Notice
《この動画、二人のバランス良すぎ》
短いコメントと一緒に、縦長の動画が流れる。
ヒカリのワンフレーズ。
そのリズムにぴたりと合うように、ユイのキルシーンが重なる。
撃つ、倒す、切り替わる。
まるで音に合わせて編集されたみたいに、流れていく。
最後に、コハクが同じタイミングで前足を上げる。
再生数――38,502。
いいね――6,300。
《編集うますぎ》
《音ハメ気持ちいい》
《歌とFPS合うの天才》
《普通にレベル高い》
これは“切り抜き”。
実力で見せる動画。
一方で。
《この子たち可愛すぎる》
別の動画も流れている。
ヒカリが手を振る。
コハクが少し遅れて真似する。
ユイが小さく笑う。
ただそれだけ。
でも。
《癒し》
《この空気すき》
《ずっと見てられる》
こっちは“ショート”。
三人の空気をそのまま切り取ったもの。
――配信中。
「こんヒカ、こんユイ、こんコハク〜!」
ヒカリが手を振る。
コハクが少し遅れて前足を上げる。
《こんヒカ》
《ショートから来た》
《かわいいやつの人だ》
「え、ショート?」
ヒカリがコメントを見て目を丸くする。
「来てる人、増えてるね」
ユイが静かに言う。
視聴者数――173。
前回より少し多い。
でも、爆発的ではない。
「なんか、コメントの感じ違くない?」
ヒカリが少し笑う。
「……違うね」
前は。
“配信を見てる人”だった。
今は。
“流れてきた人”もいる。
《コハクかわいい》
《歌の人だよね?》
《FPSもやるの?》
バラバラだ。
でも。
それが“広がってる”ってことだった。
「いいじゃん」
ヒカリが言う。
「いろんな人来るの、楽しい」
ユイは、その言葉を聞いて少しだけ安心する。
コハクが、ヒカリを見る。
その視線は変わらない。
ただ。
ほんの少しだけ。
コメントの流れより先に、ヒカリの動きをなぞる。
「……」
ユイは、それを見る。
でも、何も言わない。
その頃。
別の画面。
同じ動画を、もう一人が見ていた。
「……へえ」
小さく、呟く。
ヒカリの歌。
ユイの動き。
そして――コハク。
「これ、ちゃんと作ってるな」
再生を、もう一度。
「……面白い」
その一言だけ。
画面の端に映る、配信者名。
まだ。
二人は知らない。
その視線が。
“次の扉”になることを。




