表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王都のお一人様カフェ SOLITAIRE ソリテール  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/195

ラシードの最後のコーヒー

 ラシードの帰国まで、一週間になった。


 今日は「最後のコーヒーの稽古」だった。


 ラシードはカウンターの前に立った。


「やらせてください」

「どうぞ」


 ラシードは豆を量った。手帳を見ながら、でも手帳より自分の感覚を信じながら。


 挽いた。お湯を沸かした。ポットを温めた。


 粉をドリッパーに入れた。


 最初の一投。円を描くように、ゆっくりと注いだ。


 粉が膨らんだ。


「良い膨らみ方です」とカインが言った。


 二投目、三投目。


 カップにコーヒーが落ちていった。


 出来上がった。


 ラシードはカインに差し出した。


 カインは飲んだ。


「どうですか」とラシードが聞いた。

「良いコーヒーです。丁寧さが出ています」


 ラシードは大きく息を吐いた。


「自分でも飲んでみてください」


 ラシードは一口飲んだ。


「……王都の味、がします」

「そうですか」

「自分の国に帰っても、この味を思い出しながら淹れます。完全には再現できないかもしれないけれど」

「完全に同じでなくていいと思います。ラシード様の国で淹れると、ラシード様の国のコーヒーになります」

「それも、良いことですか」

「良いことだと思います」


 ラシードはカップを置いた。


「一つ、お礼を言わせてください。この店に来て、コーヒーを覚えました。でも、覚えたのはコーヒーだけではなかった。じっくり待つこと、丁寧にやること、違いを受け入れること。仕事にも使えることを、ここで学びました」


 カインは静かに言った。


「コーヒーから学んだのだと思います。私は豆と道具を用意しただけです」

「あなたの見せ方が、良かったのです」

「ありがとうございます」


 ラシードは手帳を閉じた。


「来年、また王都に来たとき、最初にここに来ます」

「お待ちしています」

「また同じコーヒーを飲んで、また同じカウンターに立たせてください」

「どうぞ」


 ラシードは扉を開けた。


「カイン、あなたは良い仕事をしています」


 扉が閉まった。


 遠い国に、この店のコーヒーが伝わっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ