二度目の冬の夜に
大晦日の前日、SOLITAIREは夜まで開いていた。
その夜、珍しいことが続いた。
アレンが来た。ゼファーが来た。ミレイアが来た。シルヴィアが来た。エルナが来た。クレインが来た。
六つの席が、すべて埋まった。
全員が揃ったのは、この一年で初めてのことだった。
誰も示し合わせていなかった。
でも、全員がこの夜にここへ来たかった。
カインはいつものように動いた。
コーヒーを淹れ、紅茶を出し、おかわりを置く。
エミリは今日は来ていない。今夜は家族と過ごすと言っていた。
だから今夜は、カインが一人で六人を見ていた。
店内は静かだった。
六人がそれぞれの仕切りの中で、それぞれの飲み物を飲んでいた。
しばらくして、シルヴィアが言った。
「来年も、ここはあるかな」
「あります」とカインが答えた。
「断言するんですね」
「あると思っています。できる限り」
ミレイアが言った。
「来年も来ます。試合の前後に」
アレンが言った。
「俺も」
ゼファーが言った。
「木曜に」
クレインが言った。
「昼に」
エルナが言った。
「月に二度、本を持って」
カインは六人の声を受け取った。
それから静かに言った。
「お待ちしています。全員」
誰も何も言わなかった。
でも、その言葉は、六つの仕切りの向こうに、それぞれ届いた。
しばらくして、一人ずつ立ち上がった。
代金を払って、扉を出た。
最後にエルナが出た。
扉を開けながら、振り返って言った。
「良いお年を、カインさん」
「ありがとうございます。エルナ様も」
扉が閉まった。
カインは一人になった。
椅子を上げた。床を拭いた。カップを洗った。
最後のランプを消した。
扉に鍵をかけた。
路地に出た。
師走の夜風が冷たかった。
空を見上げると、星が出ていた。
一年が終わろうとしていた。
カインは少しの間、SOLITAIREの丸窓を見た。
暗い窓だった。
でも明日、また灯りが入る。
豆を挽く音がする。
コーヒーの香りが広がる。
ベルが鳴る。
誰かが来る。
それが続く限り、ここはある。
カインは路地を歩き始めた。
住処への三本の路地を、いつものように歩いた。
今年来た人たちのことを、一人ずつ思い出した。
全員の顔が浮かんだ。
来たときの顔と、帰るときの顔。
その変化を思い出すたびに、少しだけ温かくなるものがあった。
それが何かを、カインはまだ言葉にできなかった。
でも、言葉にしなくてもいいと思っていた。
それはただ、ここにあるものだった。
部屋に着いた。
上着を脱いだ。
窓から夜の王都を見た。
どこかに、今夜ここに来た人たちが眠っている。
英雄も、剣聖も、魔術師も、暗殺者も、将軍も、王女も。
みんな、それぞれの場所で、この冬を終えようとしている。
カインは目を閉じた。
来年も、豆を挽く。
コーヒーを淹れる。
ベルが鳴る。
誰かが来る。
それで十分だった。
それが、カインの居場所という仕事だった




