師走の手紙たち
十二月の初め。
今月、二通の手紙が届いた。
一通目は、ラシードからだった。
「カインさんへ。今年も行けませんでした。申し訳ないです。来年こそ必ず行きます。あなたの店のコーヒーが再現できない理由を、ずっと考えています。最近、答えに近づいた気がします。豆でも水でも道具でもなく、淹れる人間の状態が毎日違う。気持ちが入るから、毎回少し違う。そういうことではないかと思います。違いますか。ラシード」
カインは返事を書いた。
「ラシード様へ。来年、お待ちしています。答えは、正しいと思います。気持ちが入ることが、毎回違う理由かもしれません。自分では気づいていませんでしたが、あなたに言われて、そうかもしれないと思いました。来年、会いましょう。カイン」
二通目は、カエルからだった。
「カインさんへ。今、北の山の中にいます。雪が降ってきました。地図を描きながら、手が冷えます。でも、面白い地形を見つけました。川が二本、同じ方向に流れているのに、どこかで一本になる。合流する場所が、なかなか見つかりません。あなたの店で、いろんな人が来て、どこかで繋がっていることを思いました。合流する場所が、SOLITAIREかもしれません。カエル」
カインはしばらく、その言葉を思った。
合流する場所。
返事を書いた。
「カエル様へ。合流する場所、という言葉が好きです。川が一本になるように、ここで何かが繋がることがあります。寒いところにいるのですね。温かくしてください。帰ってきたとき、コーヒーが待っています。カイン」
引き出しに二通しまった。
夜、アレンが来た。
「また手紙か」
「二通来ました」
「誰から」
「隣国の方と、旅の方から」
「遠いな」
「でも、ここのことを書いてくれていました」
「どんなことを?」
「合流する場所、という言葉がありました」
アレンはコーヒーを飲んだ。
「良い言葉だな」
「そうですね」
「俺も使っていいか、四冊目に」
「どうぞ」




