Session
「じゃあ、軽くやろっか」
落ち着いた声。
力が入っていないのに、自然と場を引っ張る。
「え、もうですか?」
ヒカリが少し笑う。
「うん。せっかくだし」
その人物は、そう言って。
何もない空間に手を伸ばす。
次の瞬間。
ギターが、そこにあった。
《出た》
《はや》
《準備えぐ》
《これ見るやつ》
ヒカリが、少しだけ目を丸くする。
「え、ギター弾けるんですか」
「まあ、ちょっとね」
軽い言い方。
でも。
その“ちょっと”じゃないのは、なんとなく分かる。
「ヒカリちゃん、さっきの歌いける?」
「……あ、はい」
「じゃあ、合わせるね」
ギターの音が、空間に広がる。
――やわらかい音。
でも、芯がある。
ヒカリの声が、自然と重なる。
短いフレーズ。
それだけなのに。
完成している。
《うま》
《完成度えぐ》
《やば》
「いいね」
軽く鳴らしながら言う。
ヒカリが、少し照れる。
「で」
「ユイちゃんだよね」
視線が移る。
「……はい」
「やる?」
短い一言。
ユイは、少しだけ頷く。
「このマップでいい?」
見慣れたフィールドが展開される。
ユイの得意なルール。
ヒカリがそれに気づく。
「あ、これいつもやってるやつだよね」
「うん」
ユイが短く答える。
「じゃあ、それで」
――マッチング開始。
小さく、カウントが動き出す。
《きた》
《デュオ》
《ガチ》
《楽しみすぎ》
「普段どれくらいやってるの?」
レイが、何気なく聞く。
「結構やってます」
「ランクは?」
「このルールだと、上の方です」
少しだけ、間。
「いいね」
それだけ。
でも、ちゃんと見ている感じがする。
「ヒカリちゃんは?」
「私は……応援係です」
ヒカリが笑う。
「それも大事」
軽く返す。
自然な会話。
でも。
どこか無駄がない。
――マッチング完了。
空気が、切り替わる。
開始。
ユイが動く。
速い。
無駄がない。
撃つ。
一人。
すぐにカバーが入る。
レイ。
位置がいい。
詰めが正確。
もう一人。
「ナイス」
自然に言葉が重なる。
そのまま。
流れる。
連携しているわけじゃない。
でも。
ズレない。
ユイが前に出る。
レイが支える。
逆もある。
《強》
《うますぎ》
《完成してる》
《やばい》
終盤。
人数有利。
詰める。
撃つ。
――チャンピオン。
「……はや」
ヒカリが笑う。
「さすがに強いね」
レイが、軽く武器を下ろす。
「このルール、あんまりやらないんだよね」
「え?」
ヒカリが反応する。
ユイも、少しだけ視線を向ける。
「そうなんですか?」
「うん。普段は“ヴァレイド”の方かな」
少しだけ間を置いて。
「そっちだとダイヤくらい」
一瞬、沈黙。
《は?》
《納得した》
《やばい人だった》
ヒカリが笑う。
「それは強いわけだ……」
ユイは、何も言わない。
でも。
その目は、少しだけ鋭い。
“上だ”。
はっきりと分かる。
「改めて」
レイが言う。
「夜咲レイ。よろしく」
ヒカリが笑う。
「ヒカリです」
ユイも短く。
「ユイです」
コハクが、少しだけ前に出る。
距離は、もう遠くない。
同じ場所で。
同じ強さを感じていた。




