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『今、時間ある?』
その一文は、まだ視界に残っている。
「……どうやって行くんだろ」
ヒカリが、少し楽しそうに言う。
「たぶん、そのまま」
ユイが答える。
ヒカリは、もう一度表示を見る。
少しだけ指を止めて。
それから、触れる。
――視界が、軽く揺れる。
一瞬だけ、音が遠くなる。
コメントの流れも、少し遅れて見える。
次の瞬間。
空間が、切り替わる。
「おお……」
ヒカリが、小さく声を漏らす。
さっきまでいた場所と、似ている。
でも、少し違う。
光の感じも。
音の広がりも。
「ここ……」
「向こうの場所だね」
ユイが言う。
コメントも、そのままついてきている。
《きた》
《移動した》
《やば》
《ガチじゃん》
ヒカリの視線が、前で止まる。
そこに、一人。
少し離れた場所に立っている。
目立つわけじゃないのに。
なんとなく、目に入る。
「――来たね」
落ち着いた声。
ヒカリは、少しだけ笑う。
「来ちゃいました」
思ったよりも、自然に言葉が出る。
距離は、まだ少しある。
でも。
遠い感じは、もうしない。
「急に呼んでごめん」
その人物が言う。
「全然、むしろびっくりしてます」
ヒカリが笑いながら返す。
空気が、軽くなる。
ユイは、そのやり取りを見ている。
何も言わず。
ただ、静かに。
コハクが、一歩前に出る。
その動きに、相手の視線が向く。
「……その子、いいね」
ぽつりと。
コハクが、少しだけ首を傾ける。
ヒカリが、少し誇らしそうに笑う。
「でしょ」
軽い一言。
少しだけ、距離が縮まる。
「さっきの、良かったよ」
まっすぐな言葉。
ヒカリは、一瞬だけ目を丸くして。
それから、笑う。
「ありがとうございます」
少しだけ照れくさそうに。
でも、ちゃんと嬉しそうに。
その人物は、小さく頷く。
それから。
「もしよかったら」
ほんの少しだけ間を置いて。
「一緒にやってみる?」
コメントが、一気に流れる。
《きた》
《コラボだ》
《本番》
《やばすぎ》
ヒカリは、ユイを見る。
ユイは、小さく頷く。
ヒカリは、それを見て。
前に一歩出る。
「……やりたいです」
その言葉は。
さっきより、少しだけ強かった。




