エミリの初出張から帰って
エミリが出張から戻ったのは、九月の終わりだった。
戻った翌日、SOLITAIREに来た。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい」
エミリは窓際の席に座った。コーヒーが来た。
一口飲んで、「ただいまの気がします」と言った。
「出張、どうでしたか」
「大変でした。でも、楽しかった。王都の外には、王都とは全然違う商売の仕方があって、全部が新しかった」
「何が一番印象に残りましたか」
「取引先の商人のおじいさんが、交渉の合間に言ったことです。良い商売は、売ることじゃなくて、また来てもらうことだ、と」
「どう思いましたか」
「ここと同じだと思いました。カインさんはコーヒーを売っているんじゃなくて、また来てもらえる場所を作っている。そのおじいさんも、同じことを言っていた」
「その方は、良い商人ですね」
「会わせたかったです、カインさんに。きっと気が合う」
「どうでしょう」
「気が合うと思います。二人とも、余分なことを言わないから」
エミリはコーヒーを飲んだ。
「来月もまた出張があります。今度は二週間」
「王都にいない週が増えますね」
「でも、帰ってきたらここに来ます。それが帰ってくる理由の一つになっています」
「それは嬉しいです」
「本当に嬉しいと思ってますか」
「本当に思っています」
「表情に出ていませんが、信じます。六ヶ月、見てきたので」
エミリはコーヒーを飲み干した。
扉を出る前に振り返って言った。
「ここが変わっていなくて、良かったです」
「変わりません」
「ずっと変わらないでください」
「できる限り」
扉が閉まった。




