表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あうん  作者: あおあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

11,☆それぞれの告白が……

「……こ、……亜子」


とても気持ちよかったのに、まどろみを邪魔される。


「着いたぞ。立てるか?」


無茶言わないで。立てる気なんてさらさらしない。


「抱っこして連れてってやろうか?」


……!

慌てて跳び起きる。


「大丈夫です」


車には清彦しかいなかった。

いつの間にか寝ちゃってたみたい。


「疲れただろ?持ってやるよ」


鞄を持って玄関まで送ってくれた。


「あのさ、亜子……」

「ん?」


体が重たくて、靴を脱ぐのすらだるい。


「ちょっと上がってっていい?」


許可なんかなくたって、もう靴脱いじゃってるじゃん。

返事を待たずに、清彦が上がり込んできた。


「はい。どーぞ」


冷蔵庫に入ってる炭酸水を清彦に渡した。


プシュッ


自分のを開けて口を付ける。


この弾けるスッキリ感を欲していた。


「どうしたの?何か話があるの?」


どことなく不機嫌そうな清彦に恐る恐る聞いてみる。


「もうこういうのいいや」


「こういうの?」


「合コンみたいなの。30にもなって、後輩とビーチとか疲れるだろ」


同感。


「だね。久しぶりで私も浮かれちゃってたけど、もういいね」


冷凍庫からアイスを持って来た。


ダイエットも今日で晴れて終了。


「おひとつどーぞ」

「どうも」


にっこり笑って、アイスで乾杯。


「清彦、あのさ……」


言っとくべきだよね?


今、言わなかったら逆に言いにくくなるし、田浦くんの口から聞いちゃったとか、私が一番の友達なんだからそれはあり得ない。


「私、田浦くんに告白されたの」


固まった清彦は、マンガみたいにアイスを落っことした。


拾ってあげる。


「で?」


清彦の顔が強張っていて、どういうわけか真っ直ぐ見られない。

こんなにドキドキしてるけど、何に対してなんだろう……


「なんて返事したんだよ?」


受け取ってくれないアイスを清彦の前に置いた。


「うん……って言った……」


大きく見開かれた目で睨まれる。

すごく怖くて、泣きたくなった。


「オッケーしたのか?付き合うのかよ?」


どうしたんだろう。

これまでずっと応援してくれたのに、今日だけいつもと違う。

ドキドキし過すぎて、気分が悪くなりそう。


「田浦くんのこと嫌いなの?」


「んなわけねーだろ」


「じゃ、どうして怒ってるの?」


清彦は一瞬だけ黙った。

その沈黙は、怒鳴られるよりこたえる。


「別に怒ってねーよ」


これまでだって彼氏が出来ると、その都度、清彦を紹介してきた。


だって清彦は『弟枠』みたいな感じで、家族って言えなくないくらい、親しい友人だもん。


隠す方が変じゃん。


ずっとなんでも話してきたじゃん。


「清彦は?香保里ちゃん?まーちゃん?」


「なんだよそれ」


清彦の声はいつもより低くて、震えていた。

もう、完全に怒ってる……怖いんだってば……


「まーちゃんに言い寄られてたね。いい子だよ。あまり気を持たせるようなことしないでね」


「お前に言われたくねーよ」


「どういうこと?」


なぜか少しカチンときた。


「本当に好きなのかよ、田浦のこと。この前、フラれた時だって『そんな好きじゃなかった』みたいなこと言ってただろ。男の気持ち弄んでんの亜子の方だろ!」


ズキン。

一番言われたくないことを言われた気分。


「そんなつもりないもん!私は清彦より一人の人と長く付き合って来たし、とっかえひっかえみたいなあんたと一緒にしないでよ!」


言い過ぎたとは思った。

でも引っ込められない放たれた言葉。


「あーそれね。今日香保里ちゃんが気付かせてくれたんだよ。どうして続かないのか……」


下を向いて手で顔を覆っている清彦の表情が見えない。


「香保里ちゃんが?なんて……」


聞いちゃいけないこと?

でも気になるから。


「お前のことが好き過ぎるんだってよ」




清彦が……?




私を……?




『ふぅ』と溜め息をついて、清彦が立ち上がった。


「帰るわ」


私は動けなかった。


それからずっと、


アイスが溶けきるまで、


その場に座ったままだった。




こんなはずじゃなかったよね?


私にも清彦にもいい恋が……よいパートナーが出来て、お互いその報告をし合うような、そんな風になるはずだったのに。


田浦くんはいい人そうだし、香保里ちゃんやまーちゃんもいい子だし、私と清彦の関係なんて、もうとっくに終わってると思ってたのに。


清彦が私を好き過ぎる?


そんなのって変だ。


普通、好きな人の恋を応援なんてしないでしょ?


彼氏を紹介されたら、嫌だって怒るもんじゃないの?




少し寒いくらいの温いお湯を張ったお風呂につかる。


顔や肩、太ももから下の脚、日焼けしたところがヒリヒリと痛い。


そっと撫でながら、清彦との会話を思い出す。


今日のことを、ゆっくりと順になぞっていく。


何度も見た映画みたいに同じ映像と台詞が繰り返されるけど、新しい発見はなかった。


私は新しい彼氏を手にし、同時に親しい友人を失った。






一旦冷ました体は、お風呂から出ると再びヒリヒリと熱を放った。


乳液を塗りながら、洗濯物を取り出す。


砂が床に落ちて、足の裏にくっ付いた。


「あ。清彦のラッシュガード」


……分からなくなる。


好きな子の水着姿は見たいもんなんじゃないの?


どうしてこれを着ろって言ったの?


どうして私と田浦くんを二人にしたの?


どうして清彦はまーちゃんと海に入ったの?


どうして……


どうして……


私のこと好きならどうして……


今日のことも、これまでのことも全部分からない。


あれはなんだったの?


どうして清彦は誕生日に家に来たの?


私の誕生日を祝いに来てくれたの?


友達じゃなかったの?


手にしていたラッシュガードに顔を埋めた。


安心する匂い。親友の、家族のような大切な人のほっとする匂い。


恋人じゃいられなくなってからも、大事に守ってきた関係だったのに。


壊れて欲しくないから……壊さないようにしてきたのに……


「清彦のバカ」


涙が溢れる。


同じ気持ちでいてくれるって思ってたのに……


「なんで、壊しちゃったのよぉ」


熱い水滴を布が吸い取っていく。


上手く息ができなくて、苦しかった。


私は胸をひっくひっくさせながら清彦の匂いを吸い込む。


なんども、


なんども、


清彦の名前を呼びながら。


静まり返った部屋に、私の嗚咽が響き渡った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ