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あうん  作者: あおあん


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12/16

12,★これからどうしていけばいいんだ

高校の卒業式間近、俺は当時よくつるんでいた優斗に亜子を紹介して欲しいと言われた。


夏休みが明けて以来、亜子とは話し辛くなっていたから、『きっかけ』くらいにしか考えず、気軽な気持ちで引き受けた。


「亜子、ちょっといいか?」


目的があるせいか、普通に話しかけられた。


「なあに?」


思いの外、亜子も普通だった。


「ちょっと一緒に来て欲しいんだけど」


そう言って、校舎の裏に連れ出した。


そこには優斗が待っていて、亜子を置いて帰るつもりだった。


「あ、あの。卒業したら一緒に出掛けませんか?」


聞くつもりじゃなかったけど、優斗の声が聞こえてしまった。


亜子がどう返事するのか気になって、俺は背中を向けたまま足が止まっていた。


「いいけど」


そう聞こえて、俺は走り出した。


その時になって、なんて馬鹿なことをしたんだと後悔した。


俺は、てっきり亜子は断わるものだと思い込んでいて、まさか……




車を停めて、ハンドルに突っ伏す。


「亜子のやつ……」


告白されたら誰でもいいのかよ。


すぐに流されやがって、自分の気持ちはどこやったんだよ。


あの時と同じだ……


俺はいつも後になって気付く。


亜子が取られて初めて、後悔する。


「どうせ好きでもないくせに」


見てれば分かる。


あいつは彼氏といる時より、彼氏を俺に紹介している時の方が生き生きしている。


歴代の彼氏たちには申し訳ないが、俺は亜子を一時的に預けることはあっても、本当の意味でくれてやったりはしない。


亜子は俺のだ。


「くっそ。なんでこうなる」


怒りに任せて乱暴にドアを閉め、部屋に上がる。


ポケットに入っているものを棚に放り出す。


「ん?」


スマホが点滅していた。


反射的に暗証番号を解除する。


『亜子さん、無事に届けられましたか?』


田浦からだ。


『問題ない。俺は今帰った』


今なら、田浦が亜子を残して行くのを嫌がっていた理由が分かる。


こうして一緒にいないか確認しているのだろう。


早く取り戻さないと。


俺は焦っている。


亜子に気持ちを打ち明けてしまったから、これまでのように『友人面』して相談に乗ることが出来なくなった。


亜子と田浦の様子を確認できないのは危険だ。




俺はシャワーを浴びて、腕立てを始めた。


思考を整理するのには、筋トレが一番だ。


亜子をビビらせてはいけない……俺のみっともない姿を見せてもいけない……田浦を出し抜くような卑怯な真似も駄目だ……告白を撤回する気はない……これまでのツケが回ってきたんだ……ここが頑張り時なんだ……


何百回やったか分からない。


結局、答えは導き出せないまま、腕の限界が先に来た。






消防署の勤務は8:30から24時間だ。


「おはようございます、真壁さん」

「おはよう、田浦」


5名で編成しているレスキュー隊で俺は隊長をやっている。


田浦は副隊長で、林と水島、それと新婚の中村が隊員として所属している。


「揃ったらミーティングだ」


朝は揃って、昨日の隊からの引継ぎを行う。


中村以外、昨日は海にいたわけだが……誰も浮かれた表情などしていない。


オレンジのユニフォームを着て、消防車の前に立てば、自ずと気が引き締まる。


「管轄の区域では大きな火災等の発生はありませんでした。ただ、連日テレビで報道されている隣県の山火事の救助要請があるかも知れないとのことです」


そう、昨日の隊から報告を受けた。


「分かりました。進展があればお知らせします」


隊長になって1年ちょっとだが、隊を率いて遠征に行ったことは無い。


チームワークはいいし、問題はないはずだが……田浦を意識しないでいられるか、心に引っかかるものがある。


「田浦、ちょっといいか?」


聞いてしまうのが早いだろう。


「昨日、亜子から聞いたんだが……」


少し驚いたような顔をして、田浦が俺を見ている。


「あ、はい。お陰様で」


後頭部に手を当て、照れている様子から、こいつも亜子に惚れているのだと分かった。


「仕事に私情を挟むつもりはないが、亜子と俺は家族みたいなものだから、何かあったら言ってくれ」


こんなことを言いたいんじゃないのに、勝手に口をついて出た。


「ありがとうございます。実は、俺、ちょっと心配してて……亜子さんは真壁さんが好きなんじゃないかって……」


そうであって欲しいよ。


「亜子はああ見えて、気持ちが淡白なところがあるから、冷たくされても気にすんな」


願っているわけじゃないが、俺の勘だと、田浦もそう長くは続かないだろう。


亜子は自覚はないだろうが、恋愛のテンションが上がって行かない。


最初がピークで、後は惰性で持っているようなところがある。


だから、今回もきっとそうなる。


(みっともないな……)


こんなことを考えてるなんて亜子に知れたら嫌われるだろう。


相談に乗ってるふりをして、その実、フラれるのを待ってる男なんて最低だ。


友達としても、男としても。




救急出動のサイレンが鳴った。


放送で住所が告げられている間に、出動準備を整える。


初動は条件反射で身に付いている。


亜子のことは考えるな。


今は救助の時間だ。


「隊長、行けます!」


防火衣を纏い、全員が揃ったことを確認して出動した。





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