Flow
同じ時間。
同じ曜日。
同じ枠。
なのに。
前より、少しだけ違う。
《待機》
《来た》
《今日もこの時間》
《助かる》
始まる前から、人がいる。
ヒカリが、それを見る。
「……増えてる」
「うん」
ユイが、短く答える。
視界の端。
フォロワー。
**4,980**
もうすぐ、5000。
少し前までは、遠かった数字。
今は、手が届きそうな位置にある。
ヒカリが、小さく息を吐く。
「いくよ」
「うん」
配信が、始まる。
「こんばんは」
《こんばんは》
《待ってた》
《この流れ好き》
反応が早い。
視聴者数。
**120 → 180 → 240**
増えるのが、前より滑らかだ。
ヒカリは、それを見て。
すぐに、前を見る。
「今日は、歌からいきます」
言い切る。
迷いなく。
歌う。
声が、空間に馴染む。
前よりも。
少しだけ、自然に。
無理に響かせなくても、届く感覚。
コメントが、静かに流れる。
《やっぱ好き》
《安心する》
《この入りいいな》
終わる。
一瞬の間。
「ありがとう」
ヒカリが、笑う。
すぐに、次へ。
「ユイ、お願い」
「……うん」
ユイが前に出る。
動きが、迷わない。
前よりも、少しだけ柔らかい。
戦闘が始まる。
音。
テンポ。
ヒカリの歌の余韻と、自然につながる。
《流れいい》
《ずっと見てられる》
《これ強い》
視聴者数。
**300 → 380 → 420**
伸びている。
ヒカリは、それを横目で見る。
少しだけ、笑う。
狙ったわけじゃない。
でも。
形になってきている。
コハクが、間に入る。
いつも通り。
でも。
ヒカリは、少しだけ見る。
尻尾。
二本。
揺れている。
昨日と同じ。
でも。
昨日より、少しだけ自然に見える。
《狐かわいい》
《尻尾増えてるの好き》
《もうこれが普通になってきた》
コメントが、受け入れている。
ヒカリは、少しだけ安心する。
「ね、ユイ」
「ん」
「なんか、やりやすくない?」
ユイが、少しだけ考える。
「……前より」
「だよね」
ヒカリが笑う。
空気が、整っている。
無理に作らなくても、流れる。
それが、分かる。
視聴者が、いる。
待っている。
見ている。
それでも。
苦しくない。
むしろ。
少しだけ、心地いい。
ヒカリは、前を見る。
この場所。
この時間。
この空気。
全部が、繋がっている。
「……いけるかも」
小さく呟く。
ユイは、何も言わない。
でも。
少しだけ、頷いた。




