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Spark

「よーし!昨日の続き、やってくよー!」


電脳世界にログインした瞬間、ヒカリの明るい声が響いた。


「……ヒカリ、大丈夫だった?」


「ん?急に落ちた!びっくりしたけど、もう平気!」


くるっと一回転するヒカリに、ユイは小さく息をつく。


現実に戻されたことを、ヒカリは覚えていない。


「それよりさ、昨日のあれ何だったんだろうね!」


「……通信障害、かな」


「レアじゃない?ちょっとテンション上がったんだけど」


「……そうだね」


ユイは曖昧に笑う。


言えなかった。


“あのあと”のことを。


「じゃあ配信つけるね!」


配信開始。


視聴者数――4。


《こんちゃ》

《昨日のやつ大丈夫だった?》

《途中で切れてびびった》


「ねー!急に落ちたんだよね!」


ヒカリはいつも通り明るく返す。


その隣で、ユイはそっと後ろを見る。


白い狐が、静かに座っていた。


昨日より、ほんの少しだけ元気そうに見える。


「……(どうしよう)」


ヒカリは、まだ気づいていない。


「ユイ?なんかあった?」


「え、あ……なんでもない」


とっさに笑ってごまかす。


狐はじっと、ヒカリの方を見ている。


その視線は、ただの動物にしては少しだけ“強すぎる”気がした。


「じゃあ今日は雑談ねー」


ヒカリが軽く手を振る。


狐が、その動きをじっと見る。


そして――


ほんの少し遅れて。


同じように、前足を上げた。


「……っ」


ユイの心臓が跳ねる。


《今の見た?》

《真似した?》

《かわいい》


コメントは、まだ穏やかだ。


ただの“芸ができる動物”として受け取られている。


「え、なにそれ!すご!」


ヒカリが笑う。


「ユイ、これ飼っていい!?」


「え、えっと……いいんじゃない、かな」


流れでそう答えてしまう。


狐は、またヒカリを見る。


ヒカリが笑う。


狐が、ほんの少しだけ口を開く。


まるで、同じように笑おうとしているみたいに。


「え、かわいすぎない?」


《賢くね?》

《ペット枠でいける》

《名前つけよ》


視聴者数は、7。


ほんの少し増えただけ。


それでも、ヒカリは楽しそうに笑う。


「じゃあさ、名前決めよっか!」


その言葉に。


狐は、ぴくりと耳を動かした。


ユイは、ただ黙ってそれを見つめる。


この存在は、本当に“それだけ”でいいのか。


そんな疑問が、頭をよぎる。


けれど。


「よし、今日は名前会議だー!」


ヒカリの明るい声が、それをかき消した。


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