シルヴィアの四年目
十一月の半ば。
シルヴィアが来た。
今日は花ではなく、小さな箱を持ってきた。
「これ、花屋の新商品です」
箱を開けると、ハーブが入っていた。
「ドライハーブです。ラベンダーとカモミールを混ぜました。ここのハーブティーに使えるかと思って」
カインは受け取った。
香りを確かめた。
「良い香りですね」
「ドグマが乾燥の作業を手伝ってくれました。力仕事は得意だから、プレス機を使った作業が向いていて」
「そうですか」
「来週から店で売ります。でも最初にここに持ってきたかった」
「ありがとうございます。使わせてください」
シルヴィアは席に着いた。
「四年経ちました、花屋が」
「そうですね」
「最初は三ヶ月続けばいいと思っていた。それが四年になった」
「続きましたね」
「続いた理由は、ドグマがいたことと、ルーカスが来るようになったことと、ここに来られることだと思っています」
「私は何も」
「ここがあった、それだけですが、それが大きかった」
シルヴィアはカインを見た。
「カイン、あなたは花屋を始めた私のことを、どう思っていましたか」
「最初は驚きました」
「なぜですか」
「仕事を辞めた翌日に来て、花屋を始めると言って。決断が早いと思いました」
「でも、変だとは思わなかった?」
「変だとは思いませんでした。あなたに向いている気がしました」
「なぜですか」
「一人でやれる仕事で、手先が器用で、生き物を育てることに向いていると思いました」
「なんで向いていると思ったんですか」
「ここに来るたびに、店の花に目をやっていました。それを見て、そう思いました」
シルヴィアはしばらく黙った。
「……気づいていたのか」
「花に目をやる人間は、花が好きな人間です」
シルヴィアはハーブティーを飲んだ。
「カインは、いろいろ見ているんだな」
「それが仕事ですから」




