Almost
同じ時間。
同じ枠。
でも。
空気が違う。
《待機》
《来た》
《今日も楽しみ》
始まる前から、人がいる。
ヒカリが、それを見る。
「……すごいね」
「……増えた」
ユイが言う。
視界の端。
フォロワー。
**8,920**
少し前までは、遠かった数字。
今は、見える位置にある。
「あと、ちょっとだね」
「……うん」
短いやり取り。
でも。
少しだけ、緊張が混ざる。
配信が始まる。
「こんばんは」
《こんばんは》
《きた》
《待ってた》
反応が早い。
視聴者数。
**900 → 1,100 → 1,300**
伸び方が違う。
ヒカリは、それを見て。
少しだけ笑う。
「なんかさ」
「ほんとに、近くなってきたね」
「……うん」
ユイも、画面を見る。
流れるコメント。
速い。
でも。
その中に。
見慣れない流れが、混ざる。
《この前の切り抜きから来た》
《ダンスのやつ見た》
《ユイの声好き》
外から来ている。
明らかに。
広がっている。
ヒカリは、それを見て。
少しだけ、安心する。
でも。
同時に。
ほんの少しだけ。
引っかかる。
《あれ?この前言ってたキャラってさ》
流れる。
一瞬だけ。
ヒカリの視線が止まる。
でも。
すぐに、流れる。
別のコメントに埋もれる。
「次なにやる?」
ヒカリが言う。
いつも通りに。
「……ダンスでもいい」
「いいね」
軽く答える。
流れは、止まらない。
配信は、順調。
数字も、伸びている。
何も問題ない。
そう見える。
でも。
ほんの少しだけ。
空気の奥に。
違うものが、混ざり始めていた。




