表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あうん  作者: あおあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/21

17,☆怪我って……どういうこと?

寝たのが遅かったのもあって、起きたら昼近かった。


溜まっていた洗濯物を片付けつつ、身支度を整える。


散歩にでも行こう……家で燻っていても体に悪いから……ちょっと歩いて気分転換しよう……


水筒を持ってよく来る公園に足を運んだ。


犬の散歩をしている人がいる。


「福ちゃん元気かな」


清彦のところの老犬を思い出す。


「あら、亜子ちゃん?」


声の方を見たら、清彦のお母さんがいた。


「おばちゃん、お久しぶりです」


福ちゃんは私よりも芝をくんくんするのに夢中のようだ。


「亜子ちゃん、元気してた?ずいぶん会わないうちに綺麗なお姉さんになって……ご結婚はされたの?」


「いいえ」


「うちのなんて体ばっかりでかくて、むさ苦しいかも知れないけど、けっこういいところもあるのよ?亜子ちゃん、いい人がいなければ、どう?」


「どう……って言われても……」


「まあ、仕事熱心なのは良いことだと思うけど、事故や怪我の危険が多い職種だものね。今も足を怪我して入院してるけど、心配は要らないのよ。動けないってだけでピンピンしてるんだから」


愉快な話をしている風に、おばちゃんは衝撃的なことを言った。


「入院ですか?」


「そうなのよ。派遣先の最終日に、単独行動なんてして、あの子はいくつになっても抜けてるところがあるのよねぇ」


頭が真っ白になる。


「どこですか?清彦はどこに入院してるんですか?」


「亜子ちゃん?大丈夫よ、本当に大したことはないの。ただの怪我なのよ……あ、ちょっと……そっちは駄目よ!」


福ちゃんがリールを引っ張って、別の犬に突進していく。


「ごめんね、亜子ちゃん、またね」


清彦のお母さんは行ってしまった。


『大したことない人』は入院なんてしないでしょう?


私に連絡もくれてないし、何があったのか気になって仕方がない。


スマホを取り出し、田浦くんに電話を掛ける。


「亜子さん?」


弾むような田浦くんの声が聞こえた。


「あの……聞きたいことがあって……」


勢いで掛けてしまったけど、言葉を準備していなかった。


「今どこ?」


公園を告げた。


「20分待ってて」


そう言われて電話が切れ、本当に20分後、田浦くんが来た。




「亜子さん!」


ランニングシャツにハーフパンツで、マラソンランナーのような格好だ。


滴る汗が似合う、爽やかな好青年。


「お待たせしてすみません。亜子さんから連絡もらえるって思ってなかったんで、嬉しかった」


自動販売機で買った麦茶を渡す。


「電話でもよかったんだけど……あのね……清彦が、怪我……したって聞いて……」


田浦くんが一旦開けたキャップを締め直した。


「ああ。女の子を助けようとして、瓦礫の下に挟まった」


心臓がぎゅっとなる。


「膝を怪我して、絶対安静って言うか、早く治すために動かないように言われている。ごめんね、昨日、言おうか迷ったんだけど」


「あ……うん……いいんだけど。中途半端に聞いたから……気になっちゃって……」


「そりゃそうだよね」


田浦くんがペットボトルの半分を一気に飲んだ。


「二人が仲がいいって知ってて、あえて黙っちゃったんだ。俺の嫉妬みたいなもん。みっともないよな」


「そんな……」


「気になる?見舞いに行きたい?」


気になる。お見舞いに行きたい。


「連れてってあげようか?俺も付いて行っていい?」


「え?いいの?」


「言っとくけど、俺、亜子さんのこと譲る気ないから」


私の目を射貫くように見つめられ、真剣な顔で言われてしまった。






田浦くんが運転してくれて、隣県の大きな総合病院にやって来た。


「面会は30分が上限だって」


消毒の匂いが充満している病棟を進む。


「真壁さん、開けます」


田浦くんが言って、引き戸を開け、私を促してくれる。


「先行って」

「うん」


カーテンが揺れる個室で、清彦はぼうっと窓の外を見ていたようだった。


「大丈夫?」


私の声に反応して、驚いたようにこっちを見る。


「来てくれたのか」


清彦は目線を私の後ろに変えた。


「亜子さんがお見舞いに来たいって言うんで、お連れしました」


田浦くんに軽く肩を抱かれ、ベッドに歩み寄る。


「どうして連絡くれなかったの?怪我をしたなら、そう……」


「言ったら、すぐに来てくれた?」


ドキンと心臓が跳ねた。


私はどうしただろう?田浦くんに相談せずに、清彦のところに飛んできた?


清彦はふいっと顔を逸らしてしまった。


「別に大した怪我じゃない。こうして一人でサボってるだけだから、邪魔しないでくれよ」


「そんな言い方しないでよ。心配したんだよ?」


「真壁さん、飼い猫探してる女の子助けてこうなったんだ。任務が終わって帰ろうって時に、俺たち必死で探しましたよ」


田浦くんが少し怒っている。


「すまなかった」


清彦が田浦くんに頭を下げた。


「来てくれて助かった」


現場の空気なのだろう、ピリつく感じに耐えられない。


「俺なら絶対にしません。好きな女おいて、危険な真似なんて出来るわけない」


大きな声を出したわけでもないのに、その言葉は病室にこだまして耳に残った。


「行きましょう、亜子さん、長居はよくない」


「え?もう?」


咄嗟に清彦を見た。


目が合う。


「田浦、悪いんだけど、亜子と二人だけで話をさせてもらえないか?」


黙ってじっと私を見つめる田浦くん。


「私からもお願い」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ