に朝倉さんの誕生会をやろうよ」


「うん!」


このバースデーパーティーをしたのをきっかけに親しくなったんだ。


それから高3の秋まで、私たちは付き合っていた。


「あれ以来、誕生日を一緒に過ごすなんて初めてじゃない?」


清彦は毎年、違う彼女と過ごしてたはずだ。


「そうなんだよー。今年に限って、なんなんだよーって感じ。誰でもいいなら誘える子はいるっちゃいるけど、どうして、俺の誕生日にご馳走してやんなきゃならねーの?って思うじゃん。亜子みたいに手料理とか作ってくれる子は貴重だよ……」


凹んでてウケる。


「ねえ。ケーキ見てもいい?」

「おう、食おーぜ」


食べ終わったお皿を二人で片付けた。


清彦は『実家じゃ休まらない』とか言って、たまにここに来ては、自由にテレビ見たり冷蔵庫の物を漁って食べたりしている。


だから、どこになにがあるのか分かっている。


「ライターってあったっけ?」

「あー。さすがにないかな……」

「んじゃ、これでいくか」


ガスコンロから火を点けて、清彦が小さなロウソクに火を灯した。


「30歳だもんな、3本でいっか」

「あーあ。20代が終わっちゃったね。次の10年はどんな風に過ごしたいですか?」


グーにした手をマイクに見立てて、清彦の口元に差し出す。


「えっほん。まあ、あれだね。これまで培ってきた経験と知識を生かして……あれ、ほら、正直……彼女ほしいかな」


「なんだそりゃ。良いこと言いそうって思ったのにー」


「悪い、悪い。良いこと思い付かなかったわー。ははは」


見た目はいいし、しょっちゅう合コン行って、モテてるらしいけど、性格が少しアレなところが……長続きしない原因だよな。


「清彦って、残念なところあるよね」


「なんだって?もう一回言ってみろ!」


お腹をくすぐられる。


「あひゃひゃひゃ、やめてよ!ひどい!やめてってば!」


ゲラゲラ笑い転げて、頭をキッチンにぶつけた。


「いてっ!」

「あ。ごめん」


ぶつけたところを撫でてくれる。


付き合ってれば、これからキスとかするんだろうな。


でも、私たちにそんな空気は起きない。


だって、もう男女の関係は終わってるんだもん。


こうして、友達のバースデーパーティーをしてるだけだもん。




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