Routine
200pv突破しました!みなさまありがとうございます!
来週引越し予定でして、更新が止まってしまうかもしれません… その分どこかで投稿しますのでもうしばらくお付き合いください!
配信開始の時間。
少し前。
ヒカリが、画面を見ている。
まだ、始まっていない枠。
それなのに。
すでに、いくつかのコメントが流れている。
《待機》
《今日は歌から?》
《来た》
《この時間助かる》
ヒカリが、少しだけ笑う。
「……来てる」
「早いね」
ユイが、横から言う。
「うん」
前よりも、明らかに早い。
曜日を決めた。
時間も、固定した。
それだけなのに。
人が“待っている”のが分かる。
ヒカリは、少しだけ深呼吸する。
視界の端に、数字が出る。
フォロワー。
**4,280**
昨日より、増えている。
確実に。
でも。
まだ、一万には遠い。
「……いくよ」
ヒカリが言う。
ユイが、小さく頷く。
配信が、始まる。
視界が開く。
空間が、色づく。
「こんばんは」
ヒカリが、いつもより少しだけはっきり言う。
《きた》
《こんばんは》
《待ってた》
コメントが、すぐに返ってくる。
視聴者数。
**86 → 112 → 150**
ゆっくりじゃない。
でも、爆発でもない。
確実に、増えていく。
ヒカリは、一瞬だけその数字を見る。
それから。
すぐに、前を見る。
「今日は、最初に歌からやります」
少しだけ、言い方を変える。
分かりやすく。
初めて来た人にも。
《助かる》
《わかりやすい》
《歌きた》
反応が、すぐに返る。
ヒカリが、息を整える。
少しだけ、目を閉じる。
開く。
歌う。
声が、空間に広がる。
昨日より。
少しだけ、意識している。
誰かに届くように。
ちゃんと、届くように。
コメントが、少しゆっくりになる。
聞いている。
その空気が、分かる。
視聴者数が、また増える。
**180 → 230**
ヒカリは、それを見ない。
見ないで、歌う。
曲が終わる。
一瞬の静けさ。
《よかった》
《うま》
《やっぱこれだわ》
《初見だけど好き》
ヒカリが、少しだけ笑う。
「ありがとう」
短く返す。
「じゃあ、次」
少しだけ、間を置いて。
「ユイ、お願い」
「……うん」
ユイが前に出る。
動きが、無駄なく整っている。
昨日より、少しだけ自然。
戦闘が始まる。
乾いた音。
正確な動き。
コメントの流れが、また変わる。
《うま》
《これこれ》
《歌→FPSいいな》
《流れ好き》
視聴者数。
**260 → 310**
増えている。
ヒカリが、少しだけそれを見る。
それから。
コハクを見る。
いつも通り。
間にいる。
少しだけ、動く。
自然に。
《狐きた》
《かわいい》
《この子なんなんだろ》
コメントが流れる。
その中に。
《あれ》
短い文字。
《尻尾増えてない?》
一瞬。
ヒカリが、動きを止める。
「……え?」
思わず、コハクを見る。
金色の目。
小さな体。
そして。
揺れる、尻尾。
「……あれ?」
ヒカリが、首をかしげる。
「前、何本だっけ」
ユイが、ちらっと見る。
「……」
少しだけ、間。
「……増えてるかも」
ぼそっと言う。
《やっぱり?》
《前一本じゃなかった?》
《二本になってる》
《進化?》
コメントがざわつく。
コハクは。
何も変わらない顔で。
ただ、そこにいる。
ヒカリが、少しだけ笑う。
「……気のせいじゃない?」
軽く言う。
でも。
完全には、流しきれていない。
ユイも、何も言わない。
ただ。
少しだけ、視線を残す。
すぐに、プレイに戻る。
流れは、止まらない。
配信は、そのまま続く。
視聴者数は、ゆっくり増え続ける。
フォロワーも、少しずつ伸びていく。
でも。
ヒカリの中に、少しだけ残る。
さっきの違和感。
コハクの尻尾。
何も変わっていないはずなのに。
少しだけ、違う。
その小さなズレを。
まだ、言葉にしないまま。
配信は、進んでいった。




