新年の誓いと詩人
リュートが来たのは、新年最初の週の夜だった。
リュートを持っていた。顔が明るかった。
「連作、完成しました」
「全部ですか」
「全部。七曲。年末に最後の一曲が書けた」
「おめでとうございます」
「今月末に、小さな会場で演奏会をやろうと思っています」
「それは良いですね」
リュートはコーヒーを頼んで、席に着いた。
「宮廷の歌は評判良かったです。次の依頼も来そうです。でも、今年は連作を先に世に出したくて」
「順番を決めましたね」
「はい。あなたに言われたように」
カインはコーヒーを持ってきた。
「演奏会の前に、ここで一度弾いていいですか。最後の曲を」
「どうぞ」
リュートは弦を構えた。
最後の曲は、今まで聴いた中で一番静かな曲だった。
旋律は単純で、歌詞は少なかった。
路地の角に、小さな灯りがある。
扉を開けると、誰かがいる。
何も言わなくていい場所がある。
それだけの歌だった。
カインは曲が終わるまで、カウンターで動かなかった。
終わった後、しばらく沈黙があった。
「……これが最後の一曲ですか」とカインが言った。
「はい」
「この店のことを書いたのですか」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「前も同じことを言いましたね」
「詩人の答えです」
カインは少し間を置いてから言った。
「良い曲です。連作の最後にふさわしい」
リュートは少し照れた顔をした。
「カインさんに言われると、嬉しいな」
「なぜですか」
「あなた、あまり褒めないから」
「褒めるべきときに褒めます」
「今がそのときだと」
「はい」
リュートはコーヒーを飲んだ。
「演奏会、来てほしいんですが、お店があるから無理ですよね」
「残念ながら」
「わかってた。でも言いたかった」
「ありがとうございます」
「でも、ここで一番最初に聴いてもらえたから、それで十分です」
リュートはリュートをケースにしまった。
立ち上がりながら言った。
「今年もよろしくお願いします、カインさん」
「こちらこそ」
扉が閉まった。
カインはランプの光の中で、さっきの旋律を思い返した。
路地の角に、小さな灯りがある。
扉を開けると、誰かがいる。
それが、この店だった。




