ケントの変化
元騎士見習いのケントが来るのは、週に一度になっていた。
最初に来たときから、二ヶ月が経っていた。
今日も奥の席に座って、コーヒーを頼んだ。
最初の頃と比べると、ずいぶん変わっていた。背筋が伸びていた。注文する声が落ち着いていた。コーヒーを飲む顔が、来たときと帰るときで大きく変わらなくなっていた。
「最近どうですか」とカインが聞いた。
「先週、セラ先生に診てもらいました。眠れるようになったし、食べられるようになったと言ったら、よかったと言われました」
「それは良かったですね」
「ここに来るようになってから、眠れるようになった気がします。なぜかはわからないけど」
「わからなくていいと思います」
「そうですか」
「なぜ良くなったかより、良くなったことが大事だと思いますので」
ケントはコーヒーを飲んだ。
「一つ、相談していいですか」
「どうぞ」
「また騎士団に戻ろうか、考えています」
カインは黙って聞いた。
「辞めたのは、自分で決めたことじゃなかった。調子が悪くて、自然とそうなった。でも、今は少し動けそうな気がして」
「怖いですか、戻ることが」
「怖いです。また同じことが起きるかもしれない。仲間を失うかもしれない。でも……騎士の仕事が好きだったことも、覚えています」
カインは少し間を置いた。
「今日決めなくていいことだと思います」
「はい」
「ただ、好きだったことを覚えているなら、それは大事なことだと思います」
「好きだったことを覚えているだけで、良いですか」
「今は、それだけで十分だと思います」
ケントはカップを両手で包んだ。
「ここに来ると、少し整理できる気がします。頭じゃなくて、気持ちが」
「それは、良いことですね」
「はい。また来週来ます」
「お待ちしています」
ケントは帰った。
カインはその背中を見ながら、最初に来たときからの変化を思った。
まだ途中だった。
でも、途中であることが、今のケントには一番大切なことだった。




