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配信が始まる。
「こんばんは」
《こんばんは》
《来た》
《マシュマロ回!》
いつもより、少しだけ期待が混ざった空気。
視聴者数。
**320 → 410 → 520**
早い。
明らかに、いつもより。
「今日はマシュマロ読むよ」
《きた》
《待ってた》
《送った》
ヒカリが、少しだけ笑う。
「いっぱい来てるね」
「……多い」
ユイが、短く言う。
画面には、並ぶ質問。
ヒカリが、一つ開く。
「じゃあいくね」
「“学生ですか?”」
「学生です」
ヒカリが答える。
「高校生」
少しだけ、笑う。
「ユイも?」
「……うん」
「高校生」
《まじか》
《若い》
《高校生なの!?》
コメントが少しざわつく。
ヒカリが、軽く流す。
「そんな感じです」
「次いくね」
ヒカリが、次を開く。
「“好きなキャラクターとかありますか?”」
「ある?」
「……ある」
少しだけ、間。
「ルベベ」
「え、かわいいやつ?」
「……うん」
《まじで》
《意外》
《そういうの好きなんだ》
コメントが少しざわつく。
ユイは、そのまま続ける。
「……最近」
「緑、出た」
「緑?」
「……レア」
《え、それもしかして地方限定のやつじゃない?》
一瞬。
ヒカリが、画面を見る。
「そうなの?」
「……わかんない」
ユイが、少しだけ首をかしげる。
「でも、あんまり見ない」
「いいじゃん」
「……ピンクもある」
「え、セットじゃん」
「……つけてる」
「どこに?」
「……カバン」
《かわいい》
《ガチ勢じゃん》
《集めてるんだ》
コメントが流れる。
ヒカリが、少し楽しそうに言う。
「いいね」
「今度見せてよ」
「……うん」
ヒカリが、次を開く。
配信は、順調に進んでいく。
視聴者数。
**580 → 640 → 720**
伸びている。
フォロワーも、増えている。
でも。
少しずつ。
質問の偏りが出てくる。
「……あれ」
ヒカリが、小さく言う。
「ユイ多くない?」
「……かも」
《ユイの方気になる》
《もっと知りたい》
《なんか謎多い》
コメントも、同じ流れ。
ヒカリが、少しだけ笑う。
「ひどーい」
《ごめんw》
《ヒカリは解釈一致なんだよな》
《安心するタイプ》
一瞬。
ヒカリが、少しだけ止まる。
それから。
笑う。
「解釈一致ってなにそれ」
軽く言う。
でも。
すぐに、続ける。
「でも」
少しだけ、間を置いて。
「ユイのこと、みんなに知ってもらえるのは嬉しい」
まっすぐ言う。
ユイが、少しだけ視線を向ける。
何も言わない。
でも。
少しだけ、柔らかくなる。
「最後いくね」
ヒカリが、マシュマロを開く。
一瞬、止まる。
「“二人でダンスとかやらないんですか?”」
《きた》
《見たい》
《やってほしい》
コメントが、一気に流れる。
ヒカリが、少しだけ笑う。
「ダンスかあ」
横を見る。
ユイが、すぐに答える。
「……いいね」
短く。
迷いなく。
ヒカリが、少しだけ止まる。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
考える。
「……うん」
笑って、答える。
「やってみよっか」
《きた》
《楽しみ》
《神回確定》
盛り上がるコメント。
ヒカリも、笑っている。
いつも通りに見える。
でも。
ほんの少しだけ。
その返事は、遅かった。
コハクが、二人を見る。
静かに。
その目が、少しだけ揺れる。
何かを、知っているみたいに。




