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Greeting

《こんヒカ》

《こんユイ》

《こんコハク》


 


コメントが、流れている。


 


配信が始まって少し。


 


ヒカリはその文字を見て、少しだけ首をかしげた。


 


「……こんヒカってなに?」


 


「……挨拶、じゃない?」


 


ユイが小さく答える。


 


 


《挨拶ないの?》

《配信者ならあった方がいい》

《定番ほしい》


 


 


「えー、そんなの必要?」


 


ヒカリが笑う。


 


でも。


 


どこか楽しそうでもあった。


 


 


「……あってもいいと思う」


 


ユイがぽつりと言う。


 


 


「お、ユイが珍しく前向き」


 


 


「別に……普通に、その方が分かりやすいし」


 


 


コメントが少し盛り上がる。


 


 


《作ろう》

《今決めよう》

《こんヒカでいいじゃん》


 


 


「こんヒカねぇ」


 


 


ヒカリが、少しだけ考える。


 


 


そのとき。


 


 


コハクが、こちらを見ている。


 


 


じっと。


 


 


 


「……あ」


 


 


ヒカリが、小さく声を漏らす。


 


 


「“こん”ってさ」


 


 


コハクを見る。


 


 


「狐の“コン”でもあるじゃん」


 


 


 


《あ》

《それはうまい》

《天才か》

《意味つながった》


 


 


 


「え、じゃあこれめっちゃ良くない?」


 


 


ヒカリのテンションが一段上がる。


 


 


「こんヒカって、“こんにちは”と“狐”両方じゃん!」


 


 


 


「……たしかに」


 


 


ユイも、少しだけ納得したようにうなずく。


 


 


 


「じゃあさ」


 


 


ヒカリが、ぱっと顔を上げる。


 


 


「“こんヒカ”でいこう!」


 


 


 


《決まり》

《こんヒカ》

《こんヒカ〜》


 


 


 


「でもさ」


 


 


ヒカリが少しだけ首をかしげる。


 


 


「ユイのも欲しくない?」


 


 


 


「……いらない」


 


 


即答だった。


 


 


 


「えー」


 


 


 


《こんユイもあるぞ》

《こんユイ》

《ユイも言え》


 


 


 


ユイは、少しだけ目を逸らす。


 


 


 


「……恥ずかしい」


 


 


 


「じゃあさ」


 


 


ヒカリが、少しだけ悪そうに笑う。


 


 


 


「まとめる?」


 


 


 


「……まとめる?」


 


 


 


「こんヒカ、こんユイ、こんコハク!」


 


 


 


少しだけ、間。


 


 


 


「……長くない?」


 


 


 


「いいじゃん、全部入ってるし!」


 


 


 


《それいい》

《全員入ってる》

《ユニット感ある》


 


 


 


ヒカリが、姿勢を正す。


 


 


 


「じゃあ、いくよ?」


 


 


 


ユイを見る。


 


 


 


「……」


 


 


 


少しだけ迷って。


 


 


 


小さく、うなずく。


 


 


 


「……うん」


 


 


 


「せーの!」


 


 


 


「こんヒカ、こんユイ、こんコハク〜!」


 


 


 


コメントが、一斉に流れる。


 


 


《こんヒカこんユイこんコハク!》

《長いけどいい》

《これ定着しそう》


 


 


 


ヒカリが笑う。


 


 


 


コハクが、ほんの少し遅れて前足を上げる。


 


 


 


「ほら、コハクも言ってる」


 


 


 


《言ってる(言ってない)》

《理解してる》

《かわいい》


 


 


 


ユイは、その光景を見て。


 


 


 


少しだけ、笑った。


 


 


 


「……悪くないかも」


 


 


 


「でしょ?」


 


 


 


ヒカリが満足そうにうなずく。


 


 


 


「じゃあ決まりね!」


 


 


 


「最初はこれでいく」


 


 


 


「こんヒカ、こんユイ、こんコハク〜!」


 


 


 


「で、終わりは」


 


 


 


少しだけ、声を柔らかくする。


 


 


 


「また配信で会おうね」


 


 


 


 


その言葉が、少しだけ残る。


 


 


 


ユイは、何も言わなかった。


 


 


 


でも。


 


 


 


その“また”が、少しだけ――


 


 


重く感じた気がした。


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